サマーラリーに向けて、目前のリスクを考える。

2014/06/02

【マクロ分析】
▼けっきょく無かった「Sell in May(5月に売れ)」。
セル・イン・メイという言葉が、今年は近年に無いくらい東京では取りざたされていました。
あたかも、この言葉は、「5月に暴落するから、売れ」という意味のように見られますが、東京市場にしろ、米国市場にしろ、歴史的には5月という月回りはそんなに悪くはありません。
もともと現地米国で長年言われてきたこのジンクスは、10月を中心とする前後3ヶ月が、非常にファンドによる需給関係が悪化することから、彼らの売りが夏場から始まるという傾向が前提となっています。
このため、まだ高い5月のうちに売れ、というのが真意です。
確かに、昨年の場合は5月から急落していったので、この記憶が「5月に売れ」という言葉が一人歩きした最大の理由でしょう。
少なくとも、今年は、「セル・イン・メイ」は無かった、という結果で終わりました。
これは、5月3日の編集長の独白「Sell In Mayは無い」ですでに想定していたことです。

▼おおむね、想定通りで底入れは進行。
どうやら、ここもとの想定が、だいたいにおいては現実の相場と合っていたようです。
編集長の独白のタイトルだけを追っていっても、わかります。

5月3日 Sell In Mayは無い → なにしろ、年初来初の月足で陽線です。
5月10日 変化日は5月20-21日前後 → そのものです。
5月17日 世界的な長期金利低下の不思議 → これが最大の謎です。
5月24日 今年初めてのブル局面へ → 200日線回復。戻り相場はほぼ一巡。

だいたいこんなところでした。
外人が目だって実弾で買った形跡はありませんでしたから、推測ですが国内勢が買っていたという判断をしました。
おそらく生保・年金あたりだろう、と解説してきました。
昨日の主体別出来高動向を見ますと、信託が増大していたことが確認されましたから、間違いなく年金の買いであったということが判明したといっていいでしょう。
現在は、東京市場は戻り一巡で伸び悩み。
ドル円、米長期金利が上昇しない以上、日経平均の上昇トレンドはなかなか出てきにくいという状況にあります。
この膠着状態が大きくブレると考えています。(29日「朝の作戦」)
引き金になりそうなのは、ECB理事会と、米雇用統計です。

▼世界的な国債買戻しが続いている~とくに国内生保などの外債投資再開のインパクト。
短兵急に米連銀の早期利上げ観測をし、国債のショートがかさんでいた分が、捲き戻しをしているというのが、一応の解釈ですが、それに加え、たとえば日本などでも、外債・株式投資に積極的な買いを行う方針が次第に鮮明になってきている昨今(かんぽ生命、GPIFなど)、海外ではこれを当て込んで債券投資に向かう向きも、かなり出ているのではないか、と推測します。
国内ですら、日本国債が0.5%台まで長期金利低下してしまっているくらいです。
しかし、この結果、日米金利差は辛うじて2%ギャップ前後で推移しており、また日本だけが先進国で実質マイナス金利である、という円が買われる理由はさらさらない環境をつくっています。
シカゴの投機筋の円売りポジションは、一時の半分以下になってしまい、ここもとでは最低規模に縮小していることからみて、これがさらに縮小していくことはかなり難しいでしょう。
むしろ、円売りポジションは、きっかけさえあれば、増大に反転していくところだと思っています。
昨年10月ごろは、円売りポジションはやはり5万枚弱といったところでした。
そこから年末までドル高で105円まで急伸しましたから、円売りポジションは14万枚まで増大。
それが現在は、5万3000枚まで縮小してきたわけです。昨年10月とほぼ近い規模ですが、当時はドル円は96円台まで突っ込んでいることを考えますと、やはり円高へのブレも、かなり限界にきていると考えられます。
先述の日本の国内勢、とくに生保・年金などの外債投資積極化の動きは、グローバルマネーをして、景気循環とは関係なく、先回り買いをしようという動機を大いに活気づけている可能性が十分にあるのではないでしょうか。
また、その規模はかなりのものになるでしょうから、ドル円に対しても、ドル高の大きな背景にもなってきます。
そういう観点からすると、外人というよりも、かなり国内勢の運用方針転換が、今後相場を振り回す、良い意味でのインパクトになってくると考えられそうです。
投機筋というのは、基本的にトレンドフォロワーですから、この動きが鮮明になれば、おのずと円売りポジションの増大に踏み切ってくるでしょう。
逆に米国の長期金利は、なかなかそう簡単には上昇してこないかもしれませんので、おのずと日経平均の上値は限定的ということになります。

▼来週の変化日。
戻り相場は、昨日解説しましたように、出遅れていた「しんがり」のラッセル2000米小型株指数と東証マザーズで、おそらくここから5%も上昇すれば、ほかの大型株主体の総合株価指数においつき、200日移動平均線の奪回に到達します。
これで、戻り相場は完全に一巡ということになります。
問題はそこからです。
スムーズにそこから、実弾買いを交えた本格上昇に突入するのか、それとも一回シェイクアウト(振るい落とし)が入って、押し目をつくり、屈伸運動を経て上値を取りに行くのか、です。
日経平均、TOPIXを見る限り、出来高が昨日増大してきましたから、前者のシナリオの期待もでてきていますが、なにしろ米雇用統計とECBという外部環境がその帰趨を握っていますので、これらは水物です。
なにが飛び出すかわかったものではない代物であるため、慎重にいくべきでしょう。
ECB理事会が6月5日、そして週初からのさまざまなマクロ指標(米ISM指数など)を経て、6月6日に米雇用統計、とこの二つの結末が、変化日になってくると考えています。

▼米雇用統計の問題。
とにかく米長期金利がいっかな上がらないことが問題なのです。
これが上がらない限り、ドル円も、日経平均も上がりようがありません。
幸いなことに、米長期金利が2.4%台まで低下したにもかかわらず、ドル円・日経平均は滑落しませんでしたから、この米長期金利の上昇は、景気循環などとあまり関係のない理由(おそらく需給)によるものなのでしょう。
それでもまずは、ファンダメンタルズという「正当な口実」が、長期金利反転上昇のきっかけになりやすいので、一応このファンダメンタルズを考えてみましょう。
まずは、米雇用統計です。
これが強い、という数値になればよいわけです。
失業率は低下しているのですが、連銀のイエレン議長は「内容が悪い。」と渋い顔です。
内容の悪さとは、賃金が上がっていない、という点に集約されます。
しかし、おそらく、寒波の影響で、十代を中心とした若年層に大量の失業が発生したことが賃金が上がらなかった最大の理由だとすれば、解決しそうです。
昨年末で、失業保険に関する緊急法案は打ち切られていますから、失業者たちは、そろそろぜいたくを言わず、とにかく働けるのであればなんでもいいから働こうという動きをしているはずです。
今回の雇用統計は5月分ですから、とてもではありませんが、無色で半年もいられるわけもありません。
おそらく雇用統計の内容も、改善してきていると推測されます。
ただ、この雇用統計の問題は、あまり今、それほど市場から注目されているようには思えないのです。
むしろ、連銀がもう一つ指摘しているほう、つまり住宅の不調のほうが目下注目を集めているので、もしかすると、雇用統計が良くても、あまり相場にインパクトを与えないかもしれません。

▼そもそも、なぜ長期金利が低下してしまっているのか。
この最大のミステリーは、先述しましたように、米国の景気が、思ったほど好ピッチで回復していないという懸念です。
雇用統計、住宅市況が足踏みをしているとしたら、なかなかスムーズな利上げには結びつきません。
もともとは、来年4月ごろか、と思っていたところが、今週も一人の連銀高官が、利上げは来年後半ではないか、といったような発言をしだす始末です。
これでは、まだまだ国債投資ができるじゃないか、ということになります。
それが、例の、年初で国債はずし、国債の空売りをかけていた多くの機関投資家が、あわてて買い戻すという動きになり、これが未だに続いているという仮説です。
さらに言えば、日本から生保・年金がこぞって外債投資をしにいくということが自明となっているため、先回りして、米国や欧州の国債を買いあさっているという仮説も成り立ちます。
南欧債券は、債務危機がいまのところは無い状態になっているので、リスクはほとんど低下しています。
しかも、やはり南欧債券の利回りは、ほかにくらべて高めなわけですから、リスクがないなら、買いましょう、ということで、どんどん買われ、利回りが低下し、信じられないことに、アイルランドごときの国債利回りが、景気好調な英国国債の利回りを下回るなどという、あってはならないことが起こってしまっているわけです。
このように、一度は、覚悟を決めた世界的に(とくに先進国の)国債投資に、まだできるじゃないか、という思い直しが起こり、結果、利回りが低下し続けているというわけです。
もちろん、その中でもっとも安心感のある債券は、米国10年国債ですから、この利回りがあろうことか、2.4%台にまで低下してしまったのです。
世界中の国債利回りが低下し続けている中で、日本国債の利回りはなにしろ0.5%ですから、もう下がりようがありません。そのため、日本と欧米との金利差は縮小してしまい、これが円高圧力となり、日経平均の頭を抑えてしまうという構図がでてきます。
幸いなことに、長期金利低下の割には、ドル円が崩れないのは、一説には、公的資金の買い支えがあるのではないか、とも言われていますが、なんともいえません。意外にも崩れないこのドル円のおかげで、日経平均は、米長期金利低下にもかかわらず、とりあえずは戻り相場一巡までこぎつけることができたわけです。
この、より高い利回りを求める動きは、たとえば、日本国内でも見られます。
たとえば、日経平均より1ヵ月ほど先行して買われる癖のあるREIT市場ですが、東証REIT指数は、3月24日に最後の安値(1438ポイント)を叩いた後、日経平均に先だって上昇しはじめ、なんと昨日には1565ポイントまで、8.8%の上昇となっています。まったくの右肩上がりです。
これに連動する東証REIT連動型ETF、証券番号1343も、7.7%の上昇です。
株式市場でも、ことさら配当利回りの高い銘柄のパフォーマンスが相対的に良いということも確認されていますから、同じ流れでしょう。
逆に言えば、この東証REIT指数が反落するということは、長期国債が各国で利益確定されるタイミングとほぼ同じである可能性が高いということになります。
今後の一つのシグナルともなるので、定点観測しておきたいポイントです。

▼ECBがやはり、一番大きなトリガー(引き金)になるか。
さてそれでは長期金利低下が、いったいいつ反転するのでしょうか。
もっぱら来週の眼目は、その意味でECB理事会ということになります。
今、市場では、6月5日の理事会で、金融緩和をするかしないかではなく、すると決めてかかっています。
これまでドラギ総裁は、口先だけのリップサービスでほのめかし、これだけで市場をリードしてきましたが、前回5月に、「6月にアクションを起こしても、なんら違和感を覚えない」と発言したことから、6月には確実に金融緩和措置をだすと市場では織り込んでしまっています。
今は、それが、利下げなのか、それとも量的緩和なのか、で議論が沸騰しています。
これは、日本にとってはかなり由々しい問題です。
もし量的緩和であれば、アベノミクス相場が、日本ではなく欧州にお株を取られてしまいかねないからです。
つまり、マネーは東京ではなく、欧州に一段と殺到することになってしまうわけです。
市場では、政策金利の引き下げ、つまり0.25%を0.125%にするというのがもっぱらの観測です。ほとんど意味がないでしょう。
あるいは、マイナス金利への誘導という説もあります。市中銀行が中銀に預託しているマネーに、金利をつけてしまうというやり方です。しかし、欧州では過去、同じことをデンマークでやって失敗した経験があります。
いずれにしろ、金利を操作するというやり方だけだったとしたら、効果は限定的でしょうし、いったん政策を出してしまった以上は、しばらく当面はECBからは政策が出ないわけですから、ユーロは反転。これがクロス取引でさまざまな投資対象を玉突きのようにつきうごかし、膠着していたドル円がドル高、長期金利も反転上昇、といったような振り子の逆回転を捲き起こす可能性は高いでしょう。
当コラムでは、これを期待しているわけです。
ところが、もし量的緩和に踏み切ったら「こと」です。先述のように、欧州のデフレ回避シナリオを好感して、おそらく今後一番変化率の大きい欧州市場に資金は集中する格好になりますから、東京は蚊帳の外になってしまいます。
あるいはまた、単なる金利操作だけしかやらなかったとしても、ドラギ総裁のことです。またぞろ口先介入で、「次回こそ、アクションを一段とすすめる用意がある」といったような、量的緩和策をほのめかすような発言をしかねません。
これまた次回に期待をつなげてしまうので、世界のマネーは、一段と長期金利のほうに向かってしまうでしょう。
つまり、一段の長期金利低下で、ますます日経平均は上がりにくくなってしまうわけです。
これをくつがえすには、よほど米国の一連のマクロ指標が強烈に良いか、日本の国家成長戦略のインパクトが大きい内容のものになるか、この二つだけが頼りということになります。
もちろんECB理事会の決定が、先述のように単なる金利操作だけで、なおかつドラギ総裁も次への含みをそう持たせるような発言にならない、という場合もあるわけですから、この場合は、簡単に相場は反転するでしょう。
さて、どちらになるのか、非常に難しい判断です。
正直判断のしようもないわけで、出たとこ勝負になります。
つまり、ポジションは、やや軽めにしておくほうが無難という結論になるわけです。

▼外部環境以外では、やはり国家成長戦略。
国家成長戦略ですが、6月一杯ということではなく、早め前倒しで発表してくるという話も出てきています。
国内勢は日本株にも積極策にでてくるでしょうが、これに外人が追随して加わることになるのでしょう。
外人は、2013年の選挙のときもそうでしたし、おおかた内容や結果があらかじめ想定できていたとしても、実弾を投入するのは、その結果が事実として判明した後からです。
選挙が行われることが判明したのは、2013年10月ですが、東京市場の出来高急増となったのは、11月の選挙当日以降です。
同じようなことが、今回6月の国家成長戦略発表が、直接的な引き金になる可能性は十分にあるということです。
なにはともあれ、米国の指標が強いこと、そしてECB理事会が大きな波瀾を巻き起こさないことが、望まれます。

【黄金銘柄リスト】

昨日30日の大引け段階のデータで黄金銘柄リストを更新しました。
母集団は108銘柄となります。

(1)追加銘柄。
ありません。

(2)除外銘柄。
ありません。

(3) 絞込み表。
母集団が108銘柄になっていますが、ここから「絞込み表」を作成すると合計で41銘柄になりました。
基本的に、新規買いの対象としては、投資適格性があると考えられるものです。

(4) コア銘柄。
「絞込み表」から、優先度の高いものを抽出します。
「コア銘柄」は、結局以下の通り銘柄です。
ほぼ通常通りのハードルで残った銘柄群です。
合計で、24銘柄となりました。

来週は、なにしろ重要イベント目白押しですし、大きな変化日でもあると考えられます。
当初からあまり積極策に打って出るのは得策ではないでしょう。
ポジションは、パフォーマンスの劣化しているものを切って、余資ができたら、打診買いていどで対応しておくほうが無難です。
パフォーマンスが良く、ホールドしているものについては、そのままホールドでよいでしょう。
新規買いをする場合に、現時点で耐久力があると目されるのが、コア銘柄です。
単純に総合評価点10点の銘柄でとりあえず張ってみるというのも良いでしょう。
総合評価点10点の銘柄は以下の4銘柄です。

6796c クラリオン
7276w 小糸製作所
7240w NOK
6707d サンケン電気

日経平均の評価点が5点にまで下がっているので、「めのこ」ですが、おそらく7点以上の銘柄ですと、かなり期待の耐久力を見せる力があると思います。
つまり、上から19番までです。

面あわせ近辺のものは、上値を取った場合に初動の上昇率が大きいのでねらい目ですが、うま上値を取ってくれるかどうかは、未知数です。
この面あわせ近辺に位置しているのは、以下の9銘柄です。

1934c ユアテック
6707d サンケン電気
6340w 渋谷工業
2362d 夢真
6440 JUKI
9706dw 空港ビル
8103cw 明和産業
6724c エプソン
6072 地盤ネット

上値を取りに行きはじめたばかりのものが、以下の3銘柄です。

3104w 富士紡
5196w 鬼怒川ゴム
6778c アルチザネットワーク

いきなり利益確定が出るかもしれませんから、週明け朝から入るのは考えものです。
一日を通じて、利益確定を強靭に消化している様子が伺えれば、後場あたりから入っても良いかもしれません。

以上

増田経済研究所
コラム   増田経済研究所
増田経済研究所が、今週の東京株式市場の動向を展望します。米国を中心とした国際情勢を踏まえ、誰が今、何を考え、我々個人投資家はいかに対応すべきなのか、分かりやすく解説します。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:有限会社増田経済研究所/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1069号

コラム&レポート Pick Up