長期投資と短期投資

2015/09/07

・自分は長期投資家だろうか短期投資家だろうか。これにどう答えるか。NISAが5年なので、5年くらい投資するのであれば長期で、1年以下なら短期というイメージだろうか。では、デイトレーダーは超短期で、年金基金を運用するAM(アセットマネジメント)会社は超長期といえるのか。

・これは短期、長期をどのくらいの期間で定義するのかという問題だけではなさそうである。同じ投資家でも、長期投資の対象、中期投資の対象、短期投資の対象がありうる。長期投資といっても、一年も経たないのに売ってしまう場合もある。短期投資のつもりでも意外に長く持つ場合もある。大事なことが3つある。

・1つは、自分の投資スタイルを考えて、自分にとりあえず合っていそうな投資のやり方を定めることである。すでに投資している人は、自分のスタイルは何かを改めて考えてみる。自分のスタイルをはっきりさせたうえで、その通り行動しているかを見直す。そうすると、自分が予め考えたスタイル通りのアクションを継続していないことが多い。

・2つ目は、何に投資するかを考える。株か債券か投資信託かという投資商品の種類(アセットクラス)をいっているのではない。例えば、日本株に投資するとして、株の何に投資するのか。トヨタか日立かという銘柄の話でもない。その株式のどんな価値に投資するのか、を問うているのである。

・そんな難しいことをいわれてもよく分からない。値上がりする株に投資したい。値上がりする株の材料に注目して、それに上手く乗っていけばよい、というかもしれない。これも1つのスタイルであるが、それで本当に上手くいくであろうか。

・3つ目は、投資する対象の価値と価格について、絶えず仮説を立てることである。例えば、米国の利上げが遠のくという新しいニュースで、昨晩ドル安が進んだ。円髙だから、今朝の輸出株の中ではスバル(富士重工業)が下がるだろう。寄り付きで値下がりが見込めるはずだ。これをとろうと考えた時、そのストーリーが仮説である。この仮説に投資するとすれば、かなり短期のデイトレードであろう。

・一方、会社の利益が2倍になれば株価も2倍になるはずである。利益が2倍になるという見方はまだ株価に織り込まれていない。スバルの競争力は大きく高まっている。大型の設備投資で生産能力を高めている。これが上手くいけば、BMWのような新しい企業イメージを確立できるのではないか。米国でのスバルの評価をみているとそのような気がする。新しい海外市場の開拓もできそうだと、会社説明会で社長は自信を持っていた。そこで、新しい市場開拓による増産で利益が2倍になるとすれば、今後5年間でみて株価も大幅に上昇しよう。この仮説に投資するとすれば、これは長期投資といえそうである。

・自分はどんな仮説を立てるか。それにどのくらい自信が持てるか。仮説はその通りにならないことも多い。上手くいかないと分かった時にはすぐに反対売買で降りる必要がある。よく「長期的視点で投資を考えるが、実際の売買は短期で行うこともあり、長期投資=長期保有ではない」といわれる理由の1つは、ここにある。

・自分の投資スタイルを1つに固める必要はない。資金の性格によって分けて、スタイルはいくつあってもよい。どんな投資価値を見出すのかという視点もいろいろあってよい。株式における「企業価値の向上」の捉え方にもさまざまな側面がある。経済的価値と社会的価値のバランスをどのように判断するかによっても意見は分れよう。投資対象に対する仮説に至っては、千差万別である。多様な投資家の多様な判断が市場で切磋琢磨することになろう。

・かつて臨床試験(新薬の治験)を行うメディサイエンスプラニングという会社が上場していた。業界4位で、2番手クラスであった。それなりの個性はあったが、大手と勝負できるわけではなく、何とか差別化の道を探していた。2代目の社長は医者で、「病気を治すにはやはり新しい薬が大切で、その新薬開発で日本は遅れている。とりわけ、臨床試験のコストが高く、時間もかかる。ここにイノベーションを起こしたい。」と考えていた。自力でもよいが、他社と組んだ方がよいと考えて、エムスリー(コード2413)と組むことにした。

・最終的には、エムスリーに買収された。メディサイエンスプラニングの株主はエムスリーの株を受けとったが、そのエムスリーの株はそこから2年で2倍になっている。当時、メディサイエンスは売上高100億円、経常利益10億円を目標にしていた。その時の社長は、将来どんな会社になりたいかという問いに対して、日本の医療に新風を吹き込んで、新しい領域で3000億円くらいの売上を上げる会社になりたいという強い思いを持っていた。

・エムスリーは新しい事業ポートフォリオをどんどん拡大している。ネット分野の医療ビジネスでは今や世界でも最先端を走り、日本だけでなく、米国、欧州、中国、アジアでも圧倒的な広がりをみせている。エムスリーへの投資は、スタイルでいえば、成長株投資である。成長株投資の最大のリスクは、成長が止まる時である。この点には十分注意する必要がある。

・長期的視点といいながら、短期の情報に一喜一憂して売買を繰り返すようでは本物の中長期投資家とはいえない。企業も中長期の経営を行うといいながら、中長期の経営の中身を十分語れずに、短期の情報にふりまわされているようでは、本物の中長期経営がサポートされない。

・長期投資を増やして、長期的経営を推進するには、短期の情報以上に信頼できる長期の情報が必要である。その長期の情報の共有に向けて対話を推進したいものである。

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