■ 第1章 何故に投資家はかくも相場に負けるのか Part2

2017/10/20

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<私の記憶によれば Part2>

そもそもなぜ私が商品先物会社で働くようになったのか、その経緯について簡単に話しておきたいと思います。大学の卒業が迫ってきたころ、米国への語学留学の経験を活かして貿易の仕事をするつもりで就職活動をしていました。そこで○○貿易という名前の会社を訪問することにしたのですが、これがとんでもない間違いでした。当時の○○貿易と名前のついた会社は、実は貿易会社ではなく、商品先物取引の会社であることが多かったのです。そうした「なんちゃって貿易会社」を訪問したことで、商品先物という世界があることを知ってしまったのです。

今でも鮮明に覚えていますが、それまで訪問したどの会社よりも、商品先物会社の社員の人たちは危機感を持って働いており、全員ギラギラしていました。キラキラではなく、ギラギラです。しかも話す内容が大きなことばかりで、世界を股に掛けて活躍するようなことを言います。これは学生の私にとっては、とても魅惑的な世界のように思えました。後になって、なぜ彼らがあんなに危機感を持って働いていたのかわかるのですが、その時の私はそれを知る由もありませんでした。

私が最終的に入社を決めた商品先物の会社は、□□商事という名前でしたが、初回の面接でいきなりオーナー社長が出てきて、NY支店を出す予定なので君のような人材を探していたと熱く語ります。世間知らずの私は、このヨタ話にころりと騙されて入社を決めてしまいました。ここからが私の相場人生の始まりです。

その会社の本社に採用となった私は、新入社員研修後、早速営業本部に配属されます。本社には大した人数もいないのに、なぜか営業本部が3つもあり、それぞれに本部長がいます。(この理由も後からわかるのですが)

3人の本部長のうちの一人は、ゲジゲジ眉毛のギョロ目で、猪首の寸胴体系。ちょっとロンパリなので、正面に立って話をされると、自分に対して話しかけているのか、それとも隣の人間に話しているのかわからなくて困ります。新入社員を全員並べて説教をしている時に、「わかっとるのかぁっ!」と怒鳴られたので、私の隣の奴が「はい!」と大声で答えたら、「お前じゃない!」と怒られたという漫才のような実話があります。この本部長は、朝の朝礼の時に、「我が胸の、燃ゆる思いにくらぶれば、煙はうすし、桜島山~!」と熱唱するのが癖で、見た目も西郷隆盛に似ているので、「西郷どん」と呼ぶことにします。

「西郷どん」は、3人いる本部長の中でも常にトップの営業成績でした。彼の机の上の電話がなると、パッと受話器を取り上げ、「社長、今日の○○は絶対に買いですよ!」と早口でまくし立てて買い推奨をし、お客から大口の買い注文を取り付けます。その電話を切った直後にまた電話が鳴ると、すぐに受話器を取り上げて「社長、今日の○○は絶対に売りですよ!」と、今度は同じ銘柄を売り推奨し、大口の新規売り注文を強引に取り付けます。

電話に出た瞬間に相手の声を判断して、その人のポジションを頭に思い描き、その人にあった売買の推奨をします。絶対に買いだと自信たっぷりに推奨した銘柄を、その舌の根も乾かない数秒後には絶対に売りだと別の客に推奨するのです。確かにこれだと、どちらに転んでも、どちらかは利益を得ていますので、彼の抱える顧客全体の資産を大きく減らすことなく、確実に手数料が振れます。

この「西郷どん」の芸術的なセールストークを見ていると、これでお客が利益を上げられたら、それは奇跡だと思いました。しかしどちらかのお客のポジションは利益を生むので、「西郷どん」はお客からも感謝され、営業成績も社内トップを維持しています。もちろん、お客が感謝するのはうまくいった時だけのことなのですが、こっちは本気で相場で儲けてもらおうと思って一生懸命相場の勉強をして売買推奨しているのに、「西郷どん」よりも酷い結果になっているのです。本当に情けなくなってしまいます。

何故こんなことになるのか、当時の私には全く理解できませんでした。相場の世界では、努力したからといって、それが報われるとは限らないことを身に染みて知らされました。そして、「西郷どん」のやり方を見ていて、市場全体も同じ仕組みになっていることに気づきました。私の客の負けは、誰かの客の勝ちなのです。

*教訓その2: 誰かが負ければ、必ず誰かが勝っている

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