トランプ相場を再考する

2017/03/27

市川レポート(No.370)トランプ相場を再考する

  • オバマケア代替案は事実上廃案、次は税制改革だが大規模減税などの実現は不透明感が強い。
  • トランプ政策に対する市場の期待がもう一段後退することで、ドル円は110円や108円が目安に。
  • 日経平均の下値目途は18,400円、小粒でも着実な税制改革実行なら相場の大崩れは回避。

オバマケア代替案は事実上廃案、次は税制改革だが大規模減税などの実現は不透明感が強い

トランプ米大統領は3月24日、米共和党のライアン下院議長と協議し、下院本会議における医療保険制度改革法(オバマケア)代替案の採決見送りで合意し、同案は事実上廃案となりました。トランプ米大統領とライアン下院議長は、ともに「次は税制改革に取り組む」と述べていますが、大規模な減税やインフラ投資については、再び下院共和党の保守派グループなどが反対する可能性があります(図表1)。

下院共和党がまとめた抜本的な税制改革案には法人税の国境調整が含まれます。ただこれについては上院共和党議員の一部が反対し、小売業界などが導入反対のロビー活動を展開するなど、実現までの道のりは困難と思われます。国境調整が見送りとなった場合、約1兆ドルと見込まれる税収が失われ、法人税率の大幅な引き下げが難しくなります。また税率引き下げを財政赤字拡大で賄おうとしても保守派グループの反対が予想されます。

トランプ政策に対する市場の期待がもう一段後退することで、ドル円は110円や108円が目安に

今回のオバマケア代替案の廃案で、共和党内の意見調整がそれほど容易でないことが明らかになりました。そのためトランプ米大統領やライアン下院議長がそれぞれ主張する税制改革案は、規模や内容について、反対派への相応の譲歩や修正が求められると思われます。その結果、トランプ政策に対する市場の期待がもう一段後退し、円相場の上昇と日本株の軟調な動きが予想されます。

ドル円レートは米大統領選挙の翌日、2016年11月9日に1ドル=101円20銭水準をつけた後、大規模減税などトランプ政策への期待から2016年12月15日に118円66銭水準までドル高・円安が進行しました。フィボナッチ・リトレースメントというテクニカル分析では、この上昇分の50%押しである109円93銭水準(約110円)、61.8%押しである107円87銭(約108円)が、ドル安・円高の目安とされます。

日経平均の下値目途は18,400円、小粒でも着実な税制改革実行なら相場の大崩れは回避

日経平均株価も円高の進行で一時的な調整が予想され、弊社ではこの先、18,400円を下値の目途とみています。ただトランプ政策への期待が幾分後退しただけで、世界の金融市場が大きく混乱する可能性は低いと思われます。米国経済は比較的底堅いため、早期の景気対策が望まれるという状況にはありません。また中国の景気も安定しており、欧州の政局も今のところ大きな混乱はみられていません。

現時点でトランプ米大統領は5月に税制を含む本格的な予算教書を議会に提出し、その後議会は予算審議を開始する見通しです(図表2)。ただ予算関連スケジュールの遅延や議会の小規模な予算が表面化した場合、4-6月期は相場が低迷しやすくなる恐れがあります。2018年度予算については、年内遅くに成立し、当初よりも小粒な内容になると考えますが、それでも着実に税制改革や景気対策が実行される限り相場の大崩れには至らないと思われます。

 

 

170327図表1 170327図表2

 

 

 (2017年3月27日)

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