為替と株価の関係~他国のケース

2016/09/01

市川レポート(No.294)為替と株価の関係~他国のケース

  • 米国の場合、2014年までは「ドル高で株高」、それ以降は「ドル高で株安」という異なる動きに。
  • 為替と株価の関係は市場環境などで大きく変化することがあり、米国のようなケースも稀ではない。
  • タイの場合、「バーツ高で株高」、「バーツ安で株安」という新興国市場によくみられる結果となった。

米国の場合、2014年までは「ドル高で株高」、それ以降は「ドル高で株安」という異なる動きに

前回のレポートでは、ドル円相場と日本株の関係について、回帰分析という手法を用いて検証を行いました。今回は、その他の国についても同様の検証を試みます。なお検証期間はいずれも日本と同じ2011年11月を起点とします。まず米国について、為替は米連邦準備制度理事会(FRB)が算出する名目ドル指数(対主要通貨)、株式はダウ工業株30種平均とし、前者の動きで後者の動きを説明するような数式「Y=aX+b」を求めます。

回帰分析の結果は図表1の通りです。米国の場合、為替と株価の散布図の形状から、2つの期間に分けて分析を行いました。その結果、期間1(2011年11月1日から2014年12月31日)の推計式は「Y=525.04X-25,044」となり、これは「ドル高で株高」、「ドル安で株安」を示唆します。一方、期間2(2015年1月1日から2016年8月26日)は「Y=-150.36X+31,255」となり、これは「ドル高で株安」、「ドル安で株高」を示唆します。

為替と株価の関係は市場環境などで大きく変化することがあり、米国のようなケースも稀ではない

これまで市場では、ドル高が輸出企業を中心とする米製造業の業績に悪影響を与えるとの見方が一般的でしたので、期間2の分析結果に違和感はありません。それではなぜ期間1では異なった関係が示されたのでしょうか。実は為替と株価の関係は、その時々の市場環境や相場のテーマで大きく変化することがあります。そのため今回の米国のケースのように、設定期間の違いで異なった分析結果になるのは稀なことではありません。

参考までに、FRBは10%のドル高進行で、物価は1年程度で0.5%低下し、GDPは3年程度で0.7%程度低下するとしています。そのためドル高には金融引き締め効果があると考えられ、その影響を大きく受けた場合、株価は下落しやすくなります。ただ一般に株価は様々な要因で変動しますので、将来の安定した企業業績や景気見通しを織り込めば、ドル高でも株価は上昇することはあります。

タイの場合、「バーツ高で株高」、「バーツ安で株安」という新興国市場によくみられる結果となった

次に、より複雑な動きがみられたタイの事例をご紹介します。為替はドルバーツ、株価はタイSET指数を用い、散布図の形状から5つの期間に分けて分析を行いました。その結果は図表2の通りです。数式「Y=aX+b」のaにあたる傾きや、bにあたる切片は、各期間で大きく変化し、推計式はそれぞれ異なりますが、いずれも「ドル安・バーツ高で株高」、「ドル高・バーツ安で株安」を示唆しています。

一般に新興国市場では、「通貨高で株高」、「通貨安で株安」の関係がみられます。新興国の多くは対外純債務国であり、海外の投資マネーに依存しています。そのため海外からの株式投資の増加は、新興国の通貨高と株高につながりやすくなります。タイのケースはまさに「バーツ高で株高」、「バーツ安で株安」という結果になりました。それにしても今回の米国とタイの例をみるにつけて、ドル円相場と日経平均の関係は、相当強く安定的であることが改めて確認できます。

160901図表1160901図表2

 

 (2016年9月1日)

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