「適温相場」の揺らぎは押し目買いの好機か?

2018/02/02

月跨ぎとなった今週の国内株市場ですが、1月末(31日)の日経平均終値は23,098円でした。1月24日に24,000円台乗せを達成して以降は月末にかけて6日続けて下落し、この期間の下げ幅は1,025円に達しています。それでも、昨年末(大納会終値の22,764円)からは334円も上昇しているため、「急ピッチな上昇ゆえの調整局面」と捉える見方は依然多いと思われます。となると、足元の下落は押し目買いの好機と考えることもできます。

 

直近の日経平均が下落した背景には、スピード調整に加え、為替市場でドル安(円高)が進んだこと、米国金利の上昇、米Appleのスマートフォン「iPhone X」の販売不振による関連銘柄の下落などが挙げられます。その中で、市場で警戒されているのは米金利の上昇になります。米10年債利回りは2.7%台と、約3年9カ月ぶりの水準をつける場面も見られましたが、これまでの株価上昇に代表される「適温相場」は、「景気拡大が続く割に物価はあまり上がらず、金融政策の利上げペースが適度に保たれる」という見込みによるものですので、その前提が揺らぐ可能性が出てきた訳です。

 

米金利の上昇をもたらしたのは、景気拡大による物価上昇期待のほか、原油などの資源価格上昇による物価への影響、欧州や日本の金融緩和姿勢が引き締め方向に向かうのではという見方から為替がドル安となり、輸入物価上昇観測が高まったことなどが考えられます。先日は、米国債の最大の買い手である中国が購入を減らすとの報道も米金利上昇の材料になりました(その後、中国当局は否定しましたが)。

 

また、米金利が上昇基調を辿りはじめたのは昨年の12月半ば以降です。ちょうど米税制改革法案が成立に向けて議会で大詰めを迎えていたタイミングでしたので、減税による景気刺激で物価が上昇するのではという期待が高まったと見ることができます。いわゆる景気拡大に伴う「良い金利上昇」という見方です。

 

ただし、為替市場でドル安に傾き始めたのも同じタイミングであるほか、金の価格も同様に上昇し始めています。一般的には、経済の強い国の通貨は買われる傾向があるため、足元のドル安傾向は反対の動きとなっています。また、世界的な好景気の中で、金利を生まない安全資産である金が買われていることも気になります。つまり、同じ金利上昇でも、リスクへの意識やドルへの信頼度が低下することによる「悪い金利上昇」の可能性が燻っているのかもしれません。実際に、市場がそうした見方に転じてしまうと、株価の調整が深くなったり、長引く可能性もあるかもしれませんので、注意が必要と言えそうです。

 

 

 

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