来年3回の米利上げを意識

2016/12/16

▣ 利上げは予想どおりも、政策金利見通し引き上げはサプライズ

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月14日、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25~0.50%から0.50~0.75%に引き上げました。昨年12月以来、1年ぶりの利上げになります。米労働市場が堅調に推移していることに加え、緩やかにインフレ率が上昇している中、米経済の進展に対する米金融当局者の信頼が、今回の利上げ決定の理由となった模様です。

利上げ決定は大方の予想どおりでしたが、あわせて公表されたFOMC参加者の政策金利見通し(中央値)で、来年の利上げ回数が3回と、9月時点の2回から増えたことがややサプライズとなりました(図表1、2)。14日の米国市場では利上げペースが加速するとの警戒から米株は反落、米長期金利は2.4%後半から2.5%後半に大きく上昇、ドル円も115円程度から一気に117円まで上昇。15日には米長期金利は一時2.64%まで上昇、ドル円も118円台に乗りました。

▣ 市場はやや過剰反応

もっとも、

  • FOMC参加者は経済見通しを大きく変えていないこと
  • イエレンFRB議長は政策金利見通しの変更は極めて小さいと発言していること
  • イエレン議長など主流派の政策金利見通しは来年2回で変わっていないとみられること
  • 2017年の利上げ回数(中央値)は2回から3回に増えたものの、2018年、2019年の3回の利上げ見通しで変わっていないこと
  • 政策金利の長期見通しの水準は中央値では2.9%から3.0%に上昇したものの、最も参加者の見通しが多かった最頻値は、9月も12月も3.0%で変わらなかったこと

などから、市場の動きはやや過剰反応といえるかもしれません。

トランプ次期米大統領の政策についてイエレン議長は、数人の参加者が財政政策の何らかの変更を加味したことから、FOMCの利上げ見通しが控えめながら上方に調整されたと述べています。経済見通しを9月から大きく変更していない状況で、まだ不透明な大統領就任後の政策を織り込んで政策金利見通しを引き上げるのは、やや無理がありそうです。

ただ、市場は来年2回利上げの織り込みでしたが、政策金利見通しが引き上げられたことを受け、今後は3回の利上げを意識することになります。

▣ 年2回がメインシナリオか

米短期金融市場が織り込む来年の利上げ回数の織り込みは、2回程度から14日には2.6回程度まで急上昇しました。15日は動きなし。来年2回の利上げを前提にした場合には、米長期金利については2.5%程度が目安となりますが、3回の利上げを本格的に織り込む動きが強まった場合には、2.7%~2.8%まで想定レンジの上限を引き上げる必要が出てきます。
ただ、依然としてインフレ率はFRB目標である2%を下回っており、利上げを急ぐ状況にはありません。まだ、市場が織り込む来年3月の利上げ確率は25%程度。昨年12月時点の政策金利見通しでは、今年の利上げ回数は4回見通しでしたが、実際は1回。今後の経済指標や次期政権の政策の影響を確認する必要がありますが、来年2回の利上げとの見方に戻ると、米金利上昇、ドル高進行も一服するとみられます。

20161216

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