■ 第1章 何故に投資家はかくも相場に負けるのか Part5

2017/11/10

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<私の記憶によれば Part5>

さんざん3人の本部長のひどい話をしましたが、そういう私も客から見れば似たようなものでした。私のアドバイスを聞いても、全然相場で利益を得られないのですから、結果を見る限りでは「目くそ、鼻くそを笑う」です。

結果はひどいものであったにも関わらず、自分は他の人たちとは違うんだというプライドが強く働いていて、商品先物の営業を続けていました。その頃になると、毎月営業のノルマに追い立てられ、相場の分析よりも新規顧客の獲得の方が重要なことになっていました。そうなってみて初めて、なぜ就職活動で訪れた商品先物会社の社員たちが、あれほど危機感を持って働いていたかがわかりました。

「ボイラールーム」だとか、「スウェットショップ」と呼ばれた劣悪な環境で、精神に異常をきたすほどのプレッシャーを掛け続けられて、毎日毎日朝の7時から夜中の11時まで、まさに「セブンイレブン」で働いていました。毎月末がノルマとの闘いです。今月クリアしても、すぐにまた翌月がやってくるのです。これでは危機感を持つなという方が無理でしょう。

なぜわずかな人数しかいないのに3つも本部があるのか、その理由もすぐにわかりました。新入社員は、新規顧客を1件獲得するとすぐに主任に昇格します。営業に出始めて1か月以内にほぼ全員が主任に昇格し、スズメの涙ほど手当てが増えます。次に10件の新規を獲得すると係長になり、累計30件の新規獲得で課長に昇格します。オーナー社長からは、早く新入社員を課長にしろと本部長にプレッシャーが掛かります。実際には課を持っていないにも関わらず、肩書だけの課長になると、業績給が付くようになる代わりに、管理職になったということで残業が付かなくなります。これで会社からすれば、長時間働かせても休日出勤させても、残業手当を支払う必要は無くなり、支給額をぐんと抑えることが可能になるという、あざとい仕組みです。まさに働かざる者食うべからずです。

こうやって社内の肩書がハイパーインフレとなっていますので、石を投げれば課長に当たる状態となります。結果として、本来であれば課長程度の肩書で十分な役職に、本部長という大層なタイトルを与えないと、序列が成り立たなくなってしまうのです。これがわずかな人数しかいないにも関わらず本部が3つもある理由です。

あるとき、「サスペンダー」のところにいた中堅社員の課長が突然会社に出てこなくなりました。寮の部屋に行ってもいません。どうやら失踪したらしいのです。こういう会社ですから、社員が突然辞めると言い出すことはあったのですが、辞めると切り出すと部屋に缶詰にされて軟禁状態となり、本部長の説得が延々と続きます。辞めるという言葉を撤回しない限りは、翌日になっても家に帰してもらえないのです。その地獄のような説得を見ていると、もう誰も簡単には辞めると切り出さなくなります。

中堅社員の失踪が明らかになってから数日すると、サラ金が会社に取り立てに来ました。そこで分かったのは、彼が新規獲得したと言って入金していたお金は、彼がサラ金から借りて、仮名口座を作成して入金したものだということでした。当時は社内のチェックも甘く、仮名口座は簡単に作ることができました。

毎月のノルマを果たせなくなった彼は、サラ金からの借金でノルマを達成していたのです。しかしサラ金から自分で都合してきた資金で相場を張って、儲かれば良いのですが、営業のプロでしかない人間にとっては、真剣に相場から利益を上げようと思えば思うほど、うまくいかなくなります。結果として追証の嵐となり、サラ金からの借り入れも限界が来て、とうとう失踪するしか道が無くなったのです。毎日相場を目の前で見ているはずの営業マンが、自分自身の利益のために本気で相場を張っても、相場から勝利を得ることは容易なことではないのです。結局はお金が尽きたところでおしまいです。

*教訓その5: 金の切れ目が縁の切れ目

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