米国の利上げについて

2015/08/21

今週の国内株市場の動きですが、国内GDPの発表や米国のFOMC議事録の公表などのイベント待ちによる膠着感と、中国株市場への警戒感でやや軟調な動きが目立っています。日経平均は20,500円を挟んで、下方向に20,000円の水準が見えてくると買いが入り、上方向に21,000円が意識されてくると売られるという構図は維持している格好ではありますが、3カ月間の値動きの中心である75日移動平均線を下回る場面も増えており、やや相場のムードは弱めの印象です。

足元の相場環境を取り巻く状況を整理してみますと、まず、4-6月期の国内GDPは前期比でマイナス0.4%(年率換算でマイナス1.6%)という結果になりました。マイナスの結果自体は事前に想定されていたため、株式市場への影響は限定的でしたが、GDPの内訳を見ると、期待されていた消費や輸出が伸びていない(むしろ減少している)など、中身がイマイチだったことで、イベント通過の「アク抜け感」で株価上昇とはなりませんでした。今後はこの消費と輸出の弱さが一時的なものかどうかを確認していくことになりそうです。

また、米FOMC議事録についても、利上げ観測が強まる中で注目度が高かったのですが、議事録の中身は9月の利上げを確信させるものではなく、結局、もしかしたら利上げは12月になるかも的なモヤモヤ感が続くことになり、今後も9月実施か先送りかのムードの変化が相場に影響を与えそうですが、それでも、9月の利上げ実施を想定して動いたほうが良いかもしれません。

米国は2013年5月のいわゆる「バーナンキ・ショック」以降、QE縮小やその先の利上げについて時間をかけて意識させてきましたし、マーケットも利上げありきの前提で動いてきました。そのため、利上げそのものは想定済みなのですが、一方で、利上げ後の影響度については見方が分かれており、中国情勢や資源価格の下落などを考えると、先送りした方が良いのではないかといった見方につながっています。ただし、ズルズルと先延ばしをして逆に利上げしにくくなるよりは、いったん利上げをして様子を見て対応する方が結果的に選択の余地も多くなると思われます。

とはいえ、米国の利上げによって一番懸念されているのが新興国への影響です。これまで米国の金融緩和で溢れたマネーが新興国に向かい、新興国経済を支えてきた一面がありますが、これが利上げによって逆回転するのではという懸念です。新興国から資金が流出することで通貨安や輸入コストが上がりインフレが進行、それらを食い止めるために利上げをし、さらに景気が悪化するという「悪循環モード」に陥ると、リスクオフの流れが強まってしまい、かつて「フラジャイル5」という言葉が相場を賑わし、経常赤字国の通貨や株式、債券が売られた局面がありましたが、同じようなことが起きる可能性があります。

日本では、「米国の利上げが日米の金利差を生み、それがドル高/円安となって、輸出関連株を中心に日本株にとって追い風」という見方も根強いですが、新興国経由のリスクオフムードが強まると、逆に安全通貨とされる円が買われるシナリオも浮上してきます。もっとも、新興国側も外貨準備高強化などの備える動きも見せており、米国の利上げによる新興国の反応が限定的にとどまるかどうかが注目されます。

すでに新興国の多くの株式市場は利上げを想定してか、軟調なものが多くなっていますが、前回の米国の利上げ局面(2004年~)の株式市場の動向を見ると、「利上げ前は軟調、利上げ直後からしばらくはもみ合い、その後は上昇基調」という展開になっていて、意外と堅調な推移でした。そのため、バッドシナリオとグッドシナリオは五分五分と言いたいところですが、2004年から2007年までの株価上昇局面は「BRICs」や「デカップリング」という言葉が流行っていたように、新興国経済への期待感が強かったこと、また、今後の米国の利上げによって、中国が人民元をさらに切り下げる可能性もあるため、警戒感は以前よりも強まっていると言えそうです。

 

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楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
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