アジア取材報告①-中国から学ぶ

2016/07/14

はじめに 

7月上旬、中国(広州)とミャンマー(ヤンゴン)を取材しました。そこで、まずは中国について報告します。多くの人が言うように、中国経済は、本当に不況なのでしょうか。

広州とは 

ただし、中国は巨大で、かつ、格差の大きな国です。これをひとまとめにして論じても、正しい姿を把握するのは困難です。そのため中国に関する多くの言説は、一側面に着目したものにとどまります。

それを踏まえた上で広州に限って言えば、景気は良いようです。その発展ぶりには驚かされました。

なお、広州は、北京・上海と並ぶ中国三大都市の一つです。また、広州市が属する広東省は「世界の工場」と称され、人口(約1.1億人)や域内総生産(GDP、約1.1兆米ドル)において、中国最大の省(日本の県に相当)です。仮に広東省を一つの国とすれば、人口で世界12位、GDPでは韓国をやや下回り、世界16位となります。今さらながら、中国の大きさを思い知らされるでしょう。

人口は、それ自体が国力の基盤となり得ます。一人あたりの必需品の消費には、限度があると考えられます。よってGDPで示される経済規模は、かなりの程度、人口に依存することになるでしょう。

消費額も中国一 

広州の人は消費性向(所得のうち消費にあてる割合)が高く、一人あたりの消費額は、北京や上海をしのいでいます。南方に位置し、食べ物にも恵まれているので、楽天的な南国気質なのかもしれません。

所得も増えています。広州市の最低賃金は昨年、2年前に比べ22.3%も引き上げられました。平均賃金が大きく増えているのも間違いありません。それは、労働コストの増加に直面している日系企業がよくわかっていることです。そして実質賃金が増えているとき、景気が悪くなるとは考えにくいのです。

ショッピングモールなどの賑わいには、圧倒されるばかりです。小型のスーツケースを持っている人も大勢います。市外から来ているのでしょう。ここでも、広東省だけで1億人という事実が想起されます。

自動車販売店も大繁盛です。中国全体では昨年、新車販売台数が前年比4.7%増えました。それでも自動車普及率は未だ低いので(100世帯あたり30台以下、日本は100台超)、もっと伸びるでしょう。

「ゴーストタウン」の実態

不動産市場も活況を呈しています。広州の超近代的な街並みは、アジア競技大会(2010年)の準備時から、つまり、この10年ほどで一気につくられました。ペースは鈍っているとはいえ、超高層ビル・マンションの建築は今も至るところで行われています。ただ、さすがに物件の過剰供給が心配されます。

そこで、ゴーストタウンと呼ばれたりする郊外のエリアも取材しました。しかし、日本で報じられるほど殺風景な感じはしません(これに限らず、中国関連の報道は偏ったものが多いので要注意です)。

留意すべきは、そういったマンションも永久に空き家のままとは限らないことです。そのエリアでも、地下鉄の駅やショッピングモール、小学校などが続々とつくられています。それに伴ってマンションの空室が減ってきているとのことです。インフラが整ってくるにつれ、街に活気が出てきているのです。

経済成長とは単純なもの

中国を見ると、経済成長とは実に単純だと学ぶことができます。すなわち、それまで豊かでなかった大勢の人が「もっと豊かになりたい」と強い意思を持てば、現代の経済では、ほぼ確実に成長します。

そのような人は懸命に働き、夢中で買い物をします。日本の高度成長期や、今に至る中国の発展期は、まさしくそうした局面です。国際化の中、資源は輸入すればよく、技術は先進国から導入できます。

そして中国では、全人口のうち4割以上の人が今も農村部で暮らしています。そういった人々が豊かになり、都市化が進むにつれ、経済はさらなる発展を遂げるのでしょう。

問題は政治 

以上のように経済の本質は単純ですが、もっと難しいのが中国の政治です。

たとえば、香港や台湾との関係です。特に香港の場合、反本土感情が溜まっているようです。「香港人」としての意識は強く、言論の自由の抑圧や学校教育を通じての「中国化」に反発しているのです。

チベットやウイグルなどでの少数民族弾圧という問題もあります。広州では、駅など各所で厳しい警備が行われていました。最近の国際テロだけでなく、少数民族によるテロも警戒されているようです。

反政府運動を抑えようと政府の強権的な動きが広がれば、民衆の不満が爆発するかもしれません。あるいは、国内の不満を外へそらそうと、近隣諸国を挑発するのでしょうか。とはいえ、それがエスカレートすれば、国際的に孤立するだけです。それは得策でないことを、中国政府も理解しているはずです。

共産党支配からの教訓 

ただ、中国のような複雑な国をまとめる上では、共産党支配にも合理性が認められるのかもしれません。しかし、言論の自由が奨励されなければ、個性的な人材は育ちにくく、独創的な製品やサービスも生まれません。また、一党支配による権力の固定化は、必ず腐敗(財界との癒着など)につながります。

その点でも日本は、中国の状況から基本的なことを学べます。特に、政府を自由に批判できるのは素晴らしい、ということです。政治の暴走や腐敗を抑える役割を果たすのは、そういった言論の自由です。

日本では、憲法改正が論議されそうです。その際、上述のことからも国民主権(政府でなく各人が主役)は譲れません。権力に束縛されない自由な環境がなければ、日本経済の独創性も回復しないでしょう。

まとめ-中国の実力、日本の利点

広州の発展は紛れもない現実です。これを見ると、日本がいくら財政出動や金融緩和といった小手先の政策を打っても、経済成長ではかなわないと認めざるを得ません。日本人としては、悔しい気もします。

けれども、豊かさを増した中国の人々を見て、もうすぐ中国経済は崩壊するだろう、などと難癖をつけることはできません。中国の実力を認めた上で、互いに補い合う関係を探るしかありません。

日本の良さは、曲がりなりにも国民主権が尊重され、政治批判が許容されていることです。しかし、「愛国心」を過度に強調したり、国民の意識を他国へそらしたりしていると、日本は中国の悪い面に似てくるでしょう。中国へ行くと日本の良さもよくわかるだけに、そうならないよう願うばかりです。

 

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