トランプ大統領の屈辱的な挫折

2017/03/30

ヘルスケアの屈辱

トランプ米大統領は、早くも屈辱的な挫折を味わうこととなりました。先週末、ヘルスケアをめぐる改革案に関し、撤回を余儀なくされたのです。オバマケア(前政権による医療保険制度改革)を打倒し代替案を導入するのは、トランプ氏および現与党である共和党の悲願であり、公約でした。しかし共和党内の多様な考えは平行線をたどり、トランプ氏が誇るディール(取引)技術も、空振りに終わりました。

空虚なトランプ氏

つまり、トランプ氏はいつも派手な主張を行いますが、誇大宣伝にすぎないことが露見しました。

オバマケアについては、選挙戦中、それに代わる素晴らしいプラン(より安い保険料で、より多くの人が保険を受けられる医療制度)を導入すると言っていました。ところが実際は、そんなプランはありませんでした。そこでトランプ氏は、下院議長のポール・ライアン氏に代替案の作成を丸投げしました。

しかしライアン氏の案は、お粗末な内容でした。それが導入されれば、富裕層の負担が軽くなる一方、所得の低い世帯ほど負担が増えると予想されたのです。撤回されてよかった、と言えます。

無責任な共和党

トランプ氏の正体は周知のとおりでしたが、より驚くべきは、共和党の無責任さと足並みの乱れです。

オバマケアが成立した2010年以降、共和党はそれを徹底的に攻撃しました。しかし判明したのは、この7年間、共和党は統一案を全く用意していなかったという事実です。実際、今般の代替案撤回は、強硬な保守派の賛同が得られなかったためです(この代替案でも国家が介入しすぎるといった理由)。

それでも共和党の下院議員のうち、8割以上は代替案を支持したようです。ここから、別の懸念が出てきます。その案の実態は富裕層減税ですが、トランプ氏同様、共和党もそれに異議を唱えなかった点です。格差への不満や反エリートといったトランプ旋風の背景を、誰も真剣に受け止めていないのです。

税制改革も簡単ではない

トランプ政権は、ヘルスケア以外の策、特に税制改革(法人税や所得税の減税など)へ国民の目をそらそうと懸命です。しかしこれを今秋までにまとめようと焦れば、極めて小粒な改革にとどまるでしょう。

税制を変えれば、得をする人と損をする人が生じます。つまり誰かの税金を減らせば、ほかの誰かの負担を増やす必要があります。政府債務の膨張を忌避する点に限れば、共和党はほぼ一致しているからです。あるいは目先の財政赤字を許容して減税だけ行えば、将来の国民が負担(損)を強いられます。

利害関係が入り乱れるときに必要なのは、大勢が共感できる「哲学」です。租税哲学について言えば、中間層の支援、経済成長の促進、財政の効率化、といったものがあり得ます。ところがトランプ政権には、どれを優先するのか、確固たる哲学がありません(ヘルスケア改革の失敗も、それが原因です)。

悪い改革よりは、機能不全の方が望ましい

ただし優先順位が定まらないのは、米国が表面的には好景気であるためです。こうした局面では、現政権や共和党が悪い改革(ヘルスケア改革はそうなるところでした)を行うよりは、何もしない方が「まし」です。よってトランプ政治の機能不全は、それほどネガティブな材料ではないでしょう。

 

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