Brexitが金融市場に与える影響

2016/03/28

市川レポート(No.228)Brexitが金融市場に与える影響

  • EU離脱を問う国民投票は6月23日に実施、直近調査では残留支持と離脱支持が拮抗の状況。
  • Brexit実現の場合、直接投資やサービス収支が減少し、英経済の成長率は大幅鈍化の可能性。
  • 市場は不透明感から思惑先行でリスクオフとなりやすく、日経平均は16,000円を割り込む恐れも。

EU離脱を問う国民投票は6月23日に実施、直近調査では残留支持と離脱支持が拮抗の状況

英国では6月23日、欧州連合(EU)加盟継続の是非を問う国民投票が実施されます。英国民の間には長きにわたって、東欧などからの移民急増で職を奪われたとの不満や、ユーロ加盟国の債務危機に非ユーロ加盟国の英国が巻き込まれたなどの不満が蓄積されてきました。そこでキャメロン首相は昨年5月の総選挙で、EU離脱を問う国民投票の実施を公約し、自身が率いる保守党の下院における単独過半数獲得に成功しました。

キャメロン首相は移民制限などを含む改革案をEUに提示し、EU側は2月18日、19日の首脳会議で改革案をまとめ合意しました。これを受けてキャメロン首相は国民投票の実施を決定しましたが、EUから譲歩を引き出したという成果を強調し、EU残留を訴えています。ただ直近の世論調査では、残留支持と離脱支持が拮抗し、予断を許さない状況となっています。

Brexit実現の場合、直接投資やサービス収支が減少し、英経済の成長率は大幅鈍化の可能性

仮に「Brexit(ブリクジット)=英国のEU離脱」が実現した場合、英国経済の成長率鈍化や、金融市場の混乱が予想されます。まず英国とEUとの間に関税などの障壁が生じ、双方の貿易コストは大幅に上昇します。そのため多国籍企業などが英国に進出して製造拠点を設立しても、これまでのように英国からEUに輸出するメリットはなくなるため、英国への直接投資(図表1)が大幅に減少する可能性があります。

そして金融サービスのパスポート制度(ある国で事業免許を得れば他国でも事業が可能というEU域内の単一免許制度)がなくなるため、多くの金融機関が業務拠点をロンドンからフランクフルトなど他のEU加盟国の都市に移すことも考えられます。直接投資や金融サービス収支(図表2)が減少すれば、企業活動や雇用に悪影響が及ぶことは十分に想定され、英国の経済成長率については1%から2%程度落ち込むとの見方もあります。

市場は不透明感から思惑先行でリスクオフとなりやすく、日経平均は16,000円を割り込む恐れも

英国経済の悪化は、英国向け輸出の減少を通じてEU諸国の景気にも影響する恐れがあります。Brexitが決まれば、英国とEUは離脱条件を巡る交渉に入り、関税などについて新たな貿易協定を結ぶことになります。弊社では最終的にBrexitは回避されるとみていますが、相場の傾向として、国民投票までの不透明感を嫌気し、思惑先行でリスクオフ(回避)の動きを強めることは十分考えられます。

6月23日に向けてBrexitへの懸念が強まれば、為替市場では英ポンド、場合によってはユーロにも下落圧力が強まり、相対的に米ドルや日本円が買われる可能性があります。また株式市場では、欧州株中心に調整が進むなかで、米ドル高、円高が重しとなり、日米株も連れ安となる展開が予想されます。足元の日経平均株価は17,000円前後で推移していますが、市場が冷静さを失い、かつ投機的な動きが加わった場合には、16,000円を大幅に下回って下落するリスクも想定しておく必要があると思われます。

160328 図表1160328 図表2

 

 (2016年3月28日)

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