■ 第1章 何故に投資家はかくも相場に負けるのか Part6

2017/11/17

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<私の記憶によれば Part6>

この頃になると、何故こうも相場に負けるのか、その原因が徐々にわかり始めていました。先物では、FXや株の信用取引と同様に、売買の損失を補てんするための担保金(これを証拠金と呼ぶ)を積んで、実際の資金の何十倍もの売買が可能です。先物の証拠金は丸代金の大体2~10%(その時の相場の変動率が高いと証拠金率も高くなる)を要求されます。つまり証拠金の10~50倍もの丸代金の取引が可能になるのです。

例えば証拠金率が2%の場合、20万円の資金があれば、その50倍に相当する1000万円の商品を売買することができます。しかし買い値より2%価格が下がっただけで、証拠金は全て飛んでしまいます。通常は相場が思惑と反対に動いて、未実現損失が証拠金の半分以上になると、担保率を元に戻すために追証と呼ばれるお金を追加で入れるように要求されますが、これが払えなくなるとポジションの強制手仕舞いを余儀なくされます。つまり買い値よりわずか1%下がっただけで追証が発生し、それが払えないと強制的に損切りさせられるのです。

1%の相場の変動など日常茶飯事ですから、相場の変動を乗り切るには実際には既定の証拠金よりもずっと多くの資金が必要なのですが、「プロ」を自称する人たちは、常に入っている資金で持てる最大のポジションを売買するようにお客に仕向けます。これでは予想される相場変動の誤差が1%以上あれば負けてしまいます。こんなハイリスクな売買を続けていれば、仮に10勝しても、わずか1回の負けで全てを失います。

つまり相場に負ける原因は、相場の予想が正しいとか間違っているとか以前の問題だったのです。いくら正しい相場予測ができたとしても、毎回毎回100%正しい結果を導き出すことなど不可能なことです。しかしわずかな変動で資金が全て飛んでしまうようなハイリスクな売買を続けていれば、負ける確率はほぼ100%になってしまいます。これが証拠金を積んで売買する(レバレッジを掛けるという)方式の相場において、生き残っている人が極端に少ないことの最大の理由なのです。

 

この構造がわかっているからこそ、商品先物ブローカーは自己玉と呼ばれる自社のポジションを客のポジションにぶつけていました(これを向い玉と呼ぶ)。自己玉は自らの意思で売買するのではなく、損をする可能性が極めて高い客の売買に向かうことで、ほぼ確実に利益を得ることを目的としています。

このオペレーションでは、取引所に対しては委託玉の75%から100%程度の証拠金を収めるだけで済みますし、社内の売りと買いのポジションを相殺した分の建玉に対してだけ、取引所との間で日々の損益のやりとりを行う(これを場勘定、略して場勘と呼ぶ)仕組みでした。つまりお客の注文に全部自己玉で向かっていけば、取引所に差し入れる証拠金もお客の資金でまかなえますし、ポジションのネットは差し引きゼロになりますから、取引所との場勘に必要な資金も不要となるのです。ブローカーから見れば、なんと素晴らしい仕組みだったことでしょう。

こうした仕組みですから、もしお客のポジションが利益となったら、会社の自己玉は損失となります。そうなった場合は、お客に利食いをさせないように手仕舞いを先送りさせるか、もし利食いした場合は、その利益で更に買い増しするように説得します。また、あの手この手(経理担当者が不在だとか、本部長が不在で決済できないだとかの理由)で出金を回避します。出金したくても、会社の自己玉は損失となっているので、出金できないのです。これが悪名高い商品先物ブローカーの「仕切り回避、出金拒否」です。

儲けたお客は言葉巧みに再取引きを誘導されますし、何より利益が出れば楽しくなりますから、喜んでポジションを増やします。しかし1%の反落はいつか必ず発生し、そこではポジションが増えた分だけ、多額の追証を請求されます。こうやって確実に客は損をしていき、会社の自己玉は確実に利益となっていくのです。これは30年以上前の当時の話であり、現在では自己玉で客のポジションに向かうことは禁止されています。また自己玉の分の証拠金と場勘は、顧客分とは別建てで、自己資金勘定から実際に取引所に送金することが義務付けられていますし、顧客資金は完全分離保管することがブローカーに義務付けられています。昨今はネット取引が導入されていますので、仕切り回避、出金拒否も存在しません

 

このカラクリに新人営業マンが気付いても、会社の営業方針としては、「小さな資金でハイリターンを得られる」ことを前面に打ち出して、先物の「お得感」を売りにしてお客を開拓している訳ですから、入れてもらった資金を遊ばせておくことは許されません。稀に利益を得ることがあっても、次の取引ではその利益も全て突っ込むように指導されるのです。

しかし、商品先物ブローカーを一方的に悪者呼ばわりすることはできません。お客にしても、わずかな資金でその何倍もの利益を得るという経験をしてしまうと、自ら進んでハイリスクを取るようになります。ハイレバレッジの相場では、その時々に華々しい成果を残すヒーローが現れますが、そのヒーローが永遠にヒーローであり続けることはまずありません。しかし有頂天にある時に、誰もそのことに気づきません。全てを失った後になって初めて、ハイリスクは決してハイリターンではなかった、それどころかハイリスクはノーリターンでしかなかったことに気付くのです。

しかし気付いた時にはすでに遅しで、手元に残っている虎の子の資金はわずかのものとなってしまっています。リスクを下げて売買しなければ生き残れないことはわかっていても、それではなかなか損失を取り返せなというジレンマに陥ります。結局、手っ取り早く損失を取り返したいという欲望に負けて、再びハイリスクを取ってしまい、最終的に持てる全ての資金以上を失ってしまうのです。

 

*教訓その6: ハイリスク=ハイリターンは嘘。ハイリスクはノーリターン。

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