ドル安・円高はやや行き過ぎの面も

2016/04/08

1.ドル円は黒田バズーカⅡ前の水準に

日銀の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を受け、1月29日には一時121円後半まで上昇したドル円でしたが、4月に入りドル売り・円買いが強まり、7日のニューヨーク外国為替市場で107円70銭前後と、約1年半ぶりの水準まで下落しました(図表1)。

2014年10月31日に日銀が「量的・質的金融緩和」を拡大(黒田バズーカⅡ)し、ドル円の水準を一気に120円前後まで引き上げましたが、この円安が帳消しになった格好です。

このドル円の動きについては、

  • 2月に開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において、通貨の競争的な切り下げを回避することで合意し、日銀のサプライズ緩和による円の大幅な下落への期待が後退したこと
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利見通しを引き下げるとともに、イエレンFRB議長が世界経済の減速を背景に、利上げを慎重に進めていく姿勢を示したこと(図表2)
  • 日銀や欧州中央銀行(ECB)などの、金融政策の手段や効果が限られてきているとの懸念
  • 米大統領選の有力候補者が日本や中国の通貨安誘導を批判していること

など、ドル売り・円買い材料が増える中、投機的な動きもドル円の下落を加速させたとみられます(図表3、4)。

安倍首相が恣意的な為替介入は慎まなければならないと発言したことで、為替介入への警戒が後退したことも、投機的な円買いを加速させた可能性があります。また、米金利が、利上げ開始でも落ち着いた動きになっていることに加え、米国の期待インフレ率は比較的高いことから、名目の金利からインフレ率を差し引いた実質金利で見るとドルの魅力はさほど高くないことも、ドル買いを弱めているとみられます。

2.やや行き過ぎの面も

もっとも、黒田バズーカⅡを受けた急激なドル円の修正は完全に打ち消された格好になりましたが、日米金融政策の方向性は変っていません。マネタリーベースについても日本は拡大が継続するのに対し、米国は当面横ばいが見込まれます(図表5)。短期間の急激な円安は行き過ぎだった可能性がありますが、完全に帳消しにするのもやや強引と思われます。

日米金利差とマネタリーベースの比率からドル円を推計すると、方向性はドル高・円安地合い(図表6)。行き過ぎた円安は修正され、現在は日米の金融政策の方向性の違いから見た妥当水準から大きくかい離するドル安・円高の進行とみることもできます。

今後は、各国が財政出動などで協調し景気浮揚を図ることができるか、米国が世界経済への影響に配慮しつつ、堅調な米経済を背景に緩やかながらも利上げを継続していけるかなどに加え、リスクオフ(回避)の一因となる増産凍結などの原油価格をめぐる動きも確認していく必要があります。投機的な円買いのポジションがいつ巻き戻すのかも注目材料です。また、過度な為替変動(円高)に対する為替介入については、実施することは可能とみられます。

ドラギECB総裁はECB年次報告書で、「世界経済の見通しは不透明で、デフレ圧力にも直面している。さらに、欧州の方向性のほか、衝撃に対する同地域の耐久力についての疑問にも直面している」と指摘するとともに、一段の刺激策を示唆しました。日本でも月末に、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の公表とともに、日銀金融政策決定会合を控えます。国内の金融市場が不安定な動きになる中、円高・株安を受けた日銀の次の一手も期待したいところです。

20160408

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