日銀のETF買入れは、変動抑制より下支え

2017/08/18

▣ 日銀の上場投資信託(ETF)買入れは、市場の変動性(ボラティリティ)を若干低下させる傾向

国内株は、北朝鮮情勢の緊迫化やトランプ政権の政策運営の不透明感から、変動性が足もとでやや高まっていますが、6月5日から8月8日までの約2か月間、前日比が±1%以内に収まるこう着した相場が続いていました(図表1)。日銀のETF買入れが原因との指摘がありますが、国内株は米国株や為替の影響が大きく、米国株が過去最高値を更新しながらの小動きが続いたこともボラティリティ低下の一因と考えられます(5月18日~8月16日まで、NYダウの前日比が±1%以内)。

日銀は、前場にTOPIXが下落した場合に、買入れに動くとみられます。前場の騰落率が-0.3%を下回ると買入れが実施される可能性が高いのですが、前場の騰落率が-0.3%までは小幅な下落でも、前日まで続落していたら買入れが実施される傾向があるなど、相場状況によるようです。

ここでは、前場に大きく下落したケースでは日銀がほぼETF買入れを実施するので、実施した日としない日の国内株の動きを比較するため、前場の騰落率が-0.3%~0.0%のケースについてみてみます。
この場合、ETF買入れが実施されない日に比べ、実施された日は後場の騰落率がプラスになるケースが多く、全体的に押し上げられる傾向がみられます(図表2)。

日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入し、ETFの買入額を年1兆円のペースで増加させるという大幅な増額を決定しました。また、2014年10月末には年3兆円のペースに、2016年7月末には年6兆円のペースに拡大させました。買入額の拡大に伴い、買入れを実施した際の後場の押し上げ効果も強まっています(図表3)。

他方、後場のボラティリティについては、ETF買入れにより相場を下支え(下げを抑制)するため、買入れがない日に比べ低くなる傾向がみられます(図表4)。日銀のETF買入れは、相場を下支えするとともに、ボラティリティを低下させていると言えそうです。

▣ リスクプレミアムへの働きかけは効果が薄れている可能性

ETF買入れについて日銀は、株価のリスクプレミアムに働きかけて(投資家の先行きへの安心感を高めて)、適切な株式の価格形成を促すのが目的、としています。

リスクプレミアムに働きかけ株価が押し上げられると、株価収益率(PER)も押し上げられ株価がやや割高な状態になることが見込まれます。ただ、2013年4月に黒田バズーカとの呼ばれた「量的・質的金融緩和」導入時、2014年10月末の資産購入拡大時には、株価、PERが押し上げられましたが、2016年7月末にETFの買入ペースを倍増させた際には、市場の反応は限定的でした(図表5)。足元の日経平均株価の予想PERは14倍前後と、過去の平均的な水準の15倍を下回っており、リスクプレミアムへの働きかけの効果が薄れている可能性があります。

▣ 否定的な見方はあるものの

日銀のETF買入れについては、株価形成を歪めているのではないか、また間接的な株式の大量保有で議決権行使やガバナンス上の問題があるのではないかといった懸念もくすぶっています。下落しても日銀が買ってしまうため、押し目買いの機会を潰しているとの声も聞かれます。

とはいえ、黒田日銀総裁は、ETFや株式の買入れについては異例の政策であることは認める一方、現行の強力な金融政策を堅持する姿勢を示しています。黒田総裁の任期中(2018年4月8日まで)は、ETF買入れのリスクプレミアムへの働きかけについては効果薄であるものの、相場の下支えに寄与することが見込まれます。

 図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=9&type=env

 

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