しあわせに貢献する企業

2018/06/14

・5月に8回目の東日本大震災復興支援の株式セミナーが催された。「日本復活と投資を語る義援金セミナー~未来を創る子供たちの為に今できることを」というテーマであった。寄付はテイラー・アンダーソン記念基金に届けられる。

・セミナーで、アナリストやファンドマネジャーが議論するセッションがあった。その話の中で、筆者に最も響いたフレーズが“しあわせに貢献する企業”であった。株式投資セミナーであるから、どの銘柄が儲かるかという点への関心は高い。その前提として、どのようなセクターが有望かという議論も中心となる。

・その中で、小型株の投信で高いパフォーマンスを上げているファンドマネジャーが、「しあわせに貢献する企業」という視点を指摘した。ここに注目したい。

・株は業績で決まる。業績が伸びる会社の株価は上がる。よって、業績を見ていくことが最も重要である。というのはその通りである。しかし、ここでいう業績は財務的な数値であり、企業活動の結果として出てくるものである。

・結果としての財務データ以前に、会社はどんな価値創造を行っており、人々にどんなしあわせを提供しているのか、という点をよくみていく必要があると解釈できよう。

・しあわせと言われても抽象的で、曖昧である。人によって感じ方も違う。よって、主観的な判断に頼ることになるので、いい加減になりやすい。そんなことで株式投資はできないといわれるかもしれないが、果たしてそうであろうか。

・企業価値創造は誰にとっての価値か。ステークホルダーにとっての価値である。顧客、取引先、働く人々、株主、債権者、地域社会にとっての価値である。その価値を創り出すべく企業はビジネスモデルを磨いて、活発に活動する。投資家は何よりも活動の中身をよく知りたい。そこに共感した上で、財務的な成果をみていく。

・この価値創造を、ファンドマネジャーは、「しあわせに貢献する企業」と分かり易く表現したのであろう。企業はどんなしあわせの贈り物を届けてくれるのであろうか。

・経営者は立派な人か。働いている社員は厳しい中にも楽しさを感じているか。顧客はなくてはならない商品やサービスを受けとっているか。バリューチェーンがB to Bの場合もB to Cの場合もあるが、競争の土俵でへこたれずに輝いているだろうか。怠けているとすぐに色あせてくるので、次の手をどんどん打ってビジネスモデルの進化を遂げているだろうか。ここをみていくと、株式投資は面白くなる。

・AIは普通に使われるようになっていく。IoT、ロボットにどんどん組み込まれていく。それを活用する商品、サービスが出てくる。人手不足を補うように利用されていく。

・その時、精密高機能の電子部品やモーターが必ず必要になる。しかも超小型化していく。これらの部品を単品としてではなく、ユニット部品にまとめて高性能を発揮しようという動きが一段と本格化する。家電で負け、半導体で負けた日本であるが、この高性能ユニット部品では世界をリードしていけよう。

・健康食品、化粧品、生活用品でも日本企業の品質の良さは認識が高まっている。すぐに真似されないようなブランド価値にまで高めていれば持続的成長は十分期待できる。

・どの企業にもベンチャースピリットが求められる。これを活かす仕組みを内在化させないと、古い体質のままでは伝統ある企業でも衰退を余議なくされよう。産業、企業の栄枯盛衰は世の常であり、企業の投資は成長に向けて国境を超えていく。

・中国、インドのマーケットは大きい。高い成長が続くので、豊かな人々がますます増えてくる。この中国、インドの企業と正面から戦う必要はない。日本企業としての独自性を商品・サービスで出せるならば、現地の企業と組んでいけばよい。

・社内の人材もダイバーシファイ(多様化)させて、それをマネージしていく必要がある。現地のビジネスが分かった上で、英語ができる人材、中国語ができる人材をますます増やしていくことが求められる。

・ネット時代に、モノやサービスは必ずしも所有する必要はない。必要な時に借りてシェアすればよい。所有価値から使用価値に、利便性は移っている。自前のオフィス、自前の工場、自前の車はなくてよい。洗濯も自前の機器でなくてよい。シェアリングエコノミーが本格的に台頭している。車は自分で運転しなくても、自由に移動できるようになろう。仕事はどこにいてもできるようにしたい。その環境づくりがビジネスになる。時間の節約に向けて、分業はさらに進もう。

・そうすると従来の産業(セクター)の垣根が崩れてくる。例えば、銀行業界、証券業界、保険業界といった区分はさして意味がなくなってくる。フィンテックで伸びてくる企業は、伝統的金融業の隙間をついて、いずれ業界を再編に追い込むことになろう。これも100年の歴史をみれば、さまざまな産業で絶えず起きてきたことである。

・AIの人材が著しく足りない。これから社内人材の再教育、転用が始まっていこう。社員は自ら外部の再教育を受けて、転職を考える必要が出てこよう。自分の働く企業がいつ再編に巻き込まれてもおかしくない時代が始まっているからである。

・AIの活用はいずれPCのソフトのように普通に誰でも使えるようになる。人々が目で判断していた作業がかなり自動化されて楽になろう。仮装通貨に始まったブロックチェーン(BC)の技術の応用は至る所に広がろう。セキュリティのニーズは高まるので、この分野の成長はこれから本格化するところである。

・高齢化で介護が大変になる。人手がかかる割に、報酬は低い。介護が必要な人は2025年以降一段と増加してくる。日本は高齢化先進国であるが、世界中でいずれ同じ問題がおきてくる。身の回りにセンサーをつけ、監視カメラでAIが働き、音声認識で普通に会話できれば、いちいち人手はいらない。力仕事も介護ロボットでできるようになる。遠隔診断で、薬が宅配できるようになれば、従来型の薬局はいらなくなるかもしれない。

・日本の上場企業3800社の新陳代謝は進む。毎年新規公開企業が100社以上出て、ほぼ同じだけ消えていくことになろう。そのダイナミズムを前提に、自分の眼鏡にかなった10社を選んで、自分のポートフォリオを作りたい。

・その上で、もっと幅広い資産運用を考えていくことが望ましい。世界の成長分野、優良企業に目を向けたい。投信の活用も大いに結構である。企業サイドも、「しあわせに貢献する企業」としての活動を、世の中との対話を通して、もっと見える化してほしいと願う。

 

 

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ