世界の危機が迫っているのか?

2017/04/13

米国が世界の混乱を招く

米国のトランプ政権が内政、外交で迷走する中、世界情勢が不安定になるのは、ほぼ必然です。最近も、不穏な出来事が世界中で起こっています。それらは、世界に破滅をもたらす危機なのでしょうか。

米中の対立はひとまず緩和

世界経済に関し一番のリスクは、米中の貿易摩擦が激化することです。そのために注目されたのが先週末の米中首脳会談ですが、結局は友好ムードが醸し出されました。世界にとって、良いニュースです。

また、中国を為替操作国に、というトランプ氏の公約は、ひとまず撤回されたようです。人民元相場は下落しているものの、中国はこれを抑えようとしているのが現実だからでしょう。それは、外貨準備高が2年で1兆ドル近く減ったこと(ドル売り・人民元買いによる)からも明らかです。トランプ氏は、このことを人から教わったのでしょう。同氏にも、素直に学ぶ姿勢があるということです。

北朝鮮への攻撃は考えにくい

しかし「中国を叩くトランプ」を期待する強硬派が、米国には(日本にも?)少なくありません。まさに米中首脳会談の最中、米軍がシリアを爆撃しましたが、中国への牽制という意図もあったようです。

ただ、この爆撃が、挑発を続ける北朝鮮や、その同盟国である中国への脅迫や牽制になるかというと、効果は小さいでしょう。北朝鮮への先制攻撃も辞さずという米国の本気度は、疑わしいからです。北朝鮮は、米軍に攻撃されれば激しく報復するでしょう。その覚悟は、米国には(もちろん韓国や日本にも)まだないようです。もし米国が本気であるならば、韓国や日本にいる米国人をまず避難させるはずです。

シリア爆撃の後、トランプ大統領も慎重に

シリアへの攻撃については、おそらく北朝鮮問題がなくても実行されたでしょう。また、トランプ氏以外の人が大統領だったとしても実行されたでしょう。今回は多くの議員、世論、メディアが、攻撃ムードを助長していたからです。しかし問題は、シリアには介入しないという、トランプ氏の従来の主張と矛盾することです。原則ではなく感覚で軍事行動を決断するという、同氏の危うさが示されたのです。

明確な原則がない以上、懸念されるのは、政権支持率を上げるために武力行使を、との誘惑に駆られないかです。米国では紛争や危機の後、支持率が跳ね上がることがあるためです(図表2)。ただ、この点で少し安堵できる事実があります。シリア爆撃の後も、支持率はあまり上がっていないのです。これらを踏まえると、2回目のシリア爆撃や北朝鮮への攻撃には、安易に踏み切れないでしょう。

本当の危機には遠い

ただし、シリアのアサド政権を支援するロシアと米国との関係改善は、一段と難しくなりました。

米国とロシアの関係に比べれば、米中の場合には、相互の歩み寄りがはるかに容易です。中国は、もともと市場開放を徐々に進める方向です。そして、たとえば米国から農産物の輸入を増やすでしょう。これは、米国の農業やトランプ氏だけでなく、将来の食料不足が懸念される中国の国民にも朗報です。

つまり世界は、経済的にも軍事的にも、危機の瀬戸際とはまだ言えません。第一、本当の危機に面していれば、以上のように至って客観的な視点から、冷静な文章を書いている場合ではなくなるでしょう。

 

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