2017年の米国経済及び株式・債券市場の見通し 景気は緩やかに拡大、株価は収益増を織り込む展開へ

2016/12/27

 

2017年の米国経済及び株式・債券市場の見通し

 

【ポイント1】成長率は緩やかに加速しよう

トランプ新政権の景気浮揚策も奏効

(1)景気

■ 2016年の米国経済は、前年比+1.6%程度の成長にとどまると見られます。中国経済の減速や国際的な金融市場の混乱などから、年前半の成長が抑制されたためです。しかし、これらの影響が一巡した年後半から景気は回復に向かいました。

■続く17年は+2.3%程度の成長が予想されます。経済の軸となる個人消費は、良好な雇用・所得環境に加え、トランプ新政権による個人所得税減税が支えとなり、堅調に推移する見込みです。個人消費等の需要の増大につれ、低迷を続けている企業の設備投資も緩やかに持ち直してくると考えられます。

■トランプ次期大統領の提唱する公共投資の増額や個人所得税減税などの景気対策は、ある程度の修正は加えられるものの、実現する見込みです。これら景気対策の効果は、17年後半頃から徐々に表面化してくると予想されます。財政拡張による景気刺激は、一方でドル高を促すと見られます。

(2)物価

■景気拡大の持続により、物価上昇率も高まると考えられます。ただし、そのペースは、①企業がコスト管理を徹底しているため、賃金の上昇が限定的である、②ドル高の進行により、輸入品の価格上昇が抑制される、などから極めて緩慢なものになる見込みです。

(3)金融政策

■物価上昇率が、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標とする+2%を超えてくるのは18年以降になると予想されます。当面は物価上昇率が低い水準で安定しているため、17年の利上げは2回、合計0.50%程度と考えられます。

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【ポイント2】トランプ新政権の100日計画

TPPからの離脱を目指す

■トランプ氏は今年10月22日に、大統領就任から100日以内に取り組む18の措置と、議会との協力のもとに立法化を目指す10の政策案を発表しました。

■立法化を目指す10の政策案は右表の通りです。大型減税を含む税制改革が目玉となります。

■他方、大統領就任初日から取り組む措置としては、①選挙期間中から主張してきた、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱、②北米自由貿易協定(NAFTA)について再交渉ないしは脱退、③中国を通貨操作国に認定、④米国内におけるエネルギー資源開発に関する規制の撤廃、⑤罪を犯した不法移民の国外退去、等が挙げられています。

 

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【今後の展開】株価は景気・企業収益の拡大を織り込む展開が見込まれる

■米国債の利回りは、緩やかに水準を切り上げていく展開が予想されます。トランプ新大統領の景気刺激的な政策への期待が台頭し、インフレ期待を押し上げると見られるからです。一方、社債は、FRBによる利上げのペースに注意が必要ですが、国債に比べ利回りが高いため、金利が落ち着けば、資金流入が継続する見通しです。

■一方、米国の株価はおおむね企業収益の伸びに沿った動きになると見られます。17年の業績は10%前後の伸びが予想されていますが、トランプ新大統領の景気刺激策の効果で、18年に向けて上方修正となる可能性もあり、「強いアメリカの復活」が期待されます。トランプ次期大統領は税制改革の一環として、海外での利益から生まれた資金を米国に戻す際の税金を減税する措置を掲げています。実現すれば、海外で潤沢な資金を有する大型のテクノロジー企業などは、イノベーションを推進するための買収戦略の選択肢を広げることが可能となり、株価にプラスに作用すると期待されます。

 

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(2016年12月27日)

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