イエレン議長の講演と相場の反応

2016/06/08

市川レポート(No.259)イエレン議長の講演と相場の反応

  • イエレン議長は5月の雇用統計を過度に重視せず、「労働市場の動向を注意深く見守る」と発言。
  • 利上げのタイミングは、「数カ月内に」から「時間をかけて徐々に」へ変更されたと解釈できる。
  • 現時点で9月に年内1回の利上げを予想、市場の織り込みも進んでおり大きな混乱はなかろう。

イエレン議長は5月の雇用統計を過度に重視せず、「労働市場の動向を注意深く見守る」と発言

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は6月6日、フィラデルフィアのWorld Affairs Councilにて米国経済の現状と見通しについて講演を行いました。3日の5月米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回った直後だけに、イエレン議長が金融政策に関しどのような発言をするのか、市場の注目が集まっていました。以下、発言のポイントを整理し、米利上げ時期を再考します。

まず労働市場について、需給の緩み(slack)は解消に近づいたとの見解が示されました。また5月の雇用統計は失望を誘ったが、単月の数字を過度に重視すべきではないとし、新規失業保険件数は依然低水準と指摘しました。その上で労働市場の動向を注意深く見守る必要があると述べているため、政策判断には少なくとも6月と7月の雇用統計(それぞれ7月8日、8月5日発表予定)の結果が待たれると推測されます。

利上げのタイミングは、「数カ月内に」から「時間をかけて徐々に」へ変更されたと解釈できる

また設備投資については、エネルギーセクター以外でもこの半年は低調であるとの認識を示しました。ただし、これは一時的なもので今後は持ち直すとし、その進展には十分な注意を払うと述べました。そして物価については、この1、2年で2%へ上昇していくとの見解を明らかにしました。一方、金融情勢は改善して海外リスクは減少したものの、中国経済と英国の欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票は、リスク要因とされました。

以上を踏まえ、今回の講演では「利上げは時間をかけて徐々に(gradually over time)」行う必要がある」とのメッセージが発信されました。イエレン議長は5月27日の講演で、「数カ月内に(in the coming months)利上げするのがおそらく適切」と述べていましたので、利上げのタイミングについては、「数カ月内に」から「時間をかけて徐々に」へ、変更されたと解釈することができます。

現時点で9月に年内1回の利上げを予想、市場の織り込みも進んでおり大きな混乱はなかろう

米連邦公開市場委員会(FOMC)について、年内のスケジュールは図表1の通りです。イエレン議長は直近の雇用減少が一時的な現象か否かを検証するとしていますので、6月は利上げ見送り、7月もその可能性が高いと思われます。残りのFOMCは9月、11月、12月に開催されますが、11月は8日に大統領選挙が控えており、直前の利上げは難しいため、9月と12月が焦点になるとみられます。

利上げ時期とペースについては、米国経済および海外リスクの動向にもよりますが、現時点で9月に年内1回の利上げが行われる公算が大きいと予想します。なお雇用統計とイエレン議長の講演を経ても、金融市場は比較的落ち着いています(図表2)。これはイエレン議長が米国経済について慎重ながらも楽観的な見方を示し、緩やかな利上げ余地を残したことが大きいと思われます。そのため米利上げ時期の先送りは、いったん市場に織り込まれ、ここから大きな動揺に発展することはないとみています。

160608図表1160608図表2

 

 (2016年6月8日)

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