マイナス金利と銀行株

2016/08/09

市川レポート(No.287)マイナス金利と銀行株

  • マイナス金利は国債市場で利回り変動幅を拡大させ、株式市場で銀行株に大きな影響を与えた。
  • 銀行株は金利低下で利鞘縮小の思惑から、業績悪化懸念を背景に下落、TOPIXにも影響大。
  • 金融政策は銀行決算も左右するため銀行株変動は合理的、日銀による9月の政策検証に注目。

マイナス金利は国債市場で利回り変動幅を拡大させ、株式市場で銀行株に大きな影響を与えた

日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定したのは、2016年1月28日、29日の金融政策決定会合でした。この会合から足元まで、為替市場ではドル円レートがドル安・円高方向に振れ、株式市場では日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)が下落し、国債市場では利回りがほぼ全期間にわたって大幅に低下するなど、各市場で顕著な動きがみられました。

このうち国債利回りについて詳しくみてみると、7月28日、29日の日銀金融政策決定会合後は、利回りが一転してほぼ全期間で大きく上昇しています。これは7月会合でマイナス金利の深掘りが予想されていたにもかかわらず日銀が深掘りを見送ったため、国債市場で織り込みの解消が進んだことによるものです。マイナス金利の導入は、国債市場で利回り変動幅の拡大につながりましたが、株式市場でも銀行株に大きな影響を与えました。

銀行株は金利低下で利鞘縮小の思惑から、業績悪化懸念を背景に下落、TOPIXにも影響大

マイナス金利の銀行株への影響について具体的に確認してみます。1月28日から7月28日までの間、2年国債利回りは31.9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、10年国債利回りは49.9bp低下しました。同期間でTOPIXは6.1%下落しましたが、全33業種中で銀行業指数が24.1%と最大の下落率でした。これは国債利回りの低下が銀行の利鞘縮小につながるとの思惑から、業績悪化への懸念が強まったためと考えられます(図表1)。

次に7月28日から8月8日までの動きをみると、2年国債利回りは18.1bp上昇し、10年国債利回りは22.4bp上昇しました。同期間でTOPIXは0.1%下落しましたが、全33業種中で銀行業指数が8.5%と最大の上昇率でした。これは国債利回りの上昇で銀行の利鞘縮小に歯止めが掛かるとの思惑から、業績悪化への懸念が和らいだためと考えられます。銀行業指数はTOPIXの時価総額ウェイトが高く(8月8日時点で7.7%と全33業種中第4位)、その動きはTOPIX全体に相応の影響を及ぼします。

金融政策は銀行決算も左右するため銀行株変動は合理的、日銀による9月の政策検証に注目

報道によれば大手銀行5グループ(※三井住友、三菱東京UFJ、みずほ、りそな、三井住友トラスト)合計の2016年4-6月期の最終利益は、前年同期比27%減少の5,859億円でした。5グループ合計の資金利益は、利鞘縮小などの影響で同16%減少の1兆1,740億円となった一方、日銀への国債売却を含む債券売買益は同38%増加の2,163億円でした。金融政策の決算への影響は明確であり、銀行株の変動は合理的と思われます。

全国銀行協会が発表した都市銀行の7月末時点における貸出残高は、前年同月比0.7%減となりました(図表2)。減少は3年9カ月ぶりで、マイナス金利環境下でも企業の資金需要は高まっていない様子が窺えます。こうしたなか日銀は、9月20日、21日の金融政策決定会合で、政策効果について総括的な検証を行う予定です。検証結果次第では、銀行株に強い動意がみられる可能性があります。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

160809図表1160809図表2

 

 (2016年8月9日)

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