10月26日妥当レンジ 8,250円~9,400円
ROE重視へのトレンド変換は起こるか?

2012/10/30

【IFIS/TIWコンセンサス225】

前回のレポートで、「ここから数週間は、金融緩和による上昇期待と決算発表を織り込む下方圧力との綱引きが続きそうである。短期的には、バリュエーション面での魅力が少ない1部上場銘柄よりも、水準訂正余地の大きな新興市場銘柄に妙味があると考えている。」と述べた。
先週は、日経平均株価やTOPIXがやや下落する一方で、JASDAQ平均が上昇しており、ほぼ予想した展開となった。

本日(30日)予定されている日銀政策決定会合において、新聞観測(10兆円規模の資産買い入れ枠の増額)を上回るような追加緩和が行われないとするならば、一旦は材料出尽くしとなる可能性が考えられる。金融緩和期待から円安傾向に振れていた為替もスペインに対する懸念(失業率25%に上昇)や米国企業業績の不振等から一服した状態にある。今週末(11月2日)に発表される10月の米雇用統計で失業率が上昇するようであれば円高圧力が再び増す可能性も考えられる。国内企業の2Q決算が本格化しているが、キヤノン(7751)、日本板硝子(5202)、三菱ケミカルHD(4188)、ホンダ(7267)など主力企業の業績悪化が浮き彫りになりつつあり、マーケットは企業業績悪化を織り込む展開が強まることも予想される。

10月26日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」の予想EPSは、今期(1期)626.23円(前週比-6.17円)、来期(2期)734.03円(前週比-3.99円)、再来期(3期)812.68円(前週比-2.65円)と、マイナストレンドが継続している。数値面では今期、来期、再来期の順に、時間軸が手前の決算期ほど減少幅が大きくなっている。一方で、プラス・マイナスの企業数を見ると逆の現象が生じている。前週比でプラスとなった企業数・変化の無い企業数・マイナスとなった企業数を表示すると、今期(1期)46-115-64、来期(2期)40-117-68、再来期(3期)35-117-73となっており、時間軸が後になるほどマイナス企業数が増えている。これは将来に対する期待値が低下していることへの表われと考えられ、来期、再来期については減少トレンドが2Q決算後も続くことが懸念される。予想EPSの数値とマイナス企業数のトレンドが乖離しているのは、三菱商事(8058)とKDDI(9433)の2銘柄のプラスが影響していることによる。
日経平均の妥当レンジは、今週は8,250円~9,400円へと引き下げる。

リーマンショック以降の日経平均株価は、2010年、2011年、2012年といずれも前年末から年の前半部分で上昇する傾向を辿った(東日本大震災のあった2011年も震災までは株価は上昇トレンドにあった)。海外要因も多分にあるために一律に論ずるのは些か乱暴であるが、新年度(来期)の業績回復を期待した株価上昇の要素を大きく含んでいたと言えるだろう(いずれも夏以降にその期待を裏切られてきたのであるが)。2Q決算を織り込んだ後には、今回(2013年)も来年度を見据えて同じような上昇トレンドを辿る可能性が考えられる。

しかし、注意しなければならないのは上昇の“山”(高値)が年々低くなっていることである。2010年(4月)11,408円、2011年(3月)10,768円、2012年(3月)10,255円と高値水準は年々低くなっている。これは将来に対する成長期待が低下していることが要因としてまず挙げられるが、構造的な要因が厳然と存在する。
大分以前にも紹介したが、日経平均の自己資本の金額は増加トレンドにあり、利益成長スピードを遥かに上回っている。つまり、利益水準が上がってもROEは低下傾向にある。これが株価の“山”を押し下げる要因になっていると考えられる。リーマンショック後の2009年5月時点の日経平均の1株純資産(BPS)は約7,700円、現在は約9,500円である。2013年3月末には約9,900円に達すると予想される。
10月29日(月)の日経朝刊:経済教室「企業市場再生の視点㊤ 企業は株主期待に応えよ」において京都大学教授の川北英隆氏も指摘されているが、日本企業のPBRが海外に比べて大きく見劣りする理由は、ROE水準が低く、投資家の期待収益率を下回っていることが影響している。悲観的な見方をすれば、企業が資金を積極的に投資に活用せずに、また株主にも十分に還元しないのであれば、日経平均株価の“山”は益々低くなる可能性がある。

当レポートではこれまで何度も新興株式市場に上場する好業績銘柄への投資を強調してきた。それは、バリュエーション面での割安感が強いことが理由であるが、何よりも収益性(=ROE)において優位性があることが大きい。先週末時点の予想ROE(今期予想ベース・日経市況欄の数値から逆算で算出)は、東証1部の7.27%に対して、JASDAQ市場は9.13%と大きく上回っている。

日経平均株価やTOPIXの大幅な上昇は(現状の企業の株主還元のスタンスが続くのであれば)今後も大きくは期待できない。
また、ROEに対する投資家(特に個人投資家)の意識に変化が生じるとするならば、大きく水準訂正がなされる高ROE銘柄が出てくるであろう。それは既に海外投資家のウエイトが高くなっている1部市場ではなく、むしろ流動性の面から大手の投資家が手をこまねいている新興市場銘柄と考えている。


◇日経平均妥当水準(レンジ)

8,250円~9,400円 (前回 8,300円~9,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月26日)

今期予想EPS 626.23 (前週632.40円)
来期予想EPS 734.03 (前週738.02円)
再来期予想EPS 812.68 (前週815.33円)
今期予想PER 14.26 (前週 14.24倍)
来期予想PER 12.17 (前週 12.20倍)
再来期予想PER 10.99 (前週 11.04倍)
来期予想PBR 0.90 (前週0.91倍)
来期予想ROE 7.39% 前週7.44%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.87% (前週6.89%)

*10月26日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

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