12月30日妥当レンジ 17,300円~18,650円
実務的な利便性向上のため、レンジ上限の基準を見直し

2015/01/07

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<過去のトレンド等を考慮してレンジ上限の基準を見直し>
■インプライド・リスク・プレミアム(株価が内包するリスクプレミアム:IRP)の値は、経済環境、地政学的状況などにおける投資家の態度によって異なることは言うまでもないが、昨今の世界的リスク要因の顕在化傾向、アベノミクス以降のIRP水準トレンドの反映、レンジ幅を狭めることによる実務的利便性の向上を図るために、今回から妥当レンジの基準を変更する。従来はIRPが6.0%(レンジ上限)~7.0%(レンジ下限)となる水準に設定していたが、これを6.5%~7.0%へと変更する。その結果、レンジ上限が従来よりも下方となるが、売買判断の参考としての利便性は高まると考える。
<コンセンサス予想EPSは、前週比で来期・再来期がプラス>
■12月30日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、営業日が2日しかなかったこともあり、サンプル数が極めて少ないものの、前週比で来期・再来期はプラスであった。前週比で予想EPSが減少した企業を、増加した企業が全ての期間において上回っており、増加トレンドは維持されている。
■年初から原油安、ギリシャ総選挙の行方とユーロ離脱の可能性台頭、ECBの量的緩和採用の可能性の増加など、懸念されていた問題が顕在化されたことにより、株価の調整を余儀なくされている。これが世界的なリスクオフによる長期調整過程の前兆なのかどうかは分からない。しかし、昨年の同時期と比較すれば妥当レンジに対する位置が大きく異なっている。現時点で既に妥当レンジ下限を下回っている状況では、日本株には割安感がある。
■5日発行レポートでも申し上げたが、日本株が割安になっている大きな要因の一つが日本の長期金利の低水準にあることには注意が必要である。
■国内景気については踊り場の状況ともいえるが、米国経済の上向きトレンドに変化が無く、日経平均予想EPSのプラス傾向も継続される限りは株価の大きな反転が期待できると考える。引き続き押し目買いのスタンス。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,300円~18,650円 (前回 17,600円~18,950円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月30日)

今期予想EPS 922.82 (前週 923.34円)
来期予想EPS 1033.08 (前週 1033.06円)
再来期予想EPS 1131.24 (前週 1131.17円)
今期予想PER 18.91 (前週 19.30倍)
来期予想PER 16.89 (前週 17.25倍)
再来期予想PER 15.43 (前週 15.75倍)
来期予想PBR 1.33 (前週 1.36倍)
来期予想ROE 7.86% 前週 7.86%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.95% (前週 6.91%)

*12月30日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

見易くするために、今回より2013年5月からの表示に変更する。 

 

 図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、65.2%→63.0%→60.3%→63.5%→57.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.4%→53.1%→57.4%→63.2%→51.9%。
プラス企業比率は引き続き良好と考える 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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