EU離脱に向かう英国~相場への影響を見極める

2017/03/30

市川レポート(No.372)EU離脱に向かう英国~相場への影響を見極める

  • 英国はEUに対し離脱を通知、今後は離脱協定と将来協定の締結を目指し、交渉を進めることに。
  • 英国は2協定の同時交渉を望み、EUは離脱協定の交渉を優先する考え、協議は難航の予想も。
  • 離脱後のEU法打ち切りが最大のリスク、移行期間での現行制度継続が、市場安定のカギを握る。

英国はEUに対し離脱を通知、今後は離脱協定と将来協定の締結を目指し、交渉を進めることに

今回のレポートでは、英国が欧州連合(EU)を離脱するまでのスケジュールと問題点、またその過程で金融市場に及ぼす影響について考えます。英国のメイ首相は3月29日、EUに対し離脱を通知しました。今後、英国とEUは、離脱の条件を決める「離脱協定」と、離脱後の双方の新しい関係を規定する「将来協定」の締結を目指して交渉を進めることになります。

EU離脱までの主なスケジュールは図表1の通りです。まず4月29日にEU首脳会議が開催され、離脱交渉のガイドラインが採択される見通しです。実質的な交渉は5月末頃から始まる見込みで、EU側は2018年10月の合意を目標としています。2019年の年初にかけて、英国議会およびEU27カ国の議会と欧州議会で合意内容の承認が行われた後、2019年3月30日に英国は正式にEUから離脱することになります。

英国は2協定の同時交渉を望み、EUは離脱協定の交渉を優先する考え、協議は難航の予想も

英国はEUからの離脱にあたっては、移民の制限や司法権の独立を重視し、EU単一市場から完全撤退するとしています。また離脱後はEUと包括的な自由貿易協定(FTA)の締結を目指し、EU予算も適度に負担する可能性を示唆しています。これに対しEUは、加盟国の結束に影響がでないよう英国に対しては厳しい姿勢で臨むと思われ、今後の交渉は難航も予想されます。

すでに離脱協定に関しては、最大600億ユーロとされる離脱費用(EU予算への英国の未払い分担金)の扱いが争点となっています。また英国は、離脱協定だけでなく将来協定の交渉も同時並行で進めたいとしていますが、EU側はまず離脱協定の交渉を優先し、離脱費用や英国在住EU市民の権利保障などの合意を経てから、将来協定の交渉に臨むという考えです。

離脱後のEU法打ち切りが最大のリスク、移行期間での現行制度継続が、市場安定のカギを握る

実際には、EU側の意向を汲む形で離脱協定の交渉が優先され、将来協定の議論は2017年末以降に本格化すると予想されます。そのため目先は、離脱費用の取り扱いが市場の焦点になりやすいと考えます。現時点では英国内でどこまで負担すべきか意見がまとまっておらず、仮にこの問題が長引いて将来協定の交渉開始時期が遅れるとの懸念か強まった場合は、市場のリスクオフ(回避)要因になることも予想されます。

なお英国は、2019年3月30日にEUから離脱すると、その後はEU法の適用が受けられません。この時点でFTAなどを含む将来協定が成立していない場合、英国経済はビジネス環境の急変で大きな打撃を受け、市場にとって最大のリスクが顕在化することになります(図表2)。FTAの合意には10年以上かかるとの見方もあるため、離脱から将来協定が発効するまでの移行期間における現行制度の継続が、市場安定のカギを握ることになります。

170330図表1170330図表2

 

(2017年3月30日)

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