結果速報:投信ブロガーが選ぶ「Fund of the Year 2017」を徹底解剖!

2018/01/16

<大盛況のイベント>

 

さる1月13日(土)に、東京都内のイベント会場で、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」の発表会が行われた。このイベントは、投資信託について日頃からブログを書いている「投信ブロガー」が、「良い」と思う投資信託に投票して投信を表彰するものだ。ハンドルネーム「renny」さんという投信ブロガーが実行委員長だが、主として投信ブロガーのボランティアによって運営されている。

この表彰イベントは、毎年の恒例行事としてすっかり定着し、年々盛況になり、また運用会社の側でも、投資家顧客のファンド賞品への評価があらわれる場として注目するようになって来た。表彰の上位5社までの運用会社は、賞状・トロフィーなどの受け取りとともに、壇上で受賞のスピーチを行うことができるが、各社いずれも力の入ったスピーチだった。

投票は、昨年暮れにかけて行われたが(有効投票人数198人)、一人が持ち点「5」を好きなように配分して投票するシステムだ。

今年の順位から、投信ブロガーが評価するファンドの傾向などを探ってみよう。

 

<2つの傾向>

 

さっそくTOP10を見てみよう。詳しくは、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」のホームページ(http://www.fundoftheyear.jp/2017/)をご参照頂きたい。

 

(表)投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017

 

1位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド

(楽天投信投資顧問)

2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド  (ニッセイアセットマネジメント)

3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド

(楽天投信投資顧問)

4位 野村つみたて外国株投信

(野村アセットマネジメント)

5位 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

(三菱UFJ国際投信)

6位 ひふみ投信

(レオス・キャピタルワークス)

7位 eMAXIS Slim 新興国株式インデックス

(三菱UFJ国際投信)

8位 たわらノーロード先進国株式

(アセットマネジメントOne)

9位 バンガード・トータル・ワールドストックETF(VT)

(ザ・バンガード・グループ・インク)

10位 iFREE S&P500インデックス

(大和証券投資信託委託)

 

http://www.fundoftheyear.jp/2017/ より)

 

1位の「楽天・全世界インデックス・ファンド」(楽天投信投資顧問)、2位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)、以下、通常の投信の「売れ筋ランキング」には登場しないファンドが多数並んでいる。

例年、トップのファンドとTOP10下位のファンドの獲得ポイント数は相当に離れる事が多いのだが、今年は1位の獲得ポイント数が95ポイントなのに対して、10位「iFree S&P500インデックス」(大和証券投資信託委託)でも48ポイントを獲得しており、全体にかなりの接戦であったことがうかがえる。

実は、投信関係者の間で、今年は順位予想が難しいと言われていた。端的に言って投信ブロガーには投資リテラシーの高い方が多く、手数料の高いファンドには見向きもしない傾向があり、例年、インデックスファンドで信託報酬の低いものが上位を占めていた。ちなみに「ノーロード(販売手数料ゼロ)」以外の投信はまったく相手にされない。

ところが、一昨年くらいから低コストな(=信託報酬率の低い)インデックス・ファンドの新商品投入が相次ぎ、インデックス・ファンドの間で票が割れるのではないかとの観測が拡がっていた。「今回は、アクティブ・ファンドが意外に健闘するのではないか」という声もあった。

さて、結果を見ると、今年もインデックス・ファンドの強さが圧倒的で、ベストテンのうち9本がインデックス運用される投資信託だった。

ちなみに、アクティブ・ファンドでランク・インしたのは、6位の「ひふみ投信」(レオス・キャピタルワークス)だったが、これ以外のファンドは全てアセット・クラス上「外国株式」に属するか、外国株式を含むインデックス・ファンドにも投資するバランス・ファンドだった。リテラシーの高い投資家の間で、外国株式への投資にニーズが高いことが分かる。

今年の上位のラインナップを見て、特徴的なのは、(1)「低コスト」への指向と、(2)「つみたてNISA」の影響、の2点だ。

 

<「低コスト」競争の行方>

 

2位の<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドは、昨年まで3連覇しており、今年も1位を予想する向きがあったが、小差で2位だった。同ファンドは、これまでに3回信託報酬率の引き下げを行っており、既存のファンドであっても、運用資産額が大きくなると投資家に利益を還元するという思想とその有言実行振りが支持を集めてきた。8位のたわらノーロード先進国株式も信託報酬率引き下げが支持された。

既存ファンドの信託報酬率引き下げは、既にファンドを持っている投資家にもメリットになる点で好ましいし、他の残高の大きなファンドにも真似して欲しいところだが、日本の投資信託の場合、直接販売以外の販路の場合、信託報酬の中から販売会社に預かり資産残高がある限り手数料(「代行手数料」と呼ぶ)を支払っているので、調整が難しい面がある。

この点を、販路によって手数料は異なってもいいはずだ、と割り切って、業界最安水準への信託報酬率引き下げに同意する販売会社(ネット証券など)に販路を絞って、「常に業界最安に調整する」方針を宣言している三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」のシリーズも一つの方法だろう。このシリーズでは、既に複数回信託報酬率のスムーズな引き下げが実現している。

既存の引き下げにせよ、新ファンドの投入にせよ、特に、投資へのニーズが高い外国株式セクターで信託報酬率が下がったことは、投資家にとって真に喜ばしい。

一方、手数料率を引き下げると、運用会社が儲けることが難しくなるのだが、どの会社が将来十分な運用資産残高を確保できるのか、競争の行方が興味深い。

今後の、特にインデックス・ファンドの運用管理コスト引き下げにあっては、運用の省力化や人件費の削減などの運用会社の経営努力の他に、連動を目指す指数の選択によるインデックスの供給者へのフィーの差が問題になる可能性があるし、また、競争のレベルが上がってくると、資産の保管・管理のコスト差が問題になって来るので、同一グループ内に信託銀行を持っているか否かといった、これまであまり注目されなかった要因が影響する可能性がある。

また、現在、国内の商品では、外国株式(先進国株式あるいは新興国株式)のETFの手数料率よりも、公募の投信の手数料率が低い状態にあるが、今後ETFが巻き返して来る可能性が十分あるだろう。

 

<つみたてNISAの影響力>

 

インデックス・ファンドの信託報酬率引き下げ競争が進んだ背景には、今年から導入されたつみたてNISAの影響が大きい。

つみたてNISAでは、「長期投資に適した低コストなファンド」に対象商品を絞り込んだため(この条件が、一部では「金融庁フィルター」と呼ばれている)、運用会社各社や各々の金融グループで、つみたてNISAの適格条件を満たす商品の投入が相次ぎ、この中で、手数料引き下げ競争が促進された。

つみたてNISAは、積立投資で徐々に運用資産が増える仕組みなので、直ちに大きな資金の動きがあった訳ではないが、金融庁がいわば「正しい投資方法」と「正しい投資商品」を例示して方向性を示したことによって、運用会社と販売金融機関の商品戦略と販売戦略に既に影響が出て来ていると見る事が出来る。

先行した制度であるNISAやiDecoでは、こうした方面への影響は率直に言って小さかった。これらと比較すると、つみたてNISAが早くも政策効果を現していることは注目に値する。

順位1位の楽天・全世界株式インデックス・ファンドと3位の楽天・全米株式インデックス・ファンドも、つみたてNISAのために投入された商品の側面がある。これら2商品は、今のところカテゴリー内で信託報酬率が最安であるわけではないが、投資対象ETFの運用会社であるザ・バンガード・グループ・インクのブランド力がプラスに働いている面がある。尚、バンガードは、運用資産の拡大とともに経費率を引き下げる仕組みを取り入れているので、同社のファンドに投資していると、実質的な信託報酬率が更に引き下がる可能性がある。

特に、1位のファンドの中身であるバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)は、ここ数年投信ブロガーの間で人気が高く(今回も1位に同内容のファンドがあるのに、9位にランクインしている)、「いつかはVTを買いたい」という投資家が少なくなかったが、海外上場のETFであるため、売買がしにくかったり、為替も含めた取引手数料が高かったり、配当の処理が面倒だったり、さらには、積立投資で買う事が難しかったり、といった敷居の高さがあった。1位のファンドには、一般投資家にもVTを買いやすい物にした功績が認められる。

4位の野村つみたて外国株投信では、証券業界最大手の野村グループが積立投資向けの低コスト商品を投入したことが評価する声があった。

また、10位のiFree S&P500インデックスもつみたてNISAを意識して投入された商品だと言って良かろう。実は、金融庁がつみたてNISAの普及促進と投資家からの意見の吸収を意図して何度か開催している一般投資家や金融・運用関係者を招いた意見交換会に、大和証券投資信託委託社が出席したことがあり、この時に、ある投資家出席者が同社に対して「S&P500に連動するつみたて商品が欲しい」と要望を述べたことがあり、担当者が「前向きに検討する」旨を答えて、その約2カ月後にこの商品が投入された経緯がある。

意見交換会が実際の商品投入につながるのだから、つみたてNISAの影響力と今回の金融庁の行動力はなかなかのものだ。

つみたてNISAを題材に投資家を呼ぶ意見交換会は、「つみたてNISA Meetup in ○○」(○○には開催地名が入る。会の略称は「つみップ」)と題して方々で行われている。ご興味のある方は、金融庁のホームページを参照されたい(http://www.fsa.go.jp/policy/NISA2/opinion/index.html)。

尚、東京では、4月21日(土)に「つみたてNISA フェスティバル2018」という大人数を集めるイベントが計画されている。

ところで、大事な話なので一言付け加えておこう。

「長期投資には向いていないが、短期投資には良い」といった運用商品は基本的に存在しない。「何時がいい時か?」ということを投資家が判断する方法が無い以上、運用期間が長期でも短期でも、最も良さそうな対象(もちろん低コストであることが含まれる)に投資して、投資期間中にリターンが上がる事を期待する以外に投資家にできる事はない。

はっきり言うと、長期投資でダメな運用商品は、短期でもダメなのだ。

 

<我が国投信業界の今後に期待すること>

 

今回の、投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017では、ベストテンのファンドの6本が昨年の新規設定商品であったことからも分かるように、投信ブロガーのファンドに対する評価は、専らファンドの商品性に対する評価であって、運用内容に対する評価の要素は乏しかった。

確かに、今後に投資するのに良いファンドを選ぶためには、過去の運用パフォーマンスがほとんど参考にならないことは、投資家に広く知らせるべき重要な事実であり原則なのだが、「良い運用を褒める」表彰で、商業的でない(投信評価会社の賞のようなものではない)表彰制度があっても良いように思う。

低コストが売りのインデックス・ファンドであっても、指数からのズレ具合の小ささや、信託報酬以外にも売買コストなどの手数料を含めた「経費率」の優れたファンドを評価する情報提供があってもいい。

ファンドの商品性の評価と運用の評価を混ぜることが可能なのか、また、出来たとして望ましいのかは難しい問題だが、考えてみたいポイントだ。

低コストが評価されるという金融理論的に当たり前の評価尺度が浮かび上がった今回のランキングだったが、本来、低コストを売りにしてアピールすべきETFの頑張り不足が目立ったような気がする。

我が国のETFには、新商品の開発・投入の余地が大いにあるし、少数だが現在も良い商品が幾つか存在する。投資家にとってのメリットの意味では、当面、ETFの頑張りに最も期待したい。

また、マーケティング上廉価で売られていないだけで、低コストなアクティブ運用の投資信託は十分可能なはずなので、これを誰がやるかにも注目したい。

端的に言って、今までの投信商品のほとんどが、手数料を取り過ぎていたのである。

 

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