12月2日妥当レンジ 8,200円~9,400円
欧州条約改正に向けた改革進展から安心感が一段と広がる展開

2011/12/08

【IFIS/TIWコンセンサス225】

少し体調を崩しておりました。2日遅れてしまって申し訳ありません。
マーケット・センチメントに大分変化が出てきたように感じられる。
先週は、日米の中央銀行がドルの中央銀行間の融通する際の金利を0.5%引き下げるという支援策を発表(11/30)、タイやブラジルなど新興国が相次いで金融緩和姿勢に転じたこともプラス材料だった。11月の米雇用統計(12/2発表)では失業率が9.0%→8.6%へと大きく改善。他の米国経済指標でも消費者信頼感指数、ISM製造業指数でかなり強い数値が出てきている。8日のECB理事会で利下げが行われる見通しも高まっている。

5日(月)にドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領の会談で、財政規律違反国に対する自動的な制裁処置の発動や欧州安定メカニズム(ECM)の前倒しによる発足について合意がなされた。9日(金)のEC首脳会議にEC条約改正問題としてこれらが討議される模様である。また、欧州連合のファンロンバイ大統領からユーロ共同債の導入についての提案もされる模様である。
同日(5日)、米格付機関のスタンダード&プアーズ(S&P)がドイツやフランスを含むユーロ圏15カ国の長期ソブリン格付けを「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定、6日には欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の「トリプルA」長期格付けを「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定したことにより、マーケットは動揺した。しかし、S&Pの欧州ソブリン格付担当が、9日の欧州連合(EU)首脳会議で、経済成長を促進し、リスクを相互に負担するための戦略が存在することが示されれば、格下は回避できるという見方が報じられたことにより、再び安定を取り戻している。

12月2日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」の予想EPSは、今期予想ベース(1期)、来期予想ベース(2期)、再来期予想ベース(3期)の全期間において依然として前週を下回っている。減少幅は、それぞれ▲4.75円(1期)、▲2.93円(2期)、▲2.38円(3期)であった。前回の当レポートで「減少トレンドがほぼ終息した」と申し上げたがアナリストのセンチメントはまだ慎重姿勢が強いように思われる。
今回は日経平均の妥当レンジを8,200円~9,400円に引き上げるが、これはデータトラック上に発生するテクニカルな要因であり、上昇トレンドに入ったことを示すものではない。

来年以降のマーケットの見通しであるが、来期、再来期の予想EPSや予想ROEの値からみてPBR1.0倍を大きく超えることはないと考えている。具体的には来年夏頃までは10,000円前後、秋以降でも11,000円を抜ける展開はあまり期待しない方が良いと思っている。

日本株が上昇しない理由については国内投資家の厚み薄さやマクロ要因など様々な問題があるが、ROEの絶対水準が低いことが第一の理由だと個人的には考えている。日本企業のROEが低いのは絶対的な利益水準が上がらないことにだけあるのではない。多くが企業はネットキャッシュがプラスの状況にあるにも関わらず、配当性向を低く抑えたままで居ることに問題がある。現在、東証一部の配当性向は30%前後であるがこれは成熟マーケットとしては低い状態にある。利益が自己資本として毎年積みあがっていることによって分母となる純資産額は膨らんでいる。日経平均のBPS(1株当り純資産額)は、リーマンショック後の2009年5月末頃において凡そ7,700円、2010年5月頃で8,500円、2011年5月末頃で9,000円、2012年5月末頃では9,500円が見込まれる。
当レポートにおいて何度か申し上げているが、理論株価は〔(株主資本配当率+利益成長率)÷投資家の要求利回り〕で長期的には決まってくる。利益成長率も重要であるが、これは一朝一夕に解決できる問題ではない。しかし、ROEは企業が配当性向を高めることによって上昇が見込まれる。もちろん、配当利回りの向上が株価の押し上げ要因になることは言うまでもない。
発行企業の側の言い分としては、資本市場が不安定であるために資金調達を行いたいときに適正なバリュエーションでの資金調達が出来ない。また、銀行も困ったときには当てにならない、というものであろう。実際に資金調達に苦慮した挙句に坂道を転げ落ちていった企業も少なからず存在した。しかし、企業側が安全弁としてキャッシュを積み上げることによって、結果的にバリュエーション低下のスパイラルを招いている。

これを断ち切るには、配当二重課税の解消や法人税の軽減など政策的対応が求められるとともに、銀行の審査能力の向上、メインバンク制の一部復活など金融市場全体の安定性回復が求められるのであろう。

さて、足下のマーケットはEC首脳会議で欧州の財政統合の動きが加速する方向が確認できればマーケットの安心感がさらに広がることが予想できるだけに、短期的にはもう一段の上昇が期待できる。しかし、企業業績のファンダメンタルから見て、先ほどの繰り返しになるが、1万円を抜けるような展開は来期・再来期以降の業績に投資家の眼が向いてくる4月以降と思われる。

投資スタンスとしては基本的に前回・前々回と同じである。
妥当レンジの下限付近では押し目買いの好機と考える(ただし、株価がかなり戻してきたので中心的なストラテジーには適さなくなってきた)。
本線は新興市場銘柄。マーケット全体の安心感が広がる中では、流動性リスクを理由として低位に放置されていた銘柄への見直しが起こることが期待される。特にROE水準の高い好業績企業には注目したい。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

8,200円~9,400円 (前回 8,100円~9,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月2日)

今期予想EPS 571.40 (前週 576.15円)
来期予想EPS 707.35 (前週 710.28円)
今期予想PER 15.13 (前週 14.16倍)
来期予想PER 12.22 (前週 11.49倍)
来期予想PBR 0.91 (前週0.86倍)
来期予想ROE 7.46% 前週7.51%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.59 (前週6.83%)

*12月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

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