カタルーニャ独立運動への共感と不安

2017/10/05

欧州統合に向けて

長い目で見れば、欧州は統合の方向へ進むでしょう。ただし、その過程は平たんではあり得ません。

欧州連合(EU)やユーロ圏の統合深化に関し、旗振り役を務めようとしているのが、フランスのマクロン大統領です。同大統領の支持率は低下していますが、欧州重視の信念は、全く揺らいでいません。

マクロン氏の欧州統合プランは、多岐にわたっています。その中で、合意が比較的得やすい分野から推進すれば、統合を徐々に既成事実化できるでしょう。例えば、防衛や難民対応における連携強化です。

スペイン分裂の危機

しかし欧州統合に伴って、国家や民族に執着するナショナリズムが、様々な形で噴出するでしょう。

今、文字どおり国家の分裂を招きかねない民族運動が、スペインで生じています。カタルーニャ州による、分離独立運動です。10月1日には住民投票が行われ、独立賛成が約9割に達しました(ただし、独立反対派の多くは棄権したため、投票率は約4割。また、中央政府は投票の結果を無視する意向)。

大都市バルセロナを擁する同州は、独自の伝統や言語を誇っています。そのため、独立を切望する人にとってナショナリズムとは、スペインというより、カタルーニャへの帰属意識を意味しているのです。

純粋な情熱と利己的な動機

独自の共同体を復興するという運動は、特に若い人の情熱をかき立てます。カタルーニャ州の独立運動でも、学生らの活躍ぶりが印象的です。とはいえ、多くの年配者も、独立は長年の悲願だと言います。

ただ、利己的な動機もあります。同州の経済規模はギリシャなどを上回り、生活も比較的豊かです(図表1,2)。そのため同州で徴収された税金のうち、相当部分が同州以外へ分配されています。そうした中、2012年のスペイン財政危機は同州にも打撃を与え、再分配への不満と独立感情を刺激したのです。

双方とも正しい

この問題が難しいのは、独立派と反独立派(中央政府を含む)に関し、一方が善で他方が悪、とは決められないからです。「自分のことは自分で決める」という民主主義に立てば、独立派が正しいのです。

同時に、「法の支配」も民主主義の根幹です。そして国の分裂を否定する憲法に照らすと、今回の住民投票は違憲です。にもかかわらず強行された投票の結果を、中央政府が無視するのは当然、となります。

双方に正当性がある以上、対話と交渉により妥協を図るしかありません。中央政府としては、カタルーニャ州の独立を断固拒否しつつも、財政などの面で、同州の自治権拡大を認めることになるはずです。

欧州の動乱は続く

しかし現在、中央政府のラホイ政権は、高圧的な態度を改めません。このまま独立運動を弾圧すれば、衝突は決定的となります。独立派は右派に加え急進左派も含んでおり、大規模なストライキなどが継続されるでしょう。そうなれば、財政危機後に立ち直ったスペイン経済も、減速を余儀なくされそうです。

独立の動きは、ベルギーやイタリアなどでもくすぶっています。それらは今後、次々に顕在化すると予想されます。欧州の統合で、既存国家の自明性が薄れるからです。マクロン氏らが欧州統合を推進するのは、正しいことです。しかし、その過程で多くの動乱が生じ得ることを、覚悟せねばなりません。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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