よい会社を見抜く企業評価の実践

2011/08/08

超電導リニアの建設が具体化する。といっても、開業は2027年の予定であるから、まだかなり先である。かつて、JR東海の葛西会長から、当社の中期は20年で、長期は50年であるという話を聞いて驚いたことがある。革新的な技術を開発して、それをビジネスとして普及させ、事故が無いように運営するには、そのくらいのタイムスパンが必要であるという趣旨である。

筆者自身、超電導リニアには20年も前に実験線に乗せてもらったことがある。中国の上海ではすでに実用化されており、30kmの区間を最高速度430km/時、7分で走行する。乗ったことがある人も多いと思う。JR東海は46年間、新幹線を無事故で運転している。さらに万全の安全性を確保して、東京-名古屋でまず実現しようとしている。最高時速500km、40分で結ばれる。その後大阪にも延長する。

葛西会長は、ワシントン・ニューヨーク・ボストンの間でも実用化できるのではないかという(読売新聞7月31日、地球を読む)。超電導リニア産業が発展することになろう。自動車、飛行機、鉄道というのはイノベーションを怠らなければ、互いに棲み分けがなされて行く。生活の質と利便性から見て、どれかが廃れるというわけではない。

もう1つ大事なことは、今回の東京-名古屋の総工費5兆円を全額、JR東海が自社で賄うということである。国の政策、規制はいろいろあるとしても、国の補助金でリニアを作るわけではない。ビジネスとして成り立つから自力で作るというところに本物のイノベーションを感じる。

投資家はさまざまな情報を判断材料として利用する。その場合、会社からの情報、マーケットからの情報を鵜呑みにせず、必ず自分でよく咀嚼してみる必要がある。納得できることは大いに参考にすればよい。ピンとこないこと、腹に入らないことは誰かに聞いて調べてみる必要があり、それでも納得できない時は様子を見た方がよい。

マーケットには情報を発信する多様な専門家がいるが、それぞれどのような立場で情報を分析し、発信しているかは知っておいた方がよい。少し長く見ていくと分かってくる 。会社の発信する情報は株式投資にとって決定的に重要である、しかし、その情報をそのまま信じることはできない。 会社の情報を分析して独自の考えを述べるアナリストやファンドマネジャーの意見を聞いてみたいと思う。しかし、アナリストの意見が十分手に入らない場合もある。

いずれにせよ、企業のトップの話を自ら聞いて、投資判断の力量を養っていくことが何よりも重要である。会社説明会に行って、社長の話を聞く。聞いた後、(1)経営者の経営力、 (2)事業の持続力・成長力、(3)業績変動のリスク、について、自分で評価してみる。自分で判断したものを記録し、いろんな会社についてその評価をつけていく。同じ会社について、また話を聞いたなら、そこで付け直していけばよい。それを一覧表にしてみると、自分なりのイメージが固まってくる。このイメージを固めていくことが大事である。新しく話を聞くときには前にイメージにとらわれず、いつも新鮮な気持ちで聞く。こんな気持ちを持って、JR東海の話をぜひ聴いてみたいものである。

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