米長期金利を押し上げているのは

2018/01/12

▣ 米長期金利が一時2.59%まで上昇

日銀が1月9日の国債買入れオペで、「10年超25年未満」、「25年超」のオファー金額を減額したことを受け、日銀の量的緩和縮小への警戒が広がりました。国内債の売りが米国債市場に波及し、米長期金利(10年債利回り)は節目とされる2.5%を上回り、2.55%まで上昇しました(図表1)。10日には、中国政府が米国債の購入の減額や停止を検討していると伝えられたことから、一時2.59%と昨年3月以来の高水準を付けました。

米国の著名債券運用者のビル・グロース氏が、「5年物と10年物米国債の利回りが25年間続いたトレンドラインをブレークし、債券の弱気相場が確認された」とツイートしたことも、米長期金利を押し上げたとみられます。

押し上げ要因としては

米長期金利上昇の要因としては、上記の(1)日銀のテーパリング(長期国債などの資産買入の段階的縮小)への警戒、(2)中国政府による米国債購入の減額や停止観測、(3)著名債券運用者の弱気相場発言のほかに、(4)原油価格上昇による物価の押し上げ、(5)世界的な株高を背景にした安全資産とされる米国債需要の低下、(6)減税による米国財政の悪化・国債増発への警戒、(7)米金融緩和縮小などが挙げられます。

(1)については、9日のオペで10年超25年未満、25年超のオファー金額を、それぞれ2,000億円から1,900億円、900億円から800億円へと、合計200億円の減額。もっとも、日銀は毎月7兆円を超える長期国債を買い入れており、本格的なテーパリングを警戒する段階ではなさそうです。40年債利回りが1.0%を下回って推移していたため、イールドカーブ・コントロール(適切なイールドカーブの形成)の一環として、長めのゾーンの買入額を若干減らし、利回り低下を抑制したと解釈したほうがよさそうです。10日の10年国債入札が順調な結果になったことに加え、残存期間10年までの長期国債を対象とした11日の国債買入れオペでは、買入額が据え置かれました。

ただ、昨年11月に黒田日銀総裁が、「リバーサル・レート(金利を下げ過ぎると、貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるという理論)」に言及して以降、日銀による金融政策の調整(テーパリングや金利上昇容認等)が意識されるようになり、市場が神経質になっているとみられます。

(2)については、中国の外為管理局が11日に「偽ニュースの可能性がある」と否定しました。

(3)についてはもう少し様子を見る必要があります。米長期金利が昨年3月につけた2.63%を抜けてくると、これまでのレンジをブレークしたとの見方が広がる可能性があります。

(4)NY原油が11日には1バレル63ドル台後半と3年1か月ぶりの高値まで上昇しています。米エネルギー情報局(EIA)は「短期エネルギー見通し」で、原油価格の18年現物相場見通しを上方修正しました。期待インフレ率も上昇してきており、米金利は低下しにくくなっているとみられます(図表2)。

(5)世界経済の拡大基調や業績への期待などを背景に、投資家のリスク選好が続きそうです。

(6)トランプ米大統領は昨年12月22日、10年間で1兆5,000億ドルの減税をともなう税制改革法案に署名しました。米財務省は、減税効果で成長率が年3%程度で推移すれば10年間の税収総額は従来予想より1兆8,000億ドル増え、減税規模を上回ると試算していますが、甘い見通しとの見方が多いようです。米連邦準備制度理事会(FRB)がバランスシート(米国債などの保有資産)の縮小に着手する中、米国債増発なら需給悪化が意識されそうです。ただ、米国債市場はある程度の財政悪化は織り込んでいるとみられます。

(7)FRBは緩やかなペースでの利上げと、慎重なバランスシートの縮小を継続するとみられます。利上げペースが加速しない限り、米長期金利への影響は限定的となりそうです。

▣ 米長期金利は一旦落着き

日銀のテーパリング観測や中国の米国債購入減額への警戒は大きく後退していることから、米長期金利については、過剰に反応して上昇した分の修正が入る可能性が高そうです。ただ、(3)~(7)の要因などで、低下幅は限定的となりそうです。またこの先、米長期金利が2.6%を超えてくると、上昇余地を探る展開も想定されます。とはいえ、昨年12月に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の長期の政策金利見通しは2.75%。大幅に米財政が悪化したり、米利上げペースが加速しない限り、この水準を大きく超える可能性は低そうです。

▣ 他の金融市場は

他方、ドル円については(1)による円高、(2)によるドル安圧力は後退するとみられます。もっとも、米長期金利が低下に転じると、ドルの戻りも限定的になりそうです。また、日銀の金融政策の調整への懸念はくすぶり、円の下落も抑制されるとの見方から、ドル円は110~115円を中心にしたレンジでの動きがしばらく継続しそうです。

国内株式については、高値への警戒はくすぶるものの、(5)を背景に堅調な地合いが続きそうです。ドル円がレンジでの動きになっても、良好な業績が株価を押し上げるとみられます。ただ、株価の為替離れが進んでいるとはいえ、ドル円がレンジの下限でもみ合う動きが続くと、株価の上値が抑えられる可能性があります。

国内の長期金利については、米長期金利の動きをにらみながらも、当面は0.1%を上限とするレンジでの動きが想定されます。とはいえ、黒田日銀総裁が4月8日に任期満了を迎えることもあり、今年は日銀の金融政策に大きな注目が集まりそうです。総裁交代(再任)や政府のデフレ脱却宣言などを契機に、0.1%を超える長期金利の上昇をある程度容認する、ゼロ%程度としている長期金利の水準を0.25%程度に引き上げるなど、金融政策を調整するのではないかとの見方も増えてきています。この場合、市場との対話が上手くいかないと、株価の急落、円の急伸や長期金利の急上昇など金融市場が過剰反応することも想定されます。今年は日銀の政策変更に対し、金融市場はやや神経質になりそうです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=9&type=env

 

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