「真・3本の矢」- グローバル化に突き進む日本

2018/07/19

「真・3本の矢」とは

振り返れば2013年、アベノミクス「3本の矢」が登場しました(金融緩和、財政出動、成長戦略)。ただしそれは、2015年秋に「新3本の矢」へ移行しました(強い経済、子育て支援、安心につながる社会保障)。しかしこれも不発に終わった今、アベノミクスという言葉はあまり聞かれなくなりました。

とはいえ現在の安倍政権は、空虚な策のみならず、実は正しい施策も行っています。すなわち、移民の受入れ、自由貿易の推進、脱・米国です。これらを「真・3本の矢」と呼ぶことができるでしょう。

第一の矢 - 移民の受入れ

第一に、移民受入れ政策です。実際、外国人労働者は安倍政権のもとで2倍近くに急増しました(図表1)。そして政府は、在留資格をさらに緩和する方針を示しています。2025年までに50万人超の外国人を受け入れる、というのが目標です。リベラル(革新的)な方向へ、はっきりと舵を切ったのです。

外国人労働者は通常、数年間以上の滞在が見込まれます。よって国連の定義(12か月以上の居住)によれば、また普通の感覚でも、れっきとした「移民」です。したがって、移民受入れが本格化したことに関し、異論の余地はありません。人口減・労働者不足という日本の危機を直視した、正しい施策です。

第二の矢 - 自由貿易の推進

第二に、自由貿易の推進です。今週には、日本と欧州連合(EU)の間で経済連携協定(EPA)が署名されました(発効は来年3月の見込み)。単純に経済規模で言えば、世界最大級の自由貿易圏が誕生するのです(図表2)。それを進める日本には、久々に世界から注目(多くは称賛)が寄せられています。

これにより、日欧貿易において多くの品目が関税ゼロへ向かいます。日本国民はEUのワインやチーズ、EUの人々は日本車などを、より安く買えるようになりそうです(ただ、品目ごとに移行期間を設定)。同時に、ナショナリズム的な保護主義(関税増など)に立つ米国への、日欧による対抗措置です。

第三の矢 - 脱・米国

日本はまた、環太平洋経済連携協定(TPP)に関しても、今や主導的な役割を担っています。米国のトランプ大統領による離脱表明で一旦は存続が危ぶまれたTPPを、「米国抜き」で進めているのです。

これらは、(真の)第三の矢と言うべき「脱・米国」の動きにほかなりません。トランプ米政権は、通商ルールに加え、安全保障の面でも戦後秩序(北大西洋条約機構(NATO)など)の破壊者として振る舞っています。そのような米国への追従姿勢を改めることは、世界から尊敬を得る上でも不可欠です。

グローバル化(世界の一体化)は必然、米国の保護主義は無力 

「脱米」は「反米」でなく、経済でも軍事でも、米国が日本の重要なパートナーであることに変わりはありません。ただし今後は、米国・中国・欧州という三極と、同じようなウエイトで接するのが日本の正しい道です。ようやく安倍政権は、そうしたグローバルな広い視野を持つに至ったのでしょうか。

だとすれば、日本が真のグローバル化へ踏み出したことを意味します。たしかに「真・3本の矢」も、全てこれに即したものです。保守寄りとされた安倍政権ですら抵抗し切れないほど、グローバル化の流れは強力なのです。それが歴史の大潮流である以上、米国の保護主義などは一時的な摩擦にすぎません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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