オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
アデノウイルスのプラットフォーマーへ

2020/04/06

ベーシックレポート 改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

がんを溶かす腫瘍溶解薬テロメライシン®
オンコリスバイオファーマ社の主力開発品は、テロメライシン®という遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。テロメライシン®(OBP-301)は、がん細胞にも正常細胞にも感染するが、がん細胞で活性が高いテロメラーゼ酵素によりウイルスの増殖スイッチが入りがん細胞を溶解し、がん細胞の細胞死を発生させる。感染したがん細胞は溶融した後、増殖した腫瘍溶解性ウイルスを放出して他のがん細胞に感染していくだけでなく、がんの抗原も放出することで抗腫瘍免疫活性も上昇させる。従って、現在流行しているオプジーボやキイトルーダ等の免疫チェックポイント阻害剤との併用で抗がん効果がさらに増大する可能性も高い。

テロメライシンのパイプライン価値は500-900億円(税前)程度
食道がんに加え、免疫チェックポイント阻害剤併用でのがん種拡大(トリプル・ネガティブ乳がん、頭頸部がん、胃がんステージⅢ・Ⅳ)を加えたパイプライン価値は、542~904億円(成功確率30~50%:税前)と試算される。 株式市場では、オンコリスバイオファーマ社と中外製薬が結んだ契約のうち、アジア以外の全世界への独占的オプション権行使の契機と時期が注目されている。このオプション行使の契機と考えられるのは、現在進行中のテロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の医師主導試験日本・米国の結果であろう。その結果次第で中外製薬の判断が浮上してくる可能性がある。そのカギは、2020年内と想定される各医師主導試験の中間解析結果 になろう。

AAVをベースとした腫瘍溶解遺伝子治療のプラットフォーム構築
オンコリスバイオファーマ社は、テロメライシン®の導出成功に安住していない。次の主力開発品OBP-702は第一世代のテロメライシン®の10~30倍の抗がん活性を示し、しかもテロメライシン®が効きにくいがん種(すい臓がんや大腸がん等)でも有効性が期待できる。この第2の腫瘍溶解ウイルスのライセンスアウトによってオンコリスバイオファーマ社 の価値はさらに上昇すると考えられる 。さらにアデノウイルスをベースとしたAAVベクターを用い、神経分野の希少疾患対象に遺伝子治療の分野への発展拡大を企図しているようである。 アステラス製薬が米国Audentes社を約30億ドルで買収した例(2019年12月)があるように、この分野でも大型のディールが期待できる。

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