10月18日妥当レンジ 14,050円~16,300円
貿易統計は15ヵ月連続赤字~2Q決算に楽観は禁物

2013/10/22

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<貿易収支は輸出の伸び悩みが続く>
■米国の債務上限法案が11月16日に上下院で可決し、この数週間市場を騒がせた米国債デフォルトの可能性は、ひとまず無くなった。しかし、妥結した内容は債務上限を引き上げずに、2014年2月7日まで国債を発行できるというものであり、問題の先送りと見ることができる。
■21日に財務省が発表した9月の貿易統計は、前年同月比で輸出11.5%増に対して、輸入16.5%増となり、過去最長となる15ヵ月連続の赤字であった。輸出数量はアジア向けが落ち込み、同マイナス1.9%となった。

<日経予想EPSとコンセンスEPSの乖離が広がる>
■10月18日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で今期・来期が前週比マイナスであった(再来期はプラス)。KDDI(9433)、ファーストリテイリング(9983)など、日経平均に影響力の高い銘柄がプラス寄与したものの、電機やエレクトロニクス関連の素材銘柄でマイナスが目立った。今回も日経平均の妥当レンジをやや上方に調整するが、長期金利の低下が主な要因である。
■今期ベースの予想EPSにおいては、日経予想値(市況欄からの逆算値)が、前週比でプラスになる一方で、コンセンサスがマイナスであった。その結果、両者の差は130.44円と拡大している。どちらの妥当性が高いのかは一概には言えないものの、日経予想値だけを見て楽観的になるのは危険である。
■本日(22日)は遅延されていた米雇用統計(9月)の発表が予定されている。市場予想を大きく下回るようであれば、ドル安が見込まれ、国内株式市場への影響が大きいだけに要注意。
■妥当レンジは5月中旬と同じ水準となっている。5月の株価下落時にはバーナンキ議長の緩和縮小を模索する発言から米長期金利が上昇し、国内長期金利もそれに追従した。現在のマーケット水準は5月時点ほど高くないだけに、下落したとしても限定されると考えられる。しかし、債務上限問題の解消による楽観ムードも一巡しており、マーケットの方向が変わる可能性には用心したい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,050円~16,300円 (前回 13,900円~16,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月18日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月18日)

今期予想EPS 783.66 (前週784.05円)
来期予想EPS 877.00 (前週877.88円)
再来期予想EPS 977.10 (前週976.98円)
今期予想PER 18.58 (前週 18.37倍)
来期予想PER 16.60 (前週 16.41倍)
再来期予想PER 14.90 (前週 14.74倍)
来期予想PBR 1.32 (前週1.31倍)
来期予想ROE 7.94% 前週7.97%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.75% (前週6.76%)

*10月18日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

5月の妥当レンジ水準に到達。5月時点と比べてコンセンサスEPSはやや上方、金利はやや下方という状態。

期待リターンは下落(=ややリスクオン)。予想ROEは、予想EPSが伸び悩む中で停滞が続いている。

アナリスト・コンセンサスと日経予想(逆算値)との乖離は益々開いてゆく(これは一体何を意味しているのだろうか?)。

理屈の上では長期金利(10年国債利回り)の低下が株価を下支えしている形。

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

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TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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