グローバルな金融環境の検証

2015/10/16

市川レポート(No.159)グローバルな金融環境の検証

  • 極めて緩和的な金融環境が、世界株の弱気相場入りや深刻な金融危機の発生を抑制。
  • 追加緩和期待の強い日本とユーロ圏だが、現行政策だけでも日々緩和度合は増している。
  • 来年のグローバルな金融環境は今年以上に緩和的になる可能性が高く、株式には好材料。

極めて緩和的な金融環境が、世界株の弱気相場入りや深刻な金融危機の発生を抑制

 主要国の株価指数は、米利上げ懸念とチャイナ・ショックを主因として夏場に大きく値を崩す展開となりました。世界経済をけん引する米中の弱材料に対し、投資家は急速に警戒感を強め、一時はパニック的な相場の動きもみられました。先進国と新興国を含む世界46カ国の代表的な株価指数で構成されるMSCI世界株価指数(米ドル建て)は、4月27日に年初来高値となる443.98ポイントをつけた後、9月29日の安値372.91ポイントまで16%下落しました。

 ただ一般に弱気相場入りとされる20%以上の下げには至っていませんので、MSCI世界株価指数の弱気相場入りは回避できたといえます。また金融市場の混乱にもかかわらず、世界的な金融危機や信用収縮は発生していません。これについては、今年に入り多くの国が金融緩和を行ったことで(図表1)、世界の金融市場に潤沢な流動性が溢れ、これが悪材料の緩衝材となって、株式の弱気相場入りや深刻な金融危機の発生を抑制したと考えられます。  

追加緩和期待の強い日本とユーロ圏だが、現行政策だけでも日々緩和度合は増している

 こうしたなか、景気が足踏み状態にある日本や物価の低迷が顕著なユーロ圏では、追加緩和への期待が強まっています。現在、日銀は量的・質的金融緩和を、欧州中央銀行(ECB)は量的緩和をそれぞれ実行しています。ともに長期国債などの購入を通じて資産規模を拡大させていますので、冷静に考えれば日本とユーロ圏では現行の政策だけでも十分、日々の緩和度合は増していることが分かります。 

 仮に日銀とECBが現行の政策を維持した場合、それぞれの資産規模の変化を試算してみます。日銀は年間80兆円のペースでマネタリーベースを増やしているので、2015年9月末時点のマネタリーベース約338.4兆円は、2016年12月末には約435.9兆円に達すると推計されます。ECBは毎月600億ユーロの資産を買い入れていますので、2015年9月25日時点の総資産約2.6兆ユーロは、2016年12月末には約3.3兆ユーロに達すると推計されます(2016年9月末で買い入れを終了し、その後の資産規模は維持と仮定)。 

来年のグローバルな金融環境は今年以上に緩和的になる可能性が高く、株式には好材料

 上記の日銀とECBの資産増加分を米ドル換算(1米ドル=120円、1ユーロ=1.14米ドル)して合算すると、約1.4兆米ドルになります。米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ後も国債などの再投資で資産規模を維持するとしていますので、FRBの資産縮小が来年に始まらなければ、日銀とECBによる現行の政策だけで、2016年末までに約1.4兆米ドルの流動性が市場に供給されることになります。 

 なおブラジルと南アフリカが直近に金融引き締めを行っていますが、それ以上の国々が金融緩和を行っているのは前述の通りです。そしてFRBは利上げ後も資産規模を維持する見通しであることから、日銀とECBが追加緩和を行わなくても、世界全体の流動性供給量は増大します。つまり来年のグローバルな金融環境は今年以上に緩和的になる可能性が高く、これ自体は株式などリスク資産にとって好材料となります。

 

151016 図表1 

 (2015年10月16日)

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