トランプ政権とドル円

2017/03/24

▣ トランプ氏の登場で、ドル高・円安が進行

トランプ氏の大統領選勝利を受け、急伸したドル円ですが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ再開を受け、昨年12月15日に118円台まで上昇して以降は、上値の重い展開が続いています。FRBは12月に続き、3月に早めの利上げを決定しましたが、3月22日には一時110円台まで下落しました(図表1、2)。

トランプ氏の登場を受け、ドル高・円安が進行した主な要因として、

  • トランプ氏が掲げる大規模なインフラ(社会資本)投資や減税により、米国債が増発されるとの懸念に加え、経済成長やインフレが押し上げられるとの見方を受けて利上げ観測が強まったことを背景に、米金利が大きく上昇したこと
  • 景気刺激策への期待から投資家のリスク選好が広がったこと(ドル買い・円売り材料)
  • 国外に滞留している米企業の利益を国内に還流させる場合に利益にかかる税率が引き下げられ、巨額の資金が米国に戻り、ドルを押し上げるとの観測が広がったこと

などが挙げられます。

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▣ 大統領就任以降、ドル円は上値の重い展開

ただ今年に入り、トランプ氏の通貨安批判や保護主義的な通商政策への懸念、減税やインフラ投資などの実施が後ずれするとの観測などが、ドルの上値を抑えている格好です。

ムニューシン米財務長官は、強いドルは米国経済に対する信認の証しだとした上で、長期的には良いこととしていますが、1月末にはトランプ氏が、「他国は通貨安誘導に依存している。中国は行っているし、日本は何年も行ってきた」と、日中の為替政策を批判しています。通商政策についてもまだ不透明ですが、先日の20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が採択した共同声明には「通貨安競争の回避」は引き続き明記されたものの、保護主義反対の文言が米国の意向を受けて盛り込まれませんでした。

足元では、米下院が3月23日、トランプ政権が最優先に掲げるオバマケア(医療保険制度改革)代替法案の本会議での採決を見送るなど、トランプ氏と議会との交渉が難航している模様です。税制改革の前提となるだけに、減税やインフラ投資などの実施が後ずれすることに加え、トランプ政権の政策の実行力への懸念が強まると、ドルが弱含む可能性があります。

▣ 4月、5月にはトランプ政権の政策がより明確に

今後は、3月24日に下院でオバマケア代替法案の採決が予定されており、可決されると上院に送られます。

順調にいけば4月中旬に大統領の署名を経て成立となりますが、予断を許さない状況です。

通商政策については、4月に日米経済対話が始まります。財政・金融政策の連携、インフラ整備、エネルギーなどの事業の協力、2国間貿易の枠組みが議論される見通しです。トランプ政権の通商政策、通貨政策が具体的に見えてきそうです。5月にはトランプ政権が詳細な予算教書を議会に提出する予定になっています。減税やインフラ投資の内容、規模などが明らかになることが期待されます。その後は政策への期待から政策の実現性へ、市場の目が向くことになりそうです。

トランプ政権の政策運営は、金融政策にも大きな影響を与えます。FRBは3月に利上げしましたが、景気刺激策が本格化する前に、早めに動いたとも考えられます。減税などへの期待が後退すると、米国の利上げペースが減速することも想定されます。

他方、4月中にも、米財務省は半年に一度の為替報告書を公表します。日本、中国、ドイツなどが監視リストに入っていますが、為替操作国に認定されると、通貨切り上げの要求が高まることになります。また、4月上旬で日程調整されている米中首脳会談では、北朝鮮問題が主要議題になると報じられています。北朝鮮情勢が緊迫化すると、逃避通貨とされる円を買う動きが強まることも想定されます。

日銀は現在の強力な金融緩和策を堅持する姿勢を示しており、利上げ局面にある米国とは金融政策の方向性が違います。ただ、日米の金融政策の方向性からはドル高・円安地合いですが、トランプ政権の政策運営に大きく左右されることから、しばらくドル円は神経質な展開が続きそうです。

※オバマケア:オバマ前米大統領が「国民皆保険」の実現を目指して取り組んだ医療保険制度改革。2010年に成立した。保険未加入者に民間保険プランを割安で選べるようにし、14年から加入を義務付けた。一方で、健康状態の悪い低所得者の加入が増えて保険料が一部で値上がりするケースなどが問題視された。個人の保険加入を国が強制する制度そのものに対する批判も強い。(時事通信社より)

 

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