ECB理事会と米雇用統計~相場の反応を整理する

2015/12/08

市川レポート(No.183)ECB理事会と米雇用統計~相場の反応を整理する

  • ECB理事会内の意見調整が難航した可能性もあり、追加緩和は市場の失望を誘う内容に。
  • 11月米雇用統計で12月利上げはほぼ確実との見方が優勢となり、米市場はトリプル高。
  • ECBへの失望は行き過ぎでECBトレードは再開へ、米利上げ後は市場との対話が焦点。

ECB理事会内の意見調整が難航した可能性もあり、追加緩和は市場の失望を誘う内容に

 12月3日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会では、①預金ファシリティ金利の引き下げ(-0.2%から-0.3%へ)、②量的緩和実施期間の半年間延長(少なくとも2016年9月までを少なくとも2017年3月までに)、③量的緩和での購入対象拡大(地方債の新規組み入れ)を柱とする追加緩和が決定されました。その一方で、政策金利や資産購入規模は据え置きとなりました。

 もう一段踏み込んだ追加緩和を期待していた市場には失望感が広がり、欧州を中心に株安と国債価格の下落(利回りは上昇)が進み(図表1および2)、為替市場ではユーロが対米ドルを中心に全面高となりました。ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁は同日夜の講演で、追加緩和は必要と思わなかった旨の発言をしていることから、理事会内の意見調整が難航し、市場が納得するほどの規模では合意に至らなかったのではないかと推測されます。  

11月米雇用統計で12月利上げはほぼ確実との見方が優勢となり、米市場はトリプル高

 翌4日のアジア株式市場は、前日の欧米市場の軟調地合いを引き継ぎ、総じて売り優勢の展開となりました。この日の日経平均株価は、前日比435円42銭(2.2%)安の19,504円48銭で取引を終えました。そして注目の11月米雇用統計(速報値、季節調整済み)では、非農業部門雇用者数が前月比21.1万人増加し、市場予想(20万人)を上回りました。10月と9月の増加数も上方修正され、年初からの月間平均増加数は21万人と雇用回復の目安となる20万人を超えました。 

 失業率は前月の5.0%と変わらずで、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが完全雇用における失業率とみる水準(4.9%~5.2%)の下限近くに位置しています。市場では12月の利上げはほぼ確実で、米国経済は利上げに耐えうるとの期待から米国株は上昇(図表1)、為替は米ドルが全面高となりました。一方、利上げ後のペースは緩やかなものにとどまるとの見方から、米国債は前日比上昇(利回りは低下)し(図表2)、4日の米国市場は株、通貨、国債が揃って上昇するトリプル高となりました。

ECBへの失望は行き過ぎでECBトレードは再開へ、米利上げ後は市場との対話が焦点

 ECB理事会後の市場の失望は、それほど気にする必要はないと考えます。ECBによる量的緩和は今年3月に始まったばかりで、また月600億ユーロにのぼる国債等の買い入れ継続はそれだけでも十分緩和的ですので、市場の反応は行き過ぎと思われます。結局のところ今回は、12月15日、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、「ECBトレード(ECBの追加緩和期待を背景とする欧州株買い、欧州国債買い、ユーロ売りなどの取引)」にとって格好のポジション調整の機会になりました。

 ECBが緩和的な政策スタンスを維持する限り、早晩ECBトレードは再開されると思われます。なお米雇用統計については、相場の反応に違和感はありません。12月利上げの可能性についてはすでにFOMCメンバーなどが示唆しており、利上げ時期の不透明感は相応に払拭されています。その意味でも利上げ後、金融市場の混乱が回避されるか否かは、米金融当局による市場との対話次第であり、利上げ後のペースに関する言及やフォワードガイダンスが次の大きな焦点になるとみられます。

151208 図表1151208 図表2

 (2015年12月8日)

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