株価上昇の裏で燻る米政治リスク

2018/01/26

1月23日(火)に終値ベースで約26年ぶりに日経平均が24,000円台を回復した今週の国内株市場ですが、翌24日(水)はこの水準を維持することができませんでした。

 

為替市場で円高が進んだことが足を引っ張る格好となった訳ですが、この日は1ドル=109円台前半での推移が中心となりました。国内企業の決算シーズンがこれから本格化する中、業績に対する期待はまだ維持されていると思われるものの、12月の日銀短観で示された大企業の想定為替レート(110.18円)よりも円高水準ですので、円安効果による業績の上振れについては微妙になってきた印象です。

 

一方の米国株市場は強さを保っています。先週末にいわゆる「つなぎ予算」が米議会で可決できず、一部の政府機関が停止する事態となりましたが、株式市場は大きく相場を崩す展開にはなりませんでした。つなぎ予算については、今週に入って2月8日までの予算案が可決され、混乱はひとまず回避されました。

 

そもそも、米国の財政年度は10月から始まりますが、昨年は10月までに本予算案を可決することができず、結局12月8日までのつなぎ予算で延長戦入りとなりました。続いて12月22日まで、1月19日まで、そして今回の2月8日までと、期限が来る度につなぎ予算で食い繋ぎ、気が付けば財政年度の3分の1の期間が経過したことになります。

 

また、米国では、1月30日にトランプ大統領による一般教書演説が予定されていますが、そこではインフラ投資政策についての言及や具体的なプランが提示されるかが注目されます。インフラ投資は昨年末に成立した税制改革法案に続く、トランプ大統領の公約のひとつですが、多額の財政支出を伴う政策でもあります。昨年の税制改革法案をめぐる米議会では、財政面で中々折り合えなかったことで、つなぎ予算が繰り返されることになったことを踏まえると、2月8日の期限に向けて不透明感は強まってきていると考えられます。

 

さらに、インフラ投資政策だけでなく、移民政策をめぐる姿勢、NAFTA再交渉をはじめとする通商政策など、トランプ政権と与党共和党、そして野党民主党の思惑が絡みあっている構図になっていますが、秋には中間選挙が控えていることもあり、次第に溝や対立が深まっていく可能性があります。

 

そのため、米国では絶好調の株高の裏で、政治リスクが静かに燻っている点には警戒が必要と言えます。

 

 

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