小さな部品で世界と戦う

2012/10/26

【アナリストコラム 高田 悟】

先日、東北地方にある大手自動車部品メーカーの工場見学に出かけた。訪問先の工場はガソリンエンジン用インジェクタの生産を主とする。インジェクタとはエンジンの吸気管に取り付けられており、ECU (電子制御ユニット)からの噴射信号に基づき燃料の噴射を行うもので、電気信号を燃料流量に変換するとともに燃料を霧状にして噴射する製品だ。手の平に乗る程度のサイズの小さな部品だが、インジェクタから噴射される燃料は、霧化が優れると燃焼性が向上することから排出ガス規制強化に対して有効な手段となる。とともにエンジンの燃費性能にも関わる重要な部品である。

工場玄関を入ると陳列棚が目に入る。そこには同工場で手掛けたインジジェクタが時系列に展示されていた。先ず、世代が進む毎に製品サイズが小さくなっていることに気付く。同時に構成部品も小型化が進む。かつて親指先端程度の部品が小指先端程度へと。また、部品点数も減っているようだ。燃料噴霧の微粒化を促進させるための工夫や過酷な条件下で働く部品の耐久性をいかに保つにかなどに個人的には注目していた。噴霧の効率化追求は当然のことながら、こんなに小さい部品でも小型・軽量化により燃費向上や廉価への貢献へたゆまぬ努力が日々重ねられているのだと思え、ある意味で新鮮な驚きとなった。

1980年代半ばの排出ガス規制強化に伴い、ガソリンエンジン車の燃料供給方式が機械式のキャブレタからFI(電子燃料噴射方式)へ移行した。こうした中、キャブレタメーカーはFI構成部品である電子制御可能なインジェクタ生産に取組んだ。市場ニーズでもある小型化、高性能、低コストに対応することで四輪車のFIシステムへの移行に貢献した。1990年代に入るとエンジンの高性能化に伴い搭載スペースが縮小し、インジェクタに対し小型化のニーズが高まった。2000年代以降は二輪車市場においても排ガス規制強化が進む。キャブレタからFIシステムへの移行が必要となる。二輪車の主流は50ccから150CCだ。四輪に比べエンジンスペースが極めて小さい。四輪車に比べ一段の小型インジェクタが必要となる。二輪車向け開発は新興市場開拓の足掛かりともなるため疎かにはできない。

国民一人当たりのGDPが3,000ドルを超えると二輪車から四輪車への移行期に入るという。人口約2億5千万人のインドネシアが丁度この段階にある。政府の環境対策強化にも拍車がかかる。こうした中、本年より二輪車のFI化が本格化した。同国は世界最大の二輪車市場でもあり、日系完成車メーカー3社で100%近いシェアを誇る。一方、トヨタとダイハツが約5割のシェアを持つなど四輪車も日系が強い。海外のマザー工場を目指す訪問先工場では確か同国からの留学生が製造ラインで技術習得に励んでいた。足下は中国問題から取引先生産計画が見えにくくなる中、部品メーカー工場の稼働コントロールは厳しさを増す。しかし、二輪車、四輪車向けを持ち、環境面からモータリゼーションのフロンティアで戦える先にはまだ十分なオポチュニティがあると思わずにはいられなかった。  以上

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