2月9日妥当レンジ 21,850円~23,600円
底に達しつつあるものの、米インフレ指標にはご用心

2018/02/14

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<好調な米雇用統計が金利上昇不安を増幅>

■8日に米暫定予算が期限を迎え、一時的に政府機関の閉鎖が生じたが、9日に3月23日までの予算が可決。また同日に連邦政府予算を約3000億ドル増やし、連邦債務上限を1年間停止する予算合意が成立した。財政赤字の拡大に対する懸念と金利上昇から8日にNYダウは再び大幅な下落となったものの、週末・週明けはやや落ち着きを取り戻している。
■今回の株式市場の下落は、1)米国経済の好調からインフレが進むとの見方が強まったこと、2)NY株式市場が株価バリュエーション面で割高であったことによるものであり、或る程度の水準訂正がなされたことから、まだ余震は残ると思われるものの底入れは近いと考える。
■しかしながら、2日の米雇用統計発表に見られるように米国経済指標が市場予想を大きく上回る局面では金利上昇懸念の高まりから再度株価が下落する可能性には注意を要する。今週は、14日:米小売売上高・消費者物価、15日:米卸売物価、16日:米輸入物価(いずれも1月分)の発表が予定されており、これまで以上に注目されそうである。
■米インフレが強まるようであれば、米国株式は下落。インフレ指標が強いものでなければ利上げペースの鈍化が予想されて円高になる。いずれにしても当面は日本株上昇には不利な展開が続きそうだ。
■しかしながら、日本株は、株価の下落と3Q決算発表を経て企業業績見通しの上乗せから割安感が顕著となった。新年度を間近に控え、再びそろりそろりと上昇トレンドに回帰するものと考える。

<IFIS/TIWコンセンサス225は、再来期マイナスとなったが>

■2月9日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は再来期予想ベースが前週比マイナスとなったが、これは特定銘柄(ソフトバンク)の影響による。コンセンサスDI(前週比プラスになった企業数の比率)も全期間で50超を継続。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,850円~23,600 (前回22,950円~24,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月9日)

今期予想EPS 1276.97 (前週 1218.37円)
来期予想EPS 1377.68 (前週 1362.88円)
再来期予想EPS 1534.18 (前週 1539.50円)
今期予想PER 16.74 (前週 19.10倍)
来期予想PER 15.52 (前週 17.08倍)
再来期予想PER 13.94 (前週 15.12倍)
来期予想PBR 1.17 (前週 1.28倍)
来期予想ROE 7.54% 前週 7.48%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.14% (前週 6.91%)

2月9日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出






図1妥当レンジも大きく下げる結果となったが、株価の下げはそれを大きく上回っており、レンジ下限を大きく下回っている。明らかな割安状態にあり、ここからさらに大きく一段下げる可能性は低いと考える。


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 66.757.8%→55.9%→57.6%→56.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、66.362.755.9%→61.257.4%。
プラストレンド続く。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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