軽自動車市場活性化により車体軽量化・低コスト生産技術向上に期待がかかる

2011/09/30

【アナリストコラム 高田 悟】

国内の乗用車メーカーで唯一軽自動車(以下軽)を扱ってこなかったトヨタが連結子会社のダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けトヨタブランドの軽販売に今月から乗り出した。軽はスズキや三菱自動車からのOEMを軸としてきた日産自動車も三菱自動車とのジョイントベンチャーを通じ軽の開発に踏み込む。ホンダは軽乗用車の生産を本体で開始するとともに軽販売拡大へ意欲的なメッセージを発信する。

大手が軽の開発・販売強化に動くのは国内新車市場の縮小が続く中で軽は新車販売、保有ともに少なくとも現状維持が見込める、1米ドル70円台の円高定着の中で国内の開発・生産・販売基盤を維持する必要、などが背景と考えられる。九州や四国では販売台数で登録車を上回る軽が主役だ。維持費や燃料コストの低さから他地域でも軽の比重は高まるだろう。とはいえ、自動車市場全体が縮小する中で急成長は見込めまい。このため、こうした動きはシェア争いに伴う不毛の戦いを招く可能性がある。

一方で軽販売が活性化し国内自動車産業の競争力強化に繋がるとみることもできる。ここ数年のハイブリッド車(HV)の価格低下と普及、人気化で軽にはより低燃費と廉価が求められるようになった。燃費向上に向け価格を犠牲に軽にHV技術を搭載しても意味がない。軽ではガソリンエンジンでHV車の燃費性能の追い上げが急務だ。燃費改善には車体軽量化がポイントになる。同時に軽量化と相反する強度・耐久性の維持も図らねばならない。こうした課題を抱える中での軽開発及び販売競争への大手参入は軽量・低燃費、低コストの「車づくり力」向上に一層拍車をかけると考えられるからだ。

先日、ダイハツ工業が30km/ℓを実現した新型軽自動車「ミライース」発売を開始した。HV並みの燃費をガソリンエンジンで実現する一方で最低販売価格は80万円以下に抑えた。そこには、新エンジンやCVT(無断変速機)搭載によるパワートレインの進化、骨格合理化による軽量化の実現、部品点数削減や調達ルート見直しなどによる原価低減、など低燃費・車体軽量化と低コストの徹底的な追及があった。同車両がベンチマークとなり、国内でガソリン車全体の燃費性能底上げが進むだろう。

数年後には世界の新車販売は足元の年約7千万台から1億台近くまで拡大する見通しだ。増加の殆どが新興国でその中心は小型、廉価車と言われる。開発・販売競争激化の国内軽市場で確り稼げる車をつくることは必ず今後の新興国展開で活きるだろう。国内の660CCから一回り大きいエンジンに積み替えたスズキの「ワゴンR」がインドを駆け回る。大震災に伴う供給制約下での世界シェア喪失、急激な円高による輸出採算の悪化、韓国勢の技術的追い上げ、など自動車産業の足元には暗い話題が多い。しかし、国内軽市場で磨かれる「モノづくり力」を新興国で発揮することで新たな成長が描けよう。

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