誠実な企業とは~インテグリティの実践

2014/06/05

・誠実な企業とは何だろうか。誰に対して、何に対して、誠実であろうとしているのか。誠実とは、嘘偽りがなく、私利私欲に囚われることなく、真心をもって、人や物事に対することである。これは現実にはどういう意味なのだろうか。企業として、誠実に経営する、誠実に生きるということを具体的に検討してみよう。

・3月に「誠実な企業賞2014~Integrity Award」の表彰式があった。野村総合研究所が最優秀賞、アンリツと前田建設工業が優秀賞に選ばれた。各社のトップが受賞企業として、我が社の経営について講演した。その中で誠実な企業という観点から、印象に残ったキーワードについて、いくつか採り上げたい。

・野村総合研究所(NRI)の企業理念は“未来創発”である。新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担っていく。先取りの精神で、顧客から高い信頼を獲得し、よい品質のシステム、情報セキュリティ、働く環境などを提供することを目指している。

・嶋本正社長が特に大切にしていることは、社内のコミュニケーションと、社外とのコミュニケーションである。社内では経営者の思い、組織を越えた交流、ネガティブ情報を把握するしくみに力を入れている。ネガティブ情報の把握では、5段階のよる顧客満足度の状況、天気マークによるシステム構築時のリスク状況、5段階による稼働システムのリスク状況、イエローカード/レッドカードによるコンプライアンスの重点項目チェック、などを具体的に実行している。

・社外とのコミュニケーションでは、人づくり、社会づくり、環境づくりをテーマに掲げている。人づくりとして、NRI学生小論文コンテスト(高・大生を対象にした「あなたが考える“ワクワク社会”等」、キャリア教育プログラム(小、中、高生向け)、経営者の育成(野村マネジメントスクール)などを行っている。社会づくりでは、「生活者1万人アンケート調査」(3年に1回)、NISA、番号制度への提案など、環境づくりでは、共同利用型ITサービスによる生産性向上、コスト低減と同時にCO2排出の大幅削減などを提案している。

・創業50周年に向けた「VISION2015」では、①未来をリードする会社、②戦略推進、業務改革のパートナー、③いきいきと働ける会社、④協業できる会社、⑤ベンチマークされる存在感のある会社となって、企業価値を創造し、株主に貢献することを目指している。問題発見(ナビゲーション)と問題解決(ソリューション)を追求する姿勢がまさに誠実であると評価できよう。

・アンリツは“つなぐ先進性”の会社である。2015年に創業120年を迎える。橋本裕一社長は、200年企業を目指して、長寿企業とは誠実の証であるということを実践している、モバイル情報通信分野の計測器で、当社は圧倒的なシェアを誇り、18カ国に25の法人を有し、社員(2800人)中5割が外国人である。異物の検査という点で、食品、医薬品分野にも事業を拡げている。

・誠と和と意欲を大事にして、“我思う、故に実現する”という技術立社を標榜している。CSV(社会的価値の創造)の実現に向けて、「2020 VISION」を策定し、事業軸と社会軸を追求しつつ、アンリツブランドの向上を目指す。社会の課題解決を通して、グローバルマーケットのリーダーのなることを推進し、同時に新事業もここから生み出していく。

・これを「envision:ensure」と名付けている。ビジョンを実行して、確かなものにするという意味である。顧客の期待を越えるイノベーションを通して、価値創造のスパイラルを実践していく。財務的には、資本コストを明確に定義して、ROE20%を実現する。グローバルCSRを事業戦略と連動して実行している点が高く評価できよう。

・前田建設工業の小原好一社長は、建設業において、環境経営№1を目指している。その成果として“地球への配当”を定義し、実践している。地球は我々に資本を提供している。資本を提供しているなら、配当があってしかるべしということで、純利益の2%を地球に戻す活動を行っている。純利益が赤字になった時でも30百万円は配当することにしている。

・当社のCSR活動では、80年代に安全、90年代に品質、2000年代にコンプライアンスに力を入れてきた。そして、小原社長が社長になった2009年からは環境に取り組んでいる。社長自身長年ダムを造ってきたので、自然の怖さをよく知っている。事業体として500の現場で活動し、企業としては全体の技術や仕組みで貢献する。個人としては、本人だけでなく家族が一緒に行動する。

・環境版のMAEDAルールを作って、2%の3分の2をMAEDAグリーンコミットへ、3分の1をMAEDAエコポイントに活用する。グリーンコミットでは、温暖化防止などに加えて、ベンチャー企業への投資なども含む。エコポイント(Me-pon)では、貢献活動をエコポイントとして貯めて、エコ商品(寄付も含む)と交換できるようにしている。

・2015年度までの3カ年計画では、環境経営をコアに、脱請負とグローバル化を図っていく。建築・土木事業を軸に、社会に提供する価値を持続的に拡大する企業になることを目指している。その中では、事業の上流から下流まで、自らが事業主になるために資本を投入する。さらに、太陽光発電や洋上風力といった再生可能エネルギー事業にも取り組んでいく。

・このように3社をみてくると、“未来創発”、“つなぐ先進性”、“地球への配当”を本業に据えて実践している。中長期的な企業価値創造を社会的課題のソリューションと結び付けながら実行している。CSRを事業のコアに位置付けて、誠実に取り組んでいる。誠実な企業の本領が、ここで発揮されている。誠実な経営が中長期的な企業価値創造といかに一体となっているか、投資家としてここに最も注目したい。

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