4-6月期決算が注目される米国株式市場 保護主義と企業業績の綱引きとなる展開

2018/07/11

4-6月期決算が注目される米国株式市場

【ポイント1】史上最高値を更新するナスダック総合指数

米国の保護主義の広がりが懸念材料

■米国株式市場は、S&P500種指数やNYダウが上値の重い展開を続けていますが、ナスダック総合指数は6月20日に史上最高値を更新するなど、まちまちの動きとなっています。米国経済は、雇用・所得の伸びが堅調で、減税効果も可処分所得を押し上げ始めるなど、拡大基調を強めています。税制改革を受けた海外留保利益の還流により、企業部門の国内キャッシュフローも大きく増加するなど、企業活動には追い風が吹いています。

■こうした好環境の中、S&P500種指数やNYダウの上値が重いのは、貿易摩擦の広がりと企業業績への影響に対する懸念が強まっているためと考えられます。トランプ政権は6月15日に中国に対して制裁関税リストを公表し、6月22日にはEU産輸入車に対し20%の関税賦課を示唆しました。足元では7月10日に、中国からの輸入品2,000億ドル相当の新たな関税対象リストを発表するなど、米中貿易摩擦は一段と強まる方向にあります。6月15日から7月10日までで下落率の大きいセクターはS&P500種指数で「資本財・サービス」が▲1.9%、ナスダック総合指数では「運輸株」が▲3.5%となるなど、米国による貿易摩擦の影響がうかがわれます。

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【ポイント2】大崩れしない「情報技術」セクター

保護主義の業績への影響を見極め

■「情報技術」セクターは、米中貿易摩擦の拡大懸念が広がる中で、調整する場面もありますが、今のところ大きな値崩れとはなっておらず、引き続き市場全体のけん引役です。S&P500種指数は上値の重い展開となっていますが、S&P500種情報技術指数は、6月6日に史上最高値を更新しています。6月下旬に調整したものの、足元では高値更新まであと少しの水準まで戻しています。「情報技術」セクターも含め、米国株式市場が堅調に推移するための条件は、米国の保護主義にある程度の目途が立つことと、保護主義の企業業績への影響の見極めと将来の業績予想に対する自信の回復だと思われます。

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【今後の展開】4-6月期決算は上振れが期待できよう

■4-6月期の決算は上振れが期待できそうです。7月10日時点の4-6月期の業績見通しは5月29日時点の予想と比べて「エネルギー」、「素材」、「情報技術」などが上振れています。一方、「生活必需品」、「資本財・サービス」などが下振れています。下振れたセクターには貿易摩擦の影響もあると思われます。

■年ベースの予想を見ると、2018年はほとんどのセクターで2桁増益の予想となっています。しかし、「一般消費財」、「生活必需品」、「資本財・サービス」など貿易摩擦の影響を受けると見られるセクターは5月末時点での予想から下方修正されています。一方、堅調なエネルギー価格などを反映して「エネルギー」が上方修正されたほか、「情報技術」も上方修正されています。続く2019年は全体として1桁成長に伸びが鈍化しますが、5月末比ではやはり上方修正となっています。

■米中貿易摩擦の拡大や保護主義的な通商政策の強化は一段と進展する可能性があり、楽観視はできません。当面、米国株式市場は、米国の保護主義的な通商政策の進展と好調な企業業績との綱引きになると思われます。こうした中、貿易摩擦の影響が少ないと見られるセクターの企業業績は、米国経済の拡大を素直に反映して拡大する方向にあり、株価も堅調な推移が期待できそうです。

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(2018年 7月11日)

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