アノマリー検証 第1回「月曜と金曜には株を買ってはいけない理由って?」

2017/05/23

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システム売買は難しいものではない

システムと聞いただけで拒絶反応を起こしてしまう投資家の皆さんに対し、「実はシステム売買はそんなに難しいものではないですよ」とお伝えするために、このコラムを書き始めようと思います

「自分のやっていることは、本当に正しいことなのだろうか?」そういう疑問を持たれる方は多いと思います。それを確認するには、自分が使っている売買手法が、ちゃんと利益を生むものであるのかどうかを確認する必要があります。

ここではシステム売買構築のベースとなるバックテスト機能を使って、色々な角度から売買手法の解明を行ってみようと思います。バックテストを行うには、それに特化したツールが必要になるのですが、今回私が使用したのは、日本株のバックテストと完全な全自動売買を行えるiTradeという専用アプリケーションです(iTradeのWEBサイトはこちら)。

ラリー・ウィリアムズの売買手法に対する仮説

トレードを行っておられる方なら、ラリー・ウィリアムズという名前をご存知ない方はほとんどおられないのではないでしょうか。かつて米国の投資コンテストで、過去最高リターン(彼の記録はいまだに破られていない)で優勝したトレーダーです。彼は50年を超えるトレード経験を通じて、これまでに何千人ものトレーダーを育ててきました。ラリーは数多くのトレード技術に関する書籍を残していますが、中でも「ラリー・ウィリアムズの短期売買法」は秀逸な書籍として世間に知られています。1999年に第一版が出版されたのですが、13年ぶりとなる2012年に全面改訂された第二版が出版されました。全面改訂が必要となったのは、中を読めばわかるのですが、第一版が書かれた1999年当時と、第二版が書かれた2011年当時では、取引の電子化が進んだために市場構造が大きく変わってしまい、かつて有効であった売買手法が通用しなくなってしまったからです。

ウップスという売買手法は、ラリーが開発した数多くの売買手法の中においても、最も優れた手法であったと彼自身も言っているのですが、残念ながらこの手法も今や通用しなくなったと第二版の中に書かれています。それ以外にも、多くの有効であった手法が通用しなくなったと書いてあるのですが、ある工夫を追加すると、再び機能するようになったものもあると書かれています。

そのある工夫とは、アノマリーと呼ばれる、通常とは異なる偏った特性(バイアス)を持つ日を探し出して利用するというものです。アノマリーには色々なものがあるのですが、一般的なものとしては何曜日であるかのアノマリー(TDW=Trading Day of the Week)、その月の何日であるかのアノマリー(TDM=Trading Day of the Month)が有名です。

ラリーの書籍の中には、第一版では1988年から1998年のデータに基づいた曜日アノマリーについての検証結果が示されています。しかし第二版では1999年から2011年のデータに基づいたアノマリー検証結果が示されており、この二つの結果が大きく異なっています。これは市場構造が変わったことが原因なのではと推測していますが、いずれにしても、アノマリーと呼ばれる市場のバイアスが存在するのは、その市場独自の何らかの理由があるからです。米国の株式市場と日本の株式市場では、市場構造が異なるためにバイアスの存在も異なるはずなので、米国のS&P500をベースにしたアノマリーを鵜呑みにしては、大きな間違いを犯してしまう可能性があります。そこで今回iTradeを使って、日本の株式市場のアノマリー検証を行ってみました。

iTradeを使った曜日アノマリー検証

検証期間:2007年1月~2016年12月までの10年間

売買対象:日経225のETF(証券コード1321

売買単位:運用資産1000万円で最も多くの株数を買う(単利)

売買ルール:曜日を限定し、始値で買って終値で手仕舞い(デイトレード)

売買コスト:ゼロ(コストを加算するとバイアスの存在が正しく見えなくなるため)

つまり、当日が陽線(始値より終値の方が高い)なら利益、陰線(始値より終値の方が低い)なら損失となります。この売買結果がどうなったかを曜日別の累積損益として示したのが下記のグラフです。(上から順に、オレンジ色=月曜、黄緑色=火曜、水色=水曜、青色=木曜、ピンク色=金曜の並びで、累積損益を運用資産に対する利回り%で示しています)

これをご覧になれば、この10年間においては、225のETF(または先物)を月曜の始値で買って終値で手仕舞いした場合、ほぼコンスタントに損失となっていることがわかります。月曜以外では金曜も似通った結果となっていることがわかります。

こういったデータを見る際に注意して頂きたいのは、断面の結果だけを見て判断してはいけないという点です。ひょっとしたら一握りの大きな変動によって、たまたまその結果がもたらされたかもしれません。結果の数字だけを断面で見て判断した場合、そういった事実に気づかずに、誤った判断を下してしまう可能性があります。ですから断面の結果だけでなく、必ずその結果に至るまでの推移も見るようにして下さい。それには累積損益グラフを見るのが一番です(iTradeには、このほかに月次、年次の棒グラフもあります)。

その次に重要なポイントは、そのバイアスをもたらす何らかの個別の理由があってそうした結果となっているのか、それとも市場に対する外的な要因によって、市場全体が動いたために、そのバイアスが生まれたのかを判断する必要があるという点です。今回のケースであれば、2012年末からスタートしたアベノミクス相場では、強烈な上昇バイアスが市場全体に対して働いていました。ですからこの期間だけ累積損益がプラスになっていた場合、それは独自の特別なバイアスが存在しているのではなく、市場全体を動かす外的なエネルギーによって上昇したことになります。

上記のブラフは金額ベースで累積損益を示したものですが、赤線は全体の合計を表しています。つまり毎日デイトレードの買いを繰り返した結果の累積損益推移を示していることになります。この赤線の推移を見ますと、2008年末に大きな下落が発生していますが、これはリーマンショックの影響によるものです。また2012年末から2015年半ばくらいまでは、アベノミックスによる上昇相場の影響が強く働いていたことがよくわかります。

ファンドのパフォーマンス評価では、市場平均の値動きをベータと呼び、ファンドのパフォーマンスからベータを差し引いた値をアルファと呼んで区別しますが、バイアスを評価する際も、こうした視点は必要になります。今回の例では、月曜日デイトレの累積損益グラフは、2012年末からのアベノミクス相場においても、下落傾向が継続していましたので、このバイアスは市場全体の値動きとは関係ないところで発生していると考えられます(2016年に入ってから上昇傾向が出てきていることが少々気掛かりではありますが)。

もうひとつ大切なことがあります。それは推移を追ってみた結果、そこに何らかのバイアスが存在しているように見えても、それが将来に渡っても存在し続けるという保証は無いということです。もしそのバイアスが構造的な理由によってもたらされたのであるなら、基本的な構造が変わらない限りは、未来もそのバイアスが存在する可能性は極めて高いと思いますが、そうではない場合は、未来の再現率は下がると考えておく方が無難です。

例えば、2013年にそれ以前のデータで同じテストを行っていたなら、木曜日には、強い陽線バイアスがあると判断したと思います。しかしその判断に基づいてその後売買を継続した場合、おそらく期待したとおりの結果にはならなかったでしょう。木曜日の陽性率が高い何らかの理由が2013年まではあったのかもしれませんが、その後の累積損益グラフを見る限りでは、残念ながら現時点においては、それは消滅してしまった可能性が高いと思われます。

今後も、こうしたバイアスは突然現れ、突然消滅していくかもしれません。しかしトレンドフォロワーが、トレンドが続く限りそのトレンドに乗り続けることで利益を上げるように、バイアスを味方につけるには、そのバイアスが存在する限りはそれを利用し続けるのが賢明な方法なのだと思います。

曜日アノマリー空売り戦略

今回紹介したデイトレードの曜日アノマリーですが、日経225の先物、ETFともに空売りができますので、月曜の寄付きに売って、大引け手仕舞いという売買を行うことも可能です。もし手数料がゼロであれば、この10年間の月曜デイトレード売りの利回りは約22%、金曜の売りは約25%の利回りとなります。月曜と金曜を単純にデイトレードで売るだけで、10年間で約47%もの利回りとなっています(手数料等のコストは考慮せず)。

同じ曜日アノマリーのバックテストをTOPIXのETFでも実施してみたのですが、日経225と比べると、TOPIXの方が曜日アノマリーがやや強めに現れるようで、月曜のデイトレード売りが約23%、金曜の売りが約28%の利回りとなりました。月曜と金曜のTOPIX売りデイトレードだけで、10年間に51%ものリターンを得ることができます。これだけのバイアスは、決して無視できるものではありません。

ちなみに日経225ETFで毎日デイトレードの買いを実施した場合は、10年間で約27%のマイナスとなりましたが、同じテストをTOPIXのETFでも実施したところ、10年間で約47%ものマイナスとなりました。これは日本の株式市場でデイトレードを狙うなら、買いよりも売りの方が圧倒的に有利であることを示しています。

*次回は、個別株の曜日アノマリーについて同様の検証を行った結果を紹介します。

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京都ラボ
iTrade (株式用バックテスト&完全自動売買アプリ)を使って、書籍等で紹介されている著名な売買戦略が日本株において有効に機能するかどうかの検証と、日本株におけるアノマリー、有効なパターン等の検証を行います。またシステムトレーダーを目指す人々のために、ストラテジー構築の考え方についても解説を行います。
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