逆ツリーでROICを社内へ浸透させる経営

2014/02/03

・オムロンの山田義仁社長が、野村CEOフォーラムで、企業価値向上に向けて3つの視点からその方策について語った。1つは事業成長について、成長イコール規模の追求ではなく、強みを活かして収益力を高めていく。2つは変化対応力で、変化に強い企業になろうとする。3つは経営管理について、資本の有効活用を独自の手法で図っていく。

・山田社長(現在52歳)が社長に就任した2011年に、長期ビジョンVG2020(Value Generation 2020)を発表した。2013年度は、その中の第1期3カ年計画の最終年度に当たる。この期間は、売上高粗利益率の向上にこだわってきた。生産、販売、開発、企画という各事業部門の各機能がいかに連結力を高めてきたかという数字が、粗利率に最も表われると認識したからである。実際粗利率は上昇し、今期は過去のピークであった2007年度にほぼ並ぶ業績(売上高7500億円、営業利益650億円、同利益率8.7%)が達成できそうである。

・当社は、ビジネスセグメントとして、①工場自動化用制御機器、②家電・通信用電子部品、③自動車用電子部品、④社会システム、⑤健康・医療機器、⑥環境・新規事業の6つの事業を展開し、その事業ポートフォリオ全体の収益力を高めることに主眼を置いている。その中で、ROIC(投下資本当期純利益率)をベースにした経営管理を強化している。

・新興国でも経済の発展につれて、人件費は上がり、環境対応が求められ、社会インフラの充実が不可欠となってくる。そうなると、当社の自動化システムに対するニーズが高まる。そこで、プログラミング言語を世界共通語に対応させて、コントローラの集約を図っていく。人件費を抑えて生産性を上げ、品質を安定化させるためのオートメ化はますます進む。また、世界シェア5割を有する血圧計も新興国で伸ばしていく。環境機器でも領域を絞って強みを追求していく。

・経営管理では、粗利率、売上高営業利益率、ROE、ROIC(投下資本当期純利益率)を重視する。社内において、粗利率や営業利益率は馴染み易いが、ROEやROICを現場で活かすとなると、これはかなり難しい。そこでROICを逆ツリーとして展開していく。つまり、ROIC=ROS(売上高利益率)×投下資本回転率と分解する。ROSは売上高粗利益率などへ分割、回転率は在庫、債権、債務などに分割して、現場で使える指標にブレークダウンしていく。

・財務諸表の分析としては簡単であるが、それを各事業のラインにまで落とし込んで、使いこなすようにするのは結構大変である。しかし、それを実行していくと、投資家が期待する価値創造プロセスのKPIとして機能するようになる。オムロンはそれを実行している。

・このROICは今期11%まで向上してくるが、次は15%を目指していく。今期の粗利率は39%、営業利益率8.7%、ROE11%、ROIC11%であるが、海外の同業大手(シュナイダー、ロックウェルなど)はROSで15~20%を上げているので、現状では当社はまだそこに及ばない。しかし、連結力を高めて、在庫のマネジメントにさらに力を入れれば、粗利率は42%まで改善できる、と山田社長はみている。

・一方で、先行投資も続けている。ヘルスケアのマージンはまだ二桁に届いていないが、新興国でのチャネル開発に積極的に投資している。米国には技術開発拠点を置いて、米国が先行しているウェアラブルな(身に付ける)健康管理機器やシステムについても変化を取り込もうとしている。

・オムロンは資本コスト(WACC)を上回るROICを上げて、資本効率を高めながら企業価値の向上に取り組んでいる。逆ツリーの展開を実践しているところに注目したい。ROICを15%に上げていく戦略がはっきりしているので、市場での評価も一段と高まってこよう。

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