歴史的な高値圏にあるチタン鉱石について

2011/11/18

【アナリストコラム 溝上泰吏】

スポンジチタンメーカーは、かつて無い原料高を経験している。これまで低位で安定していたチタン鉱石価格が、10年後半からスポット市況が上昇基調に転じた。これを受けて日本メーカーの11年契約価格も前年比4割上昇。なお、下期に各社が割高なスポット鉱石も調達したので年後半の鉱石価格は同6割程度の上昇になる模様(各社今期の業績に織り込み済み)。スポット鉱石の使用割合は、各社の戦略の違いもあり2倍以上開いており、在庫率も異なっている(TIW推定)。

世界のチタン鉱石需要は640万トン(10年)で、年率4%程度の成長となっている。その過半数が低純度(60%~)のイルメナイトである。純度90%を超えるAGS(アップグレードスラグ:旧ソ連のメーカーや中国の老舗メーカー)や合成ルチル、ルチル鉱石などは全体の2割強であり、更にその一部が金属チタンになる(厳密には米国のATI社や中国の新規参入メーカーは、イルメナイトなどから生産した四塩化チタンを使用:スポンジチタン換算で8万トン程度)。

金属チタン向けは、鉱石全体から見ると僅か4~5%。全体の9割が塗料や顔料などの色素として使われる。中国など新興国の経済成長により色素向け需要が急拡大。一方で、鉱石価格が永年安値で推移してきたことで、鉱山各社が新規鉱山の開発を進めてこなかったことが、低純度鉱石の価格高騰を招いたといえる。なお、高純度の鉱石は、豪州鉱山会社の撤退(既に再参入)も加わり、同価格が上昇。ちなみに、鉱石価格が上昇したことで新規鉱山(露天掘りのため開発が早い)の開発が始まり、早ければ13年頃から鉱石の生産が開始される見通し。

なお、足元のチタン鉱石(低純度)は、急騰した反動と中国の景気減速懸念もあり、既に軟化傾向に転じている。ただし、今月香港で開かれたTZ(チタン・ジルコニウム)会議で大手鉱山会社などは、チタン鉱石に対し、強気のコメントを発表した。これは、現在価格交渉中である12年契約の高純度に対し牽制をしているものと思われる。なお、高純度を生産する鉱山会社はアイルカ社(豪州)、リオ・ティント社(英・豪)、イグザロ社(南ア)、インドの2社で高純度の9割以上を占めている。
一方の国内メーカーも、これまでの豪州、インド、カナダからの原料調達に加え、南アからも鉱石を調達するなど、原料対策に乗り出している。ベトナムなど新たな調達先を考えているメーカーもあるようだ。

仮に原料価格が2倍になれば製品価格が20%上昇すると吸収できる(在庫ゼロで試算)。なお、スポンジチタンの12年輸出契約価格は前年比23~24%前後の上昇でおおむね決着している模様。過去の輸出と国内の契約状況から判断すると、12年度の国内向け契約価格は、少なくとも同20%以上の上昇になると思われる。スポンジチタン価格が2割上昇した場合、チタン展伸材価格を同4~5%程度の値上げで吸収でき、ステンレスや合金など他の素材との競争に大きな影響を与えるものではないと思われる。

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