「国境の壁」とNAFTAの行方

2018/01/17

減税よりも移民問題

金融市場での当面の注目点は、昨年末に決まった米国の法人税減税による、業績見通しへの影響です。

しかし今、米国の社会で激しく論じられているのは、移民の問題です。税制改革は、生活にどう関係するのか、わかりにくいのが実状です。これに対し、移民問題は身近な現実です。また、現在の米国を考える上で忘れてならないのは、この問題こそがトランプ大統領を生む原動力になったということです。

白人優位思想が露呈 

そのトランプ氏は先週、またもや暴言を吐いたようです。アフリカやハイチからの移民を指し、侮蔑的な言葉を用いたというのです(本人は否定していますが)。一方、ノルウェーからの移民を推奨したとのことです。これまでの言動に鑑みれば、同氏の白人優位思想が露呈したとみられても仕方ありません。

これは当然、国内外で非難されています。それでもトランプ氏は、この事態を切り抜けるでしょう。米国人が同氏に求める倫理基準は、もはや著しく低下しているからです。そのため人々は、この程度(?)の暴言では、あまり驚きません。また、そのような発言に共感する米国人も、実際に存在するのです。

「国境の壁」は内向き姿勢の象徴か? 

暴言が飛び出したのは、「ドリーマー」(子供のとき親に連れられてきた、全米で約80万人の不法移民。「不法」とは正式な入国手続きを経ていないという意味)、および財政に関する論争の最中でした。

本人らに非はないので合法性を付与すべき、というのが民主党の主張です。一方トランプ氏や共和党は、それを受容する条件として、新たな不法移民を防ぐ措置などを求めています。特に「メキシコとの国境の壁」建設の予算計上です。この「壁」こそは、米国の内向き姿勢を象徴するものかもしれません。

米国・メキシコ間の国境を見学 

そこで12月、米サンディエゴとメキシコ・ティファナを隔てる国境へ行ってみました(写真1,2)。

検問所付近には「壁」がすでにありますが、審査を経て徒歩で国境を往来するのは、案外簡単でした。しかし国境の北(サンディエゴ)と南(ティファナ)では、文字通り別世界です。サンディエゴは米国有数の豊かな都市です。他方、ティファナはまさに新興国のムードです。人々の多くは素朴または陽気ですが、治安の悪い場所もあるようです。それらをみると、国境強化は必ずしも馬鹿げた考えではないと実感します。頑丈な壁(実効性は疑問ですが)がないと不安だという心情も、よく理解できるのです。

NAFTAの行方は楽観できない

そうした不安を利用して大統領に上りつめたのが、トランプ氏です。そしてその反移民政策や人種差別的な発言は、今年再び激化しそうです。というのは、11月に中間選挙(議会選など)が行われるからです。共和党の勢いを盛り返そうと、過激な「米国第一主義」が支持層向けにアピールされるでしょう。

よって、再交渉中の北米自由貿易協定(NAFTA:米国・カナダ・メキシコ間の協定。米国に不利とトランプ氏は主張)の行方も、楽観できません。今のところNAFTA崩壊の可能性は低く、例えばメキシコの通貨はさほど下落していません(図表1)。ただ、交渉は困難を極めるでしょう。米国第一主義の根深さを踏まえると、トランプ政権が他国に対し身勝手な要求を突きつけるのは、必然だからです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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