社外取締役の役割~会社を変えられるか

2017/10/25

・デロイトトーマツの取締役実態アンケート結果2016年版を参考にしながら、社外取締役の役割について少し突っ込んでみたい。社外取締役が増えると、1)経営の監督機能は上がるのか、2)次世代経営陣の育成は進むのか、そして、3)会社の収益力は欧米に負けないくらいに上がるのか。こうした点が注目される。

・社外取締役が経営の監督に当たる時、一人で何でも分かるという訳にはいかない。まずは、実績としての専門性が問われる。そこで、財務・会計に関する知見として公認会計士、法務に関する知見として弁護士が任用された。監査役や監査委員としては適切かもしれないが、必ずしも十分ではない。日本の大企業においては、事業のグローバル化に伴い、国際ビジネスの経験が求められている。グローバル企業の経営経験者が、社外取締役として日本人はもちろん、外国人も必須になろう。

・しかし、外国人経営者が社外取締役に必要であるといっても、1)どうやって適任者を見出すのか、2)その監督や助言が今の経営レベルに合っているのか、3)執行サイドの経営者にとって実行しがたい要求である時、どう対応するのか、4)そもそも波風が立たない経営をしたいので、外国人は入れたくないかもしれない。

・取締役会で何を議論するかは、社長であるCEOが決めたいというのが通常である。社外取締役が議長となってテーマを決めて、執行の実を上げていくとすると、CEOはやりにくいと思う公算が高い。しかし、中長期的な企業価値向上の仕組みを作るために議論するとなると、CEOの思いだけでは十分でないことも多い。

・利益相反の監督、少数株主の意見の反映となれば、社外取締役が複数いることは必須であり、できれば過半を超えている方が望ましいというのが欧米流の通常の判断であろう。

・しかし、日本の多くの企業は今のところ、そこまではいかない。企業経営に正解は1つというわけではない。将来は常に不確実であり、企業の実力も執行陣のレベルに依存する。高望みをしても無理がたたってしまう。少しストレッチしつつ、きっちり目標を達成していく方が、安定感がある。現状から一歩踏み出す方向性についてアドバイスしたり、監督したりすることが丁度よいともいえる。

・取締役会の議論で不足していることは、中長期経営計画とCEOの後継者計画であるというアンケート結果が出ている。多くの企業は中期計画を策定し、それを実行している。しかし、その計画を計数としてのKPIでみると未達に終わることが多い。社長は、後継者を自分一人で密かに決めたい。しかし、今やそれが許されない雰囲気が高まっている。的確な後継者が選ばれないかもしれないからである。

・中期計画が気合いだけの目標で、未達のなるのでは意味がない。内容のある目標を揚げると同時に、それが達成できた時、できない時の中長期的な報酬を明確に定めて、そのウエイトを上げていくことが必須である。そうなると、達成できた会社への信頼感は高まり、投資家は次なるBMの進化にますます注目するようになろう。

・次のマネジメントを担う人材については、事業部門のトップにいる頃から早目に投資家との対話に加わることが望ましい。マーケットの声がいつも正しい訳ではなく、短期的な業績に固執することも多いが、中長期的な視点に基づく投資家の声もいろいろ出てくる。それが人材育成にとってはかなり重要である。社外取締役もさまざまな場面に同席して、ステークホルダーの意見を聴く必要があり、時に自ら説明することがあってよい。

・もっと儲かる会社にしたいという命題に対して、異論のある経営者はいない。社外取締役も同じであろう。では、もっと企業価値を高めて、中長期的にサステナブルな会社にすべし、といわれたらどうだろうか。今どきの言葉としては当然であると受けとめられよう。

・では、そのためにCEOとしてどういう経営をやるか、社外取締役としてどのように監督、助言を行うか、と聞かれたらどう答えるだろうか。多くの場合、中期計画の説明に入っていくことになるが、それで十分だろうか。

・さらに突っ込んで、①社外取締役はROE経営が分かっているか、②経済的付加価値(ROIC-WACC)をどう追求するか、③ESGマネジメントに対してどのように監督、助言するか、と聞かれたら、どう対話するであろうか。

・日本の多くの経営者は、ROE経営や資本コスト重視の経営(ROIC-WACC)の経営を明示的にはやってこなかった。その経営者が社外取締役になって、これからのグローバル経営を監督し、助言していけるのだろうか。

・異なる考え方もある。そんな欧米流に拘ることなく、まずは社外取締役に実績のある経営者を入れることである。また、外国人や女性を増やして、ダイバーシティを広めることである。一歩踏み出してから、次にその成果を突き詰めればよい、という考えである。確かにやってみなければ始まらない。

・デロイトコーポレートガバナンスセンターは、2017年のDirector’s Alertの中で「取締役が提起すべき質問」を掲げて、議論を深めている。その質問を参考にしながら、筆者が社外取締役であったら、取締役会で提起したい質問を10項目ほど挙げてみた。

・第1:5年後も今のビジネスモデル(BM)が持続的に輝いていますか。色あせてくるとすると、次の価値創造のBMはどのようなものに作り上げますか。

・第2:優秀な人材を育成し、将来のマネジメントが担えるにように、どのように組織能力を高めていきますか。1人1人が活躍できるには、企業文化にまで仕上げていく必要があります。そのブランドはどうやって作っていきますか。

・第3:あらゆるビジネスはデジタルトランスフォーメーションで大きく変身しようとしています。企業や人材の新陳代謝も必要です。デジタルテクノロジーをどのようにBMに組み込んでイノベーションを起こしますか。

・第4:リスクを取る意欲、リスクを負う試み、リスクを避ける仕組みをどのようにBMにビルトインしていますか。それを機能させるためにどんな工夫をしていますか。

・第5:中長期的な企業価値創造の成果である財務的な業績向上に対して、トップマネジメントから現場の社員に到るまで、フェアで十分な報酬を与える仕組みを機能させていますか。

・第6:執行サイドのマネジメント人材、取締役会の人材は、取締役会を通して高い実効性を上げていますか。その責任を果たすために行動していますか。異なる意見にも十分耳を貸すカルチャーを作っていますか。

・第7:会計監査人とは、経営上の重要な課題について共有し、十分なコミュニケーションをとっていますか。情報開示は十分ですか。十分でないとすれば、どうすべきかを議論していますか。

・第8:ビジネスモデル構築の戦略を十分練った上で、それを実行しつつ、よい開示を心がけていますか。投資家と対話し、経営にフィードバックさせていますか。そのために、投資家との対話の場に出ていますか。

・第9:社外取締役は、常にグローバルな社会政治の行方、経済金融市場の変化に目配りし、企業をとりまく競争環境の変化にいかに対応するかを監督し、助言していますか。

・第10:社外取締役はマネジメントに迎合せず、常に信頼を築きながら、一定期間の役割として長居をせず、意外な意見を述べることをモットーに活動する、という点について共感を得ていますか。

・上場企業の社外取締役は、以上のような点に心掛けながら、企業価値の向上に資するべく、自らの貢献をきちんと認識できるように活動してほしいと願う。

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