【新潮流2.0】 第46回 戦争と理性

2018/04/09

◆スタジオジブリの宮崎駿監督が2013年の『風立ちぬ』をもって引退すると発表した会見の席で、高畑監督にも一緒にここに並ぼうともちかけたが「いやいや」と断られたというエピソードを明かしていた。先週、82歳でこの世を去った高畑勲監督にはまだまだやりたいことが沢山あったことだろう。ご冥福をお祈りいたします。

◆高畑勲監督の代表作は『火垂るの墓』。野坂昭如氏の同名小説が原作である。「4歳と14歳で生きようと思った」という映画のキャッチコピーは糸井重里氏の手によるものだ。戦時下での幼い妹とその兄の過酷な運命を描いた同作品は涙なしに鑑賞できない。「なんで蛍、すぐ死んでしまうん?」蛍の墓を作りながらつぶやいた節子の台詞。蛍のように儚い命が戦争に、時代に、翻弄されて消えていく。兄妹の悲惨な生死を通じて戦争の愚かさが浮き彫りにされる。

◆米中間の通商摩擦が世界的な貿易戦争に発展するリスクが危惧されている。しかし実際に戦火を交え多くの人命が犠牲になる「本当の戦争」に比べれば、「貿易戦争」などはまだまし…と侮ることなかれ。1929年の大恐慌の翌年、米国は国内産業を保護する目的で輸入品への高関税政策(スムート・ホーリー法)を打ち出したが、それによって世界恐慌は一段と悪化、ブロック経済化が進み第二次世界大戦につながったと言われる。

◆高畑監督はある対談でこう語っている。「『火垂るの墓』みたいなものが戦争を食い止めることはできないだろうとずっと思っている。心や感情は人間にとって大事なものだけど、あっという間に変わる危険性がある。結局、理性が人間を支えている。戦争がどうやって起きるかを学ぶことが、それを止めるための大きな力となる」。米中の指導者に少しでも理性が残されていることを、そして最後はその理性が「どんな戦争にも勝者はいない」ということを彼らに思い出させることを願わずにいられない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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