銘柄研究のために

2013/05/06

基本に戻って銘柄研究のために役立ちそうなことを書いてみましょう。

▼株価を決定する三つの要素
投資理論にはたくさんの考え方があります。その中で、おおむね支持されている考え方ですが、株価の決定要素には三つがある、という原則が知られています。

(成長性)
一つは、成長性です。利益成長率のことですが、もっと具体的に増益率といってもいいでしょう。もちろん、成長性の高い銘柄のほうが株価の上昇率が大きいと考えるのが普通です。アメリカで著名な投資家やファンドマネージャーたちの多くは、四半期ベースか、通期か、場合分けにもよりますが、どちらにしても、20%増益以上かどうかという点を気にする人が多いようです。それが連続ということになりますと、大変な肝いり銘柄になっているようです。
ただ、いくら増益率が高い銘柄でも、すべて株価が上昇するわけではありません。ここが相場の不思議なところです。たとえば、非鉄や半導体、海運、商社、化学等々、景気に対して非常に先行的な業種は、業績が最悪期(極端な話が、赤字のとき)に大底から大変な上昇相場になることが多いのです。業績にうるさいアメリカの証券市場でも、こうしたシクリカル銘柄(景気に先行して動く銘柄)を買うのに、理論はいらない。必要なのは勇気だけだ、とさえ言われています。
ほかにもいろいろな現象があるのですが、必ずしもこの業績や成長ということは、銘柄を判断する場合に決定的な要素ではない、ということでしょう。
ただ、安心感にはなりますし、機関投資家の場合、なぜその銘柄を買ったのか、顧客や上司に対する説明責任がありますので、どうしてもこの成長率などにこだわってしまいます。

(需給)
もう一つは、需給です。これは主に、信用取引の買い手・売り手の比率で考える場合が多いでしょう。一般に「取り組み倍率」と呼ばれているものですが、

【信用の買い手の数÷信用の売り手の数】

で表します。
これが1ですと、両者拮抗ということになります。1を超えている場合は、買い手>売り手ということです。1より小さい場合は、買い手<売り手ということです。
ここで、よく勘違いをすることがあります。ともすると、1より小さい場合、たとえば、0.5倍とか、0.8倍とかいう場合ですが、圧倒的に分母の売り手の数のほうが多いわけですから、そういう銘柄は下がるのではないか、と思い勝ちです。
ところが、「上昇局面においては(ここが重要です)」、逆で売り手の数の多いほうが、激しく上昇することが知られています。
なぜでしょうか? ここでいう売り手の数、買い手の数は、信用取引をしている人の数の比較ですから、0.6倍という取り組み倍率の銘柄は、売り手が買い手よりずっと多い状態です。こうした銘柄は、さぞ売り圧力が大きくて株価が上がりにくいだろう、と思い勝ちです。
ところが、空売りをしている人がそれだけ多いということは、逆に言えば、それ以外にもう空売りをしようとする人がほとんどいなくなっているということでもあるわけです。
そして、株価が反発しようものなら、圧倒的に多い空売りをしている人たちは、売った値段より、株価が上がってきてしまったら大変ですから、慌てて手仕舞い(買い戻し)を急ぐことになります。
その結果、株価は急ピッチで上昇を加速させることになるのです。つまり、空売りをした人たちが、自分で焦って買い戻すので、その力で株が上がってしまうわけです。
これに、現金で買う人たちの力も加わりますから、通常の2倍の力で株価が押しあがることになり、大変な急騰相場になることが多いのです。
最近の例でいえば、富士山が世界遺産に登録されたというニュースで、さまざまな「富士」関連銘柄が上昇しました。その一つに富士急行《9010》があります。
あまり普段、出来高も無い静かな銘柄です。取り組み倍率は0.09倍と、ある意味異常値ですが、極端に低い倍率です。信用で買っている数が2万3000であるのに対して、空売りをしている人が27万1000です。この空売りをしている人たちが、慌てて手仕舞いの買いを入れるので、その力だけでもどんどん上がってしまい、とんでもない急騰を5月1日、2日と演じてみせたわけです。
これなどは極端ですが、わかりやすい例といえるでしょう。
ただ、この需給という要素は、けして、株価の上昇や下落という方向性を決定するものではありません。一方に出た方向性を「加速」させる要因と考えるほうが正しいでしょう。
いくら取り組み倍率が小さくても、上がらない株は、やっぱり上がらないのです。

(トレンドとモーメンタム)
三つ目が、トレンドとモーメンタムです。
この二つは通常、セットで語られます。
トレンドというのは、ベクトルという表現もされたりしますが、要するに【方向性】です。
上を向いているのか、下を向いているのか、ということです。
もう一つはモーメンタムです。
こちらは、【勢い】、と考えていただいてけっこうです。
これらを知るには、唯一チャートを見るしか方法がありません。
なぜ、そうなのか、その理由はなかなかわかりませんし、いくつもの理由は考えられるでしょう。ただ、結果としてその株価が大変な勢いで上昇している、ということは多々あることです。
それはチャートによってのみ認識できることです。増田足は、ここに最も重点を置いたツールと言えるでしょう。
それをピンク(強)とブルー(弱)で一瞥して判断できるようにしているわけですが、この株価の動きにこそ、すべての「要素」が集約されています。株価というのは、いわば「動意の集積回路」と呼んでも良いでしょう。
需給や成長率、あるいは材料、外部環境の変化、経営者の方針、財務状況、さまざまな要素をすべて勘案して、けっきょく株価にすべてが集約された結果、上がったり、下がったりしていることを考えると、まずこの株価の動きそのものを重視することが、投資の判断をする場合にもっとも手っ取り早く、かつ精度の高いものであると考えるべきでしょう。
たとえば、このところ大変な人気のバイオ銘柄ですが、たいていは赤字企業です。なかでもきちっと黒字を出している最大手の銘柄にタカラバイオ《4974》がありますが、これも当期純利益を見る限りは、そう成長率があるようにはとても見えません。
確かに、従来の海のものとも山のものともわからなかったバイオ産業ですが、安倍新政権になって、国策としてこの産業の育成に取り組む動きが急ピッチで進んでいますから、そうした大きな背景で説明はできるかもしれません。しかし、それもしょせんは、とってつけたような「説明」でしかないでしょう。
やはり、なによりこの株価の「動意」というものを、なにより重視することが大切なのでしょう。そしてその「動意」というのは、ほかならぬ「ベクトルとモーメンタム」なのです。

▼増田足の示すシグナル
さて、チャートを見て、銘柄を絞り込む作業を考えてみましょう。
増田足で言えば、まず、日足の場合、25日線(今の場合、たいていは真ん中にあることが多い基準線)がピンクで、ずっと上向きになっているもの。増田足そのものが、ブルーからピンクになり、基準線を上回っているもの。「先読み」機能で今後、上昇確率が高いとみなされるピンクとなっているもの。等々、銘柄の絞込み方は、増田足の使い方を記したパンフレットに、わかりやすく図解されています。

▼変動率の大きさ
最終的に、そうした「条件」で、この方向性や勢いというものを判断できるわけですが、やってみると、なにしろ上場銘柄数はたくさんありますし、そういう強気のシグナルを点灯させている銘柄も数多くあります。
一体、どれを選んだらいいのでしょう。
増田足の日足では、右側の株価表示を、色別にしてありますが、緑色の場合は、株価の変動率の大きい銘柄です。当然、買いであれば緑色の銘柄を優先させるべきでしょう。
投資家それぞれの好みも大切です。息の長い銘柄が好みか、飛んだり跳ねたりする銘柄が好みか、業種の好みもあるかもしれません。そうしたものは、各位の興味の対象ですから、言われなくともご自身でずいぶん研究されたりしていることでしょう。
そうしたご自身の検討の結果、優先順位を決めればよいでしょう。
いろんなアプローチの仕方があってよいのです。ただ、最終的にはこの増田足が示す強気のシグナルで、タイミングを判断することをおすすめします。

▼株価水準という問題
どんなに条件がそろった銘柄でも、タイミングが合わなければそのタイミングが来るまで、待ったほうがよいでしょうし、仮に良いタイミングだったとしても、外部環境の変化で横槍が入り、増田足のサインが弱気に転換してしまったら、そこは見切りどきです。仕切りなおしをするべきでしょう。
個人投資家の場合、いくらまで上がるか、あるいはどこまで下がったらあきらめて売るか、ということに悩んでいる例が多いようです。株価の水準を気にされているのでしょう。
しかし、わたしの経験からは、この水準(理論株価とか、フェアバリューとか言ったりすることもありますが)は、ほとんど当てにはならないと思っています。
成長率や需給では、とても説明ができないにもかかわらず、上がる銘柄は延々と上がり続けますし、その逆もあります。
それより、方向性と勢いが転換してしまったら、そこが「水準」なのだ、と考えるのが一番自然ですし、また結果として妥当であることが多いのです。それがまさに、「神の見えざる手」のなすワザなのでしょう。

▼連休明けの相場
さて、最後にGW明けの東京市場を考えておきましょう。
連休谷間に、海外市場では大きな動きがありました。FOMCで米国連銀が金融緩和措置の持続、ECBは利下げ、米雇用統計は予想外に強い内容で、米国株式市場は再び最高値更新となりました。ドル円は97円台から、一気に99円台へと急伸。
もともと5月は波乱になるのではないか、と警戒されていたところですが、当コラムでは、文字通りずるずると下落相場になっていくか、GW中海外で相場が強く、連休明けに日本人が東京でわっと買いに行くことになるか、いくつかのシナリオを解説していました。
得てしてありがちなのが、後者のシナリオだということも述べました。
この調子でいきますと、週前半はスタートダッシュで走り、10-11日のG7が近づくにつれて、ドル円が軟調になるというパターンになりそうです。
ドル円が100円の壁を突破できるとしたら、週前半が一番可能性としては高いかもしれません。三度目のトライです。(イスラエルのシリア爆撃が、ドル円の100円突破の材料になるかどうか?)
国内機関投資家は、これから本格的にポートフォリオを構築していくところですから、好調な5月相場前半となりそうです。
ヘッジファンドもなかなかこうなると、売り崩しは難しく、かえって買い煽りのほうが楽でしょう。一応、5月中盤以降の調整のリスクは念頭に置いて、機動的に対処しましょう。
各国の半導体製造は増産に傾きました。夏場に向かってハイテクの部品供給は旺盛となるでしょう。トルコなどの原発が相次いで大型受注となってきています。政府の成長戦略もバイオをはじめ、各部門で姿を現し始めました。
材料にはことかきません。
ドル円の趨勢をチェックしつつ、休み中の銘柄研究の成果を、現実のものとしていきましょう。

以上

増田経済研究所
コラム   増田経済研究所
増田経済研究所が、今週の東京株式市場の動向を展望します。米国を中心とした国際情勢を踏まえ、誰が今、何を考え、我々個人投資家はいかに対応すべきなのか、分かりやすく解説します。
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商号等:有限会社増田経済研究所/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1069号

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