格付け会社2社が英国を格下げ

2016/06/29
  1. 米大手格付け会社S&PFitchが英国の格付けをそれぞれ2段階、1段階引き下げAAとしました。
  2. 格下げ理由は、主にEU離脱による経済面の不透明感増大です。経常赤字拡大が懸念されています。
  3. 英ポンドは急落しましたが、長期金利は上昇していません。格下げはやや先行的な感があります。

経済面、金融面での不透明感増大を強調

6月27日、米大手格付け会社のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)社とFitch(フィッチ・レーティングス)社の2社が、英国の長期債務格付けを引き下げました。S&PはAAA(トリプルA)からAA(ダブルA)へ2段階引き下げ、FitchはAA+(ダブルAプラス)からAAへ1段階引き下げました。格付け見通しはいずれもネガティブ(将来格下げの可能性あり)でした。

格下げの理由としてまず挙げられたのは、経済面での不透明感増大です。EU(欧州連合)との経済的結びつきが離脱前と比べると弱くなり、英-EU間の貿易が税制面での特権解消で縮小が懸念されています。英国の輸出入に占めるEUの割合は約50%あり、大幅な縮小は経済に痛手です。また、英国は経常赤字が拡大してますが、サービス収支の黒字がかなり赤字幅を圧縮しています。それがEUとの関係の弱まりで失われると、経常赤字がさらに拡大するおそれもあります。

金融面でのプレゼンス低下も懸念されています。金融機関の資金調達の約半分が外貨建てであり、経済面の信頼性低下で資金調達コストが上昇し、英国の強みである金融サービスが低迷するおそれが指摘されています。また、国際決済通貨としての英ポンドの地位低下、英国に対する国内外の投資低迷も懸念されています。こうした、経済面、金融面でのプレゼンス低下で、英国の成長性が損なわれる可能性があると指摘されています。

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市場は大きく動いたが適当な評価には時間を要しよう

英国の格下げによって、英ポンド(対ドル)は、EU離脱が決まった24日に続いて27日も急落し、1ポンド1.322ドル(NY終値)と、前日比3.3%下落しました。一方、英国債利回りは急低下しました。10年国債利回りは0.93%と、前日比15bp(ベーシスポイント:0.01%)低下しました。格下げにもかかわらず、英独の利回り格差は逆に縮小し、経済の先行き不透明感増大の効果が勝りました。

一方、保証料率という形で債務の信用性を測るCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を見ると、主要国全般で拡大(信用力低下を表わす)しました。5年物でみると、アメリカ、ドイツ、日本が英EU離脱決定直前の6月23日と比べて3~5bp、フランスが14bpそれぞれ拡大、イギリスは11bp拡大しています(27日現在)。これは、世界経済全般に対する不安増大を反映したと見られます。

今回の格下げは「不透明性の増大」を織り込み、実態よりもやや先行した形で実施された感があります。EU離脱の英国経済への影響については、様々な見方が存在するのが事実であり、格下げを適当に評価して市場価格に織り込むのは、現段階では難しいと言わざるを得ません。今後のEUや他の主要国との協定見直しや、英国内での政治的な動きなどによっては、評価が再び変わる可能性もあるため、一方向の動きとして捉えないことも必要かと思われます。

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