TPP大綱と1億総活躍緊急対策~相場への影響を考える

2015/12/01

市川レポート(No.181)TPP大綱と1億総活躍緊急対策~相場への影響を考える

  • TPPの政策大綱は旧第3の矢(成長戦略)の具現化策であり、輸出の促進などが柱に。
  • 1億総活躍緊急対策は「新3本の矢」の具現化策だが、TPPの政策大綱とも密接に関連。
  • 政策が追い風となる業種も考えられるが、日本株や円相場が動意づくにはまだ材料不足。

TPPの政策大綱は旧第3の矢(成長戦略)の具現化策であり、輸出の促進などが柱に

 政府は11月25日に環太平洋経済連携協定(TPP)の国内対策をまとめた政策大綱を決定し、翌26日には1億総活躍社会実現への緊急対策をまとめました。今回はそれぞれのポイントを簡単にまとめ、これらの材料が今後、日本株や円相場にどのように織り込まれるのかを考えます。TPPは安倍首相によって「成長戦略の切り札」と位置付けられているように、アベノミクス「3本の矢」のうち第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)を具現化した施策です。

 TPPの政策大綱では①「輸出の促進」、②「グローバル・ハブの実現」、③「農業への配慮」が主な柱となりました。①では中堅中小企業の参画、そしてコンテンツや農林水産物・食品、インフラシステムの輸出促進が明記されています。②には外国企業の誘致、訪日外国人観光客の地方誘致や消費拡大の促進などが含まれます。③は農家の不安に対処し、国産米を備蓄米として政府が買い入れるなどの保護策です。  

1億総活躍緊急対策は「新3本の矢」の具現化策だが、TPPの政策大綱とも密接に関連

 1億総活躍緊急対策はアベノミクス「新3本の矢」の具現化策であり、その「新3本の矢」は、少子高齢化問題に正面から取り組むもので、日本国内の労働人口の維持・拡大を目指す基本方針と考えられます。「新3本の矢」では、第1の矢を「希望を生み出す強い経済」とし、第2の矢である「夢を紡ぐ子育て支援」と第3の矢である「安心につながる社会保障」を相互に作用させ、成長と分配の好循環を構築することを目指します(図表1)。 

 1億総活躍緊急対策で示された最低賃金の引き上げなどは第1の矢に関するもので、保育・介護施設の整備などは第2、第3の矢に関するものです。なお経済財政諮問会議の試算によれば、第1の矢で目標とする600兆円の積み上げにはTPPによる輸出(25兆円)や訪日外国人観光客の消費(5~8兆円)が含まれています。そのため1億総活躍緊急対策はTPPの政策大綱とも密接に関連していることになります(図表2)。

政策が追い風となる業種も考えられるが、日本株や円相場が動意づくにはまだ材料不足

 TPP協定発効後、数多くの工業品目の関税が即時あるいは段階的に撤廃されることになります。そのため一般には自動車、自動車部品、機械、電気機器などの業種は恩恵を受けやすいとみられます。またTPPの政策大綱で明記されている関連産業にも追い風となり、インバウンド銘柄は引き続き選好されやすい可能性があります。ただ実際の経済効果は、早ければ2016年とみられる協定の発効を待たねばならず、直ちに日本株が動意づくにはまだ詳細な材料が不足していると思われます。

 また1億総活躍の緊急対策も、保育・介護に関連するビジネスには好機とみられますが、今の段階では国の予算配分や今後の進捗を見極めざるを得ません。円相場についても、今回の施策は直接的に国内の金利や物価の変化を促すものでなく、また現時点の情報のみで先行きの貿易動向を把握することは極めて困難であることから、為替市場ではしばらく材料になりにくいと思われます。ただ今回のTPPの政策大綱と1億総活躍緊急対策は、日本経済の将来を見据えて成長機会を探り、少子高齢化問題にも取り組んでいる点は前向きに評価して良いと考えます。政策効果も中長期にわたってしか顕在化しませんが、着実に施策が進む過程において市場の評価が高まる可能性もあると考えます。

151201 図表1151201 図表2

 (2015年12月1日)

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