新興国通貨の動向(2018年7月)米中貿易摩擦により長引く新興国通貨の調整

2018/07/13

新興国通貨の動向(2018年7月)米中貿易摩擦により長引く新興国通貨の調整

●米中貿易摩擦激化の懸念から、新興国通貨は米ドルに対して軟調

■新興国通貨は、年初から米長期金利の上昇などを受けて調整しました。なかでも政治的に不安定な国や、経常赤字国の通貨の下落が大きくなっています。足元では、米中の貿易摩擦への懸念が高まるなかで調整が長引く傾向にあります。

■米中は7月6日にそれぞれ340億ドル分の制裁・報復関税を発動しました。さらに、7月10日には米国が2,000億ドル分の制裁関税リストを発表するなど、貿易摩擦は更なる激化の様相を呈しています。

【ポイント1】新興国通貨は不透明感の強い展開が続きそう

■ブラジルでは、5月にディーゼル油の値上げに反対するトラック運転手の大規模ストが発生したことから、経済の混乱が嫌気され、通貨レアルは大幅な下落傾向となっています。一方、ブラジル中央銀行(中銀)はインフレが落ち着いていることから、レアルの下落に対して、利上げではなく通貨スワップを使った為替介入を行っています。今のところ、この為替介入の効果は限定的ですが、金利を引き上げる余地が残っているため、通貨の大幅な下落リスクは限定的と考えられます。今後も、10月の大統領選挙に向けて政局の不安定さが残ると考えられるため、レアルは不透明感の強い展開が見込まれます。

■トルコでは、通貨防衛のため、トルコ中銀が今年4月以降たて続けに利上げを行いました。その結果、主要な政策金利である1週間物レポレートは17.75%となっています。足元では、6月の大統領選挙で再選したエルドアン大統領が金利低下を目指す発言をしたことや、経常収支の悪化が発表されたことなどから、リラは過去最安値を更新しました。今後は、利上げにより高まった金利水準への需要がある程度期待できるものの、大統領や新財務相の就任で中銀の独立性が懸念されることや、対外収支の赤字傾向、高水準のインフレ、米国や欧州連合との関係改善の目途が立たない等の悪材料が続くため、リラは不透明感の強い展開が続きそうです。

■メキシコでは、米国とのNAFTA(北米自由貿易協定)交渉に進展がなかったものの、7月の大統領選挙でロペス・オブラドール氏が勝利し、通貨ペソの売り圧力が低下しました。選挙後、オブラドール氏は市場寄りの姿勢を示していることでペソは買い戻されていますが、同氏の掲げる政策は財政悪化の要因となるものが多く、政策の遂行状況によってはペソが売られやすくなることも考えられます。また今後は、急進左派のオブラドール氏の下、米国との貿易交渉の行方に注目が集まり、上下に振れやすい展開となりそうです。
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【ポイント2】アジアでは経常赤字国通貨が下落、人民元安も影響

■米国の利上げが続き、ドル高圧力がかかるなか、米中貿易摩擦の激化を受けて海外投資家がアジア新興国から資金を引き揚げる動きが強まっています。特に経常赤字国の通貨が対ドルで売られており、インドネシアルピアやインドルピーも弱含んでいます。

■インドネシアでは、インドネシア中銀が通貨防衛のため、今年5月以降たて続けに利上げを行いました。5月下旬に就任したペリー総裁は、ルピアの安定は最優先事項と強調しており、追加利上げも辞さない姿勢を示しています。インフレは中銀の目標レンジに収まっていることから上振れの懸念はなく、大企業を中心に投資需要も旺盛と見られますが、今後も利上げが続く場合には景気への下押し圧力となりそうです。

■インドでは、原油の8割強を輸入に頼るため、最近の原油価格の高騰は経常赤字拡大に繋がると考えられ、ルピーの下落要因となっています。

■また、これらアジア通貨安には、足元の中国人民元安が影響しています。人民元は6月中旬から足元にかけて大きめに下落しました。これは米中貿易摩擦の拡大による輸出の減少と、中国景気の停滞懸念に加えて、6月下旬に中国人民銀行が預金準備率を引き下げたためと考えられます。7月に入ると中国人民銀行の易綱総裁が人民元相場を合理的かつ均衡の取れた水準に安定させると表明しました。これにより人民元安にはひとまず歯止めがかかりました。

■年明け以降の新興国通貨の下落には米中貿易摩擦の影響も大きく、上述の各国要因に加えて、米中貿易摩擦の目途が立つことが通貨安定に必要と考えられます。新興国通貨の中では、アジアは経常黒字の国が多く、比較的安定した動きが見込まれます。

 

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(2018年 7月13日)

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